240.対抗策
とにかく、その元凶の一角であるアサドールにはこれから先もパーティーメンバーとして、あの連中を全て叩き潰すまで付き合ってもらう。
それがリュディガーたちの出した条件だったが、あいにくそれはできないのだとグラルバルトが言い出した。
『今回のようなことに対して人間たちの前に出るのはわかるのだが、パーティーメンバーとしてずっと付き添うのはちょっと無理だ』
「何で? そもそもこのドラゴンが元凶なんだから付き合ってもらうべきでしょうが!」
『理屈で言えば確かにそうなる。しかし、アサドールにはヴィーンラディとバーレンの看視を担当してもらっているから、余りそこから離れられるのはこちらとしても許容できない』
実質、エルヴェダーもグラルバルトもこれからはそれぞれエスヴェテレスとシュアの復興活動を再開するべく動かなければならないので、正式なパーティーメンバーとして加わることはできないのだ。
相当面倒臭い話だなあと思いつつ、だったら何か代わりの策を出してくれとトリスがアサドールに詰め寄る。
「ならどうすればいいのよ? あの化け物に対抗するには何か策があるんじゃないの?」
『ああ。あれを壊せるのはエターナルソードしかないだろうな』
エターナルソード。
それは以前エスティナが言っていた、あらゆる魔力を無効化して敵を斬ることができる、最強のロングソードのことだった。
それがあればあのアガートも、それから巨大クワガタも倒せるかもしれないとアサドールがいう。
そもそも、リュディガーの先祖であるルヴィバーがエターナルソードを使って、竜族の国のトップに君臨していた黒いドラゴンを倒したというエピソードがエルヴェダーの口から語られていた。
「前にその話なら聞いたことがあるわね。数多くの敵を斬り伏せ、各地で伝説を生み出したその話は冒険日誌に載っていなかったから、エターナルソードがその後どこに行ってしまったのかについては知らないってお兄ちゃんが言った覚えがあるわ」
エターナルソードというのは、竜族の生み出した最高傑作の武器。
そしてフェリシテが、イディリークの地下にそのエターナルソードらしき武器があるかもしれないと言い出したのには驚いたハイセルタール兄妹。
しかし、そのエターナルソードを見つけたからといってすぐに使えるわけではないというのがもどかしいところだ。
『でもよぉ、俺様たちに認められることがそのエターナルソードに認められるってことになるって前にも言ったし、俺様はまだ認めてねえ』
「確か、ドラゴンたち全員に認められればいいんだったな」
『ああそうだ。私たちが認められるだけの実力を見せてもらうんだ』
戦って実力を見せてもらうのはエルヴェダーとグラルバルトの二匹だけだったはずなのだが、成り行き上で緑のドラゴンのアサドールにもすでに認めてもらっている。
シュヴィリスとセルフォンにはすでに認められているとなれば、まずはエルヴェダーにも認められなければならない。
下位のドラゴン四匹に認められて、上位のグラルバルトと白いドラゴンに挑戦する権利が与えられるからであった。
「じゃあ早速今からここで戦おう。事は一刻を争うんだからな」
「そうよね。私たち全員が相手になってあなたに認めてもらわないといけないからね」
だが、リュディガーとフェリシテの言い分は通りそうになかった。
こんな事を争う事態になっているというのに、エターナルソードはまたもや面倒臭い手順を踏まなければならないということがわかったからだった。
『あー……俺様もできればそうしてやりたいんだが、ここじゃ無理だ』
「じゃあどこでやればいいのよ?」
『俺様とリュディガーが最初に出会った火山に来てくれ。そこの頂上で決闘をしようじゃないか』
「待て待て待て、何であんな場所なんだ?」
確かにこの帝都シャフザートは壊滅状態にあるものの、ここから少し離れた場所でいいじゃないかとリュディガーが難色を示す。
しかし、エルヴェダーいわくこの周辺で戦うのは復興活動のために物資を運んでくる人間たちに迷惑がかかるわけだし、リュディガー以外のメンバーには協力してもらわなければならないこともあるので、それを全て実現するためにはあの火山がちょうどいいのだと言い出した。
その話を聞いて驚いたのは、協力して欲しいことがあるというリュディガー以外のメンバーだった。
『わらわたちがそなたに協力だと? 何を手伝えというのだ?』
『それは現地に向かってから話す。じゃあ早速行くぞ。アサドールはここの復興を手伝え。それからリュディガー以外の人間たちは俺様の背中に乗って、精霊は俺様について来い。おっさんは五時間ぐらい後に、リュディガーを連れて火山に来てくれ』
「ご、五時間!?」
何でそんなに時間がかかるようなことになるんだ、と驚きを隠せないリュディガーだが、それについてはいろいろあるということで結局教えてもらえずに、アサドールとグラルバルトとともにエスヴェテレスの復興活動を手伝いつつそこまで待つしかなかったのだった。




