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20.無魔力生物vs魔術師

 そのクヴェディルのセリフに、リュディガーの顔つきが変わった。


「わかるのか?」

「もちろんですよ。無魔力生物というのはなかなかに貴重な存在ですからね。これは思わぬ掘り出し物です。あの精霊とともにあなたも死んだ後に解剖しましょう」

「……どうやら、アレクシアのことも分かっているみたいだな」


 このクヴェディルという男はなかなか侮れない存在だと考えるリュディガーだが、それ以上に彼を驚愕させる光景がこの後やってきた。


「はい。先ほどケルベロスを倒したところをしっかり見させていただきましたから。でも、今はあの通り苦戦しているみたいですよ?」

「え?」


 クヴェディルに促されてアレクシアとエスティナの方を見てみると、そこには先ほど次々に増援を打倒して進んでいたはずのアレクシアが、なかなか魔物たちを倒しきれずに苦戦しているではないか。

 エスティナも手伝って何とか対応できてはいるものの、今までの圧倒的な強さが見えない。

 魔術が思うように繰り出せず、繰り出せたその魔術も威力が弱いのがリュディガーにも見て取れた。


「どういうことだ……?」

「ふふふ、あの魔法陣にはちょっとした仕掛けがありましてね。こちらとしても無策でいるわけにはいきませんからねっ!」


 そのセリフとともにまず最初に動いたのはクヴェディル。それに反応してリュディガーが動く。


「くっ!」


 リュディガーは、そのクヴェディルのソードワンドの速さとトリッキーさに驚きを隠せない。

 そもそも彼の前で戦ったことも、彼の動きを見ることも出来ていない。

 魔術師という職業に対して「運動が苦手」という固定観念がリュディガーにはあったのだが、それを全く感じさせない動きなのだ。

 繰り出されるソードワンドの突きや横切りを必死で避けるが、スピードがかなり速い攻撃なのでリュディガーのしなやかな身体の素早さを持ってしても、全くといっていいほど攻撃のチャンスがない。

 それでもギリギリで身体を捻ったり、バックステップで後ろに下がることによってクヴェディルの凶刃から逃れるリュディガー。

 その避けたりブロックしたりする中で、クヴェディルの下段攻撃が余りないことに気が付いたリュディガーは、胸の辺りに来た横薙ぎの攻撃を避けた後に屈む。

 そして、一気にクヴェディルの足に腕を絡ませて地面に引き倒す。


「ぬお!?」


 更にそこからクヴェディルに対してマウントポジションを取り、右手のソードワンドを振るわれる前に素早く手でなるべく遠くに払い飛ばした。


「らっ、だ、だああ!」

「ぬおおおおっ!!」


 クヴェディルは何とかリュディガーの組み付きから逃れようとするも、リュディガーもその腕どころか足もクヴェディルの足に絡ませて絶対に逃がすまいと踏んばる。

 それでもクヴェディルは何とか立ち上がって反撃に出ようとするが、リュディガーに片足を掴まれたまま、今度は身体を支えている方の軸足の関節を勢い任せに蹴りつけられバランスを崩す。


「ぐっ!」


 そこは何とか踏ん張ったが、体勢を立て直しきる前にリュディガーが振り上げた足でまずは顎を蹴りぬかれ、そこから踵落としがクヴェディルの頭に振り下ろされた。


「ぐはっ!」


 だがその転がったクヴェディルは、自分の右手に何かが当たる感触に気がついた。それは先程、リュディガーにマウントポジションを取られた時に遠くに払い飛ばされた自分のソードワンド。

 愛用の武器が手元に戻って来たので、追い打ちを掛けようと走り寄って来るリュディガーの下半身目掛けて横薙ぎで斬り付ける。


「ぐぅっ!?」


 見事に右の太ももを斬り裂いたソードワンドだったが、クリーンヒットとまではいかなかったようでリュディガーもまだ戦闘続行可能。

 これでバトルは最初と同じ展開に。

 だが今度は上半身をメインに狙おうとするさっきの戦い方と違い、リュディガーの下半身への攻撃も積極的に行うクヴェディル。

 リュディガーは更に追い詰められて行き、横薙ぎの攻撃をさっきと同じく屈んで避けた避けたまでは良かったが、クヴェディルはその薙ぎ払いの勢いを利用する。


「ふっ!」

「ぐっ!?」


 屈んだ状態から素早く立ち上がったリュディガーの側頭部に、薙ぎ払いの勢いで繰り出した回し蹴りをクリーンヒットさせる。

 倒れ込んだリュディガーは左手で頭を押さえて悶え苦しみ、地面に倒れ伏して呻き声を上げた。

 そんなリュディガーを、クヴェディルは狂気の笑みを浮かべて見下ろす。


「魔力がない人間ごときが、私に楯突こうなんて舐められたものです」


 そう言いながら、自分が作った大型の魔法陣から生み出される魔物の大群と戦う他の二人を一瞥し、再度リュディガーに向き直る。

 そのリュディガーは、側頭部にクリーンヒットしたクヴェディルの回し蹴りによる痛みを堪えながら、そのクヴェディルを無言で見上げる。


「さて……終わりだ、死ねえっ!!」


 とどめに彼をソードワンドで串刺しにしようとしたクヴェディルだったが、そのソードワンドが振り下ろされる前に、リュディガーは一気にタックルを繰り出して起死回生に出た!

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