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206.ヒント

「ねえねえリュディガー、向こうの部屋で不思議なものを見つけたんだけどちょっと来てくれる?」

「わかった」


 エスティナが見つけたものは一体なんなのかとリュディガーたちがついていくと、そこにあったのは一本のデッキブラシだった。


「これよ」

「……何の変哲もないブラシじゃないのか?」

「違う違う、私が言いたいのは持ち手の部分にこびりついている変な銀色の物体よ!!」

「ん?」


 デッキブラシの柄の部分にくっついているのは、どうやら何かの金属を溶かしたもののようらしい。

 そもそもここが、何かしらの部品を作っていたと思わしき小部屋らしく至るところに器具や材料のかけらのようなものが落ちている。

 そのデッキブラシから妙な臭いがするというので、何か手がかりになることがあるのではないかと考えるエスティナの考えを聞き、同じく船内を探索していたエリフィルが近づく。

 するとその臭いを嗅いでみた彼の表情に変化が現れた。


「ほぼ海の臭いしかしませんが……わずかに残っているこの臭いは多分、シュアの南にある鉱山でしか採掘されない鉱石のものではないでしょうかね?」

「鉱石?」

「はい。私の第二騎士団はシュアの南側を守護している騎士団ですから、その鉱山にも行ったことがあるからわかります」


 そのエリフィルが出した分析結果を聞いたセフリスが、ふと思い出したことを口に出した。


「なあエリフィル、そういえば半年前にその鉱山で盗掘団が発見されたという事件がなかったか?」

「ああ、そういえばありましたね。しかしその盗掘団は仲間割れでも起こしたのか、全部で四十数名が死体となって鉱山の中で息絶えていたという不思議な事件でした」

「そんな事件があったんですか?」


 リアンが思わずその話に食いついて、いろいろと話を聞く姿勢を作り出したことで自然とリュディガーたちも話の続きを聞きたくなってしまった。


「ええ。その時は確か仲間割れによる集団死亡事件として処理されたのですが、どうしても腑に落ちないことがありまして」

「というと?」

「盗掘されたと思わしき鉱石も回収されたのですが、盗掘されたと思わしき量が合わなかったんです。ですのでその残りを周辺を徹底的に捜索して探したのですが、結局発見されずに捜査が終了してしまいました」


 その鉱山は魔物も数多く出るので、余りにも捜索に時間をかけてしまうと魔物たちによる騎士団への被害も懸念されてしまう。

 しかし、今でもエリフィルはその捜査に納得がいっていないらしく、暇をみてはその鉱山へとプライベートで出向いているらしい。


『だったらさあ、その鉱山に行ってみればいいんじゃないの?』

「え?」

『実に簡単じゃん。その鉱山から見つかったと思わしき鉱石だか鉱物だかの残骸らしきものがここから発見されたんだったら、元を辿ってみるのが一番じゃないの?』


 シンプルに考えてみようよと言うシュヴィリスのその提案によって、この沈没船の後始末をファルス騎士団に任せることにして、リュディガーたちはそのシュアの南にある鉱山へと向かうことにした。


「そこはルフレンス鉱山と言いまして、かなり大きな敷地を持っている国内最大ともいうべき鉱物や鉱石の採掘場所です。ですがその分、その半年前の時のように盗掘を企む者も後を絶ちません」

「じゃあ、ちょくちょく盗掘団が来てるってことか?」

「そうです。どうしてもあそこから採掘できる鉱物はなかなか希少価値が高いですからね」


 しかし、半年前のその事件はやはり異常な展開だったらしく今でもシュア王国騎士団の中では話題に登ることがあるのだという。

 その話に関して、リュディガーと一緒にグラルバルトの背中に乗せてもらっているセフリスが追加情報を話してくれる。


「でも、妙なことといえばまだあるんだ。ルフレンス鉱山はそれなりの敷地の広さがあって、警備体制も鉱物の希少さから他の鉱山と比べると厳重なものだった。それがどうして、あれだけ大人数の盗掘団の侵入を許したのか未だにわかっていないんだ」


 鉱山の各所に設置されている出入り口では持ち物検査が行なわれていたし、至る所に魔術による侵入者防止策のトラップも仕掛けられていた。

 魔物も多く出るのでそれ対策に作ったトラップだったのに、それすらもかいくぐって中に入られてしまったのだとその後の調査で判明している。


「どこか別の場所から穴を掘ってきたとか?」

「いや、それはない……。穴を開けて外まで繋がっているのであればすぐにわかるからな」


 現に盗掘団の倒れていた場所は、普通に使われている出入り口の周辺だけだったらしい。

 そして、一緒に乗っているトリスにはまだ気になることがあった。


「そこを守っていた警備担当の人たちって、その時は休みだったの? それとも殺されちゃったりしたの?」

「それがその……昼夜問わず大勢の人間に警備させるわけにもいかないのでな……」

「はっ?」


 痛いところを突かれたなと気まずそうな表情を作るセフリスが言うには、人件費や人員の不足などの問題と、侵入者対策のトラップが強力なこともあってそこにある見張り用のログハウスに何人かの警備兵を配置しているだけだったという。

 しかもその半年前の事件の時に限って、警備兵たちが揃いも揃って居眠りをしてしまったのだと報告があったのだとか。


「それは侵入されてもおかしくない気がするわ……」

「だな」


 大失態もいいところのそんな話に、ハイセルタール兄妹は呆れ顔になるしかなかった。

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