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19.クヴェディルの作戦

 しかし、そのクヴェディルのリアクションは三人にとって予想外のものだった。


「素晴らしい、素晴らしいですよあなたたち!!」


 パチパチパチ、とキザっぽく顔の横で手を叩く長い白髪の魔術師クヴェディル。

 とはいえ、いきなり「素晴らしい」と言われてもその意図が掴めないので、ここは三人を代表してリュディガーが不機嫌丸出しの声で尋ねる。


「何がだ?」

「まさか私のしもべたちをこんなにあっけなく倒してしまうとはね!! これほどまでとは思わなかったですよ!!」

「しもべだと?」


 その言い方に疑問を覚えるリュディガーに対し、クヴェディルはさも当たり前と言うトーンで続ける。


「ああ。私と私の相棒に賛同して今まで水面下で色々と情報を集めてくれていた、利益度外視の連中ですよ。ちょっと高度な魔術を見せつけてやれば私に揉み手で着いて来てしまうんですから、お笑いですよね?」


 嘲る様な笑いを浮かべるクヴェディルを見て、最初にピンと来たのはエスティナだった。


「だったら今までここに来る途中にいた、沢山の武装した人たちは全て……」

「そうです。私が都合の良いように動かしていた人足みたいな連中です。その日暮らしで食うのにも困っていたような人たちをここまで使ってあげたんだから、感謝して欲しいものですよ」


 そして、アレクシアに目をやりつつ少し興奮気味にクヴェディルは続ける。


「でも、ここまでの戦いを見せていただいたおかげで非常に良いデータが取れましたよ。これなら実験としては十分ですね」

「研究って何を研究しているんだ?」


 リュディガーがそう聞けば、手を叩いていた時と違ってクヴェディルはニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。


「研究はこれですよ」


 そう言いながら、クヴェディルはそばにある大きな部屋へと消えていった。

 当然三人もその後を追いかけるが、その部屋の壁にあったのは意外なものだった。


「……壁画……?」


 古びてボロボロになり、ところどころが剥がれ落ちているがそれは間違いなく壁画だ。

 これについてはクヴェディルの説明が入る。


「ここをねぐらにすると決めた時、私がここで見つけた壁画です。この壁画を調べていたら、魔力がここから国外に流れているのがわかりました。その魔力の行き先を辿っていくと、私はある人と出会いました」

「ある人?」

「ええ。ですがあなたたちにそれを説明する必要はありません」


 そう言い終えると、クヴェディルは地面に向かって懐から取り出した伸縮する杖の先端をかざす。

 するとその瞬間、三人の足元に大きな水色の魔法陣が出現した。


「あなたたちにはここで死んでもらうんですからね!!」


 次の瞬間、魔物が地面から浮き出て来た。

 その魔物達に対抗し始めるリュディガーたちを尻目に、クヴェディルが扉から外に出ていこうとするのをリュディガーは見逃さなかった。


「逃がさないぞ!!」


 こうなったらもうやるだけやってやるぜ、とばかりにリュディガーはクヴェディルに接近。

 そこから全力のタックルを繰り出すが、それを見てもクヴェディルは冷静だった。


「馬鹿ですねぇ、どんな攻撃も魔術防壁の内側には届かなごぼあっ!?」


 攻撃魔術はおろか、物理攻撃も届かないと完全に確信していた自分のその上半身にリュディガーの全力タックルがしっかり届いたと確認できたのは、上半身全体に広がる痛みを覚えると共に、黒ずんだシミが広がる天井を向いて地面に仰向けに倒れ込んだ時だった。


「ぐふっ、な、何故……っ!?」

「え、あ、あれ?」


 実を言うとリュディガーが一番驚いていた。

 なぜなら届かないと思っていたはずの攻撃が、まさか届いてしまったのだから。

 そしてその瞬間、リュディガーは自分の特異体質を思い出した。


(そうか……俺の体内には魔力がなかったんだっけ)


 なので、魔術防壁がどうのこうのと言われてもリュディガーには関係のない話。

 それを理解したリュディガーは、よろよろと立ち上がるクヴェディルに対して自分もニヤリとした嫌な笑みを浮かべて、他の二人には魔法陣から生み出される魔物の相手を任せることにした。


「さぁて……タイマン勝負と行こうかぁ?」


 第三者から見ればどちらが悪役なのか分からないリュディガーのその声色と表情に、クヴェディルはゴクリと唾を飲み込んだ。

 魔物を生み出す元凶のこのクヴェディルは放っておくと厄介なので、これは短期決着で一気に勝負を決めるべきだとリュディガーは判断。

 しかし、魔術がリュディガーに効かないと分かったクヴェディルは、杖の握りについているボタンを押して、先端に刃を出してソードワンドに変化させた。


「私が魔術だけの男だと思ったら大間違いですよ、無魔力生物の人間?」

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