241.届きそうで届かない
一方、エターナルソードを狙っているグレトルとリヴァラットの傭兵コンビは、目標としているそのエターナルソードを見つけるために躍起になっていた。
「あーくそっ、何だってこんなに苦労して何も収穫なしなんだよ!?」
「こうなると、何か別の手立てを考えなければいけないようだな」
その結果の悔しさに、両手の拳を握って大声を出してしまうグレトルと、対照的にパーティーのリーダーとして落ち着いた一面を見せているリヴァラット。
二人は今、掴んだ情報を元に散々苦労してエターナルソードのある場所までたどり着いたのに、結果的にエターナルソードを手に入れることができずに終わってしまった悔しさを噛み締めつつ、ようやく月明かりの当たる場所に戻ってきたところだった。
なぜこのような結果になってしまったのかといえば、話は三時間ほど前に遡る。
「おい、本当にここで合ってんのかよリヴァラット?」
「ああ。シャレドがありとあらゆる手を尽くして調べ尽くしてくれたから信ぴょう性は高いだろう」
自分の仲間の実力の高さを信じることができなくてどうするんだ、と最後に付け加えながら、二人はかつてそのパーティーから追放したリュディガーと別れたあのイディリーク帝国にある港町へとやってきていた。
今さらどうしてここに戻ってきたのかといえば、この港町の外れにあるという「謎の地下施設」の情報を掴んだからである。
「どうやら騎士団内部でも、王都の地下に奇妙なものが置かれているという情報が共有されているらしいんだがな。その情報も皇帝の近くにいる人間たちが流している嘘らしいんだ」
「嘘って?」
「だから、本物がどうやらここにあるらしいんだよ。俺たちは本物の情報を手に入れたってことになるんだ」
なぜ嘘をつくことにしているのかといえば、あれは国家の中でも非常に重要な国宝なのである。
なのでそこに置いてあるエターナルソードは模造品であり、本物を別の場所に保管しておくことで万が一情報が漏洩したとしても大きな被害を防ぐことができるという、皇帝や宰相などの考えであった。
敵を欺くにはまず味方から、という言葉を現実に引っ張ってきているイディリークの考えは悪くないのだが、高ランクの傭兵として世界中にありとあらゆる人脈を持っているシャレドの情報網はさらに上を行っていることになった。
そしてその「奇妙なもの」というのが、かつて伝説の冒険家ルヴィバーが手に入れて使用したとされているエターナルソードらしいのだ。
自分たちが共同戦線を張っている旧ラーフィティアの将軍から「エターナルソードを回収しておくことが私たちの安全と安心に繋がる」と言われたことでこうして港町までやってきた二人の傭兵は、早速シャレドから手に入れた情報を元に地下へと入ることにする。
「ああ……っと、ちょっと待った」
「ん?」
「確か地下に入る前にこれを飲んでおけって話だったな」
これもニルスがアサドールという学者をうまく騙して作り上げた、魔力を一時的に失くす薬である。
これを使うことによって一時的に魔術を使えなくなってしまうのだが、その反面どんな魔術の影響も受けなくなってしまう。
つまり、この地下施設への出入り口を封印している魔力だって全く関係なしに出入り口のドアを開けることができてしまうのだ。
「おおーっ、これってすげえもんだな!!」
「あの学者いわく、ドラゴンの血を利用して作り上げた秘薬だからな。それなりの値段はしたが、それだけの価値は十分にあるってことだ」
こうして魔力の封印を突破し、その先に出現した階段を下に向かって降りていく二人。
だが、イディリークの皇帝たちもさすがに無策でここにエターナルソードを保管していたわけではなかったらしい。
階段を降りた先に現れたのは簡素な小部屋。
そして、その壁の奥にかけられているエターナルソードを見つけた時には二人の気持ちも高揚したものだった。
「うおー、これがエターナルソードかよ!!」
「この輝き……凄みを感じるものだ!!」
金色に輝く柄、薄い緑色のツートン模様が入っている白銀の刀身を持っているそれこそが、まさにエターナルソードであった。
壁にかける形で取り付けられた透明のケースの中に入れられており、その上から鎖でグルグル巻きにして封印されている。
見張りもおらず、こんなに簡単に手に入ってしまっていいのだろうかと思いながら鎖を外し、ケースを開けてリヴァラットがそれに触れた……その瞬間!!
「ぐあっ!?」
「うおっ!!」
お前たちは、このエターナルソードに触れる資格はない。
言葉にしなくても明らかにそんな意思を持って拒絶された二人の傭兵は、まるで雷が弾けるかのようにバチィィィッと音をさせながら弾き飛ばされた後、放心状態になるのであった。




