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214.必死の抵抗

 その矢を放ってきたのは当然、彼女を敵だと認識している人物であり……。


「不意打ち……!!」

「戦場ではなんでもありだろう?」


 そう言いながらすぐに次の矢を放つソエリドの攻撃を、フェリシテはエネルギーボールを当てて打ち消した。

 短い弓を使う黄緑のコートを着込んだ彼の腕前はなかなかのものらしいのだが、やはり乱戦状態での弓矢は仲間に当たる確率が高いのでやめておこうと考えているようだ。

 その代わりに魔術で自分の姿を消して移動し、エルヴェダーにさえも気づかれることなく乱戦を抜け出した彼は、まず戦闘力が一番低そうだと判断したフェリシテを狙うことにした。

 そしてフェリシテの方も、自分がこうした肉弾戦のみという状況では役に立たないのはわかっている。

 以前、別の部隊長に対して何とか勝てたのだって奇跡のようなものなのだから。


(だからって、ここで諦めてしまったら終わりなのよ!!)


 敵の中では唯一、このコートの男には自分の魔術が効果があるようだ。

 それを知った彼女は、自分ができる戦い方で何とか対抗するだけだと決断して立ち向かう。

 しかし、相手もなかなかのやり手らしいのはすぐにわかる。

 魔術しか得意ではないフェリシテと比べて、弓使いのソエリドは先ほど安全な移動手段として使用した姿を消すことができる魔術を始め、数々の魔術を使うことも可能らしい。

 本当に、前の部隊長の時に自分が勝てたのは奇跡のようなものだということを痛感させられるフェリシテは、襲いかかってくるソエリドの魔術と矢を自分の魔術防壁で回避、防御しながら応戦する。


(くっ、速い……!!)

「不意打ちなどしなくても勝てそうだな」


 完全に余裕のある発言をしながらも、攻撃の手を緩めることなくフェリシテを仕留めるべく動くソエリド。

 アレクシアも魔術で応戦するものの、戦闘経験の差もかなりあるようで余裕を持ってその攻撃を回避されてしまう。

 どうやら、以前戦った部隊長よりもこちらの部隊長の方がレベルは段違いに上のようである。

 そして幾度目かの攻撃魔術をフェリシテが放った時、今度はハッキリと彼女の目の前でソエリドの姿がフッと消えてしまった。


「……!!」


 姿を消す魔術を再び使われたフェリシテは、急いで周囲を見渡してどこに彼が消えてしまったのかを見つけ出そうとする。

 しかしそれは彼女の焦りを生み出してしまい、死角に回り込まれたことに気がついたのは彼女の脇腹に矢が突き刺さったことであった。


「ぐううっ!?」

「だから言っただろう? 戦場ではなんでもありだって。不意打ちや奇襲も立派な戦術の一つなんだ。君も戦士の端くれなのに、そんなこともわからないのか?」


 勝ち方にこだわっていては勝てる勝負も落としてしまう。

 ルールも何もない戦場だからこその戦い方を、騎士団員の身でありながらフェリシテはすっかり忘れてしまっていたことを、こうして怪我を負ってしまったこととソエリドにバカにした口調で言われてようやく思い出した。

 しかし、そのソエリドの優勢も長くは続かなかった。


「フェリシテ!!」

『おいフェリシテ、大丈夫かっ!?』


 無魔力生物たちを全員倒したエスティナとエルヴェダーが、ソエリドの攻撃で負傷したフェリシテに気がついて近づいてくる。

 さすがにあの二人が加わってしまうと自分も不利だと悟ったソエリドは、舌打ちをしながらさっさと退却する。


『ちっ……さすがにあの二人の相手はきつい。ここは逃げておこう』


 逃げるのも立派な戦術の一つだからな、と言い残して魔術でその場から姿を消したソエリドの姿を、三人は追いかけることができなかった。

 フェリシテは矢をエスティナに抜いてもらい、自分の傷を自分の魔術で治療していた。

 エルヴェダーはソエリドの気配を探ってみるが、どうやらもうどこにもいないのだと判明して舌打ちをする。


『ちっ、逃げられちまったみてえだな』

「油断したわ……前に別の男に勝ったからと言って、今度も勝てると思ったら大間違いね」

「それよりもフェリシテ、あの男はいったい何だったの?」


 傷を癒したフェリシテは、エスティナとエルヴェダーにソエリドとの戦いを話した。


『姿を消せる魔術か。それだったら緑の俺様の仲間とか、白いドラゴンの奴が使えるぜ』

「あなたは使えないの?」

『俺様は魔術はそこまで得意じゃねえんだよ。黄色いおっさんも同じさ。それよりもあいつがどこかに逃げて行ったんだからさっさと追うぞ』

「そうね。それじゃあ探査魔術で……」


 またあの男の魔力を探知すればいい。

 今しがた逃げて行ったばかりだとしたら、きっとすぐ近くにいるはずだから。

 そう考えたフェリシテだったが、その目論見は外れることになってしまった。


「……ん?」

『どうした?』

「魔力がこの近くには一つもないわ」

「えっ!? 今しがた逃げて行ったばっかりじゃないの!?」


 エスティナの疑問に、困ったように頭を掻きながらフェリシテが分析する。


「多分……これは私の予想でしかないけど、アレクシアと同じくどこか別の場所に転移する(すべ)を持っているのかもしれないわ」

「それは厄介ね……。とりあえず他のメンバーと合流しましょう。何か進展があるかもしれないわ」

『そうだな』

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