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198.エスティナの死闘

「俺たちの邪魔をするような奴らは、誰だって絶対にぶっ殺してやるぜえ!!」

(この人、どうしてこんなにヒートアップしてるんだろう……?)


 熱血漢な性格のハンマー使いの大男、イデスと勝負するのはエスティナになった。

 当然、お互いに初めてのバトルをするエスティナとイデスは、まずは相手の様子を窺いながらのスタートだ。

 しかしハンマーを振って先に飛び込んで来たイデスを避けたエスティナに、思わぬ衝撃が襲いかかってくる。


「ぐはっ!?」


 ハンマーの攻撃をフェイントに、自分の大柄な身体を活かしてイデスがエスティナにタックルを繰り出したのだ。

 その衝撃によって自分が倒れ込んだだけではなく、手から愛用のロングソードが飛んでいってしまった。

 しかもこの状況では他に武器になりそうなものも持っていないので、ここは素手での戦いを強いられることになってしまった。

 しかしエスティナもこのまま黙ってやられるわけにはいかない。


(武器がなかったら現地調達!! 何でも使うわよ!!)


 普通の武器こそ持っていないものの、ここは比較的岩場に近い場所なので、その岩の欠片などが武器として使えるとエスティナは判断。

 まずは手近な大きめの石を掴んで、大振りの攻撃を空振りしたイデスの顔にぶつける。


「ぐぅ!?」


 空振りしたそのハンマーが近くの大きな岩を粉砕する音を聞きながら、イデスが怯んだのを見たエスティナは勢い任せに飛び膝蹴り。更にイデスの股間を蹴り上げて潰しにかかる。


「がぁ!」

「ふん!」


 急所を蹴られて悶絶するイデスの肩を掴んで、勢いのまままた膝蹴りをするエスティナ。

 そのまま上段蹴り、彼の腹めがけて右の拳を叩き込み、更に右の回し蹴り。

 そこから間髪入れずにイデスの顔目掛けて、右と左の拳をそれぞれ一発ずつお見舞いしてやる。

 そして再び右回し蹴りをしてやれば、連続攻撃によってたたらを踏んでいたイデスの巨体が後ろに吹っ飛ばされる。


「ぐほっ……」

「まだまだっ!!」


 エスティナが追撃をかけるべく走って来るので、イデスはとっさに懐から取り出した小型のバトルアックスを手に取って彼女めがけて投げつける。


「うおっ!?」


 飛んで来たバトルアックスでエスティナが怯んだのを見て、立ち上がったイデスは彼女に前蹴りを食らわせ、愛用のハンマーを振り被る。

 だがエスティナは今までの冒険の中で培ってきた反射神経で、逆にイデスの腹と顔に左手で連続で拳をお見舞いする。

 それでも体格差があることで余りダメージを受けていないイデスは、エスティナの一瞬の隙を見逃さず中段蹴りを繰り出して彼を吹っ飛ばす。


「ぐはっ!!」


 今度はエスティナが吹っ飛ばされ、地面に崩れ落ちる番となった。

 だがそのエスティナがふと見つけた物は、先ほどイデスのハンマーで粉砕された片手で持つのがやっとの大きな岩。

 とりあえずそれをエスティナは武器として投げつける。

 しかしイデスは飛んで来たその岩を間一髪で避け、駆け出してエスティナの元へ。

 立ち上がりかけたエスティナに向け、またもやハンマーを使うと見せかけてフェイント。

 今度は強烈な前蹴りを繰り出す。

 これには流石のエスティナも反応出来ず、モロにそのイデスのキックを食らってしまう。


「ごほぉ!?」


 咳き込みながら土の地面に倒れ込んだエスティナの腹に、イデスは更に蹴りを入れる。


「ぐぁ!」

「俺に勝とうなんて十年も二十年も早えんだよ!!」


 そのままイデスは間髪入れず、自分のハンマーを大きく頭の上に振りかざす。


「おりゃあああああ!」

(まずい!!)


 力を振り絞って何とかそれを避けたエスティナは、ハンマーの攻撃を再び空振ったイデスの足に飛びかかって地面に押し倒し、のしかかり状態から近くに見つけた大きめの岩の欠片を取って彼の頭を殴りつける。


「ふん、ふん、ふん!!」

「ごっ、ぐあ!? ぐっ!!」


 成す術なくイデスは殴られ続ける。

 ここで殴るのをやめてしまったら、今度は自分がハンマーの餌食になってしまうとしか考えていないエスティナは、腕が疲れて上がらなくなるまでイデスの頭に岩を振り下ろし続けた。


「はーっ、はーっ、はーっ……あっ……」


 エスティナが我に返った時には、頭部から大量の血を流しながら事切れたイデスの姿が目の前にあった。

 すでに物言わぬ肉の塊となってしまったイデスを見下ろし、ようやく自分の戦いが終わったことを確認したエスティナは、他のメンバーの戦いに加勢するべく再び動き出した。

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