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178.惨状に参上

 あの地下牢獄と研究所の調査と後始末、それからヴィルトディンとの話し合いは全てエスヴェテレスの人間たちに任せて、リュディガーたちはエルヴェダーの背中に乗って一気にシュアへと飛んできた。

 だが、そこで見た光景は一同の度肝を抜くものだったのだ。


「バルドからの連絡がずっと前に来たということは、シュアの状況はある程度予想していたが……まさかここまでとは……」

『ああ、これはもう廃墟都市としかいえないな……』


 リュディガーもアレクシアも絶句してしまっている。

 それもそのはずで、王都のコーニエルは建物という建物がその面影を残さないほどにまで壊滅状態にあった。

 生きている人間の姿もまばらであり、そこら中に倒れている人間たちの姿が確認できる。

 とにかくこのままボーッと見ているわけにもいかないので、魔術が使えないリュディガーは生きている人間に何が起こったのかの聞き込み調査をして、他の四人とエルヴェダーはそれぞれ回復魔術を使って息がある人間たちの治療をすることに。


「どうした! 何があった!?」

「ば、化け物……」


 リュディガーが声をかけた人間はすでに虫の息だったようで、それだけ言い残して息絶えてしまった。


「おい、しっかりしろ! ……くそっ!」


 しかし悲しんでいる暇はない。

 建物の残骸にもたれかかって息を引き取ったその人間の目を閉じてやってから、リュディガーは息のある人間を捜して歩き回る。

 その一方では、同じく虫の息になっている人間たちを他のメンバーたちが治療しながら、今まで何があったのかを聞いて回っていた。


「大きな鉄の魔物?」

「ああ……俺たちなんてまるで虫けらみたいに蹴散らされちまった。あいつはなんなんだ、一体……」


 その正体不明の金属製の化け物に立ちはだかった傭兵の男いわく、それは二足歩行の人間のようなシルエットだったという。

 それが突然空を飛んできて、シュアの王城をまず踏み潰した。

 一瞬にして王城の一部が瓦礫の山になってしまったとなれば、当然シュアの王国騎士団の人間たちが出てこざるを得なくなってしまう。


「だけど、その二足歩行の金属製の化け物には魔術がまるで効かなかったのよ」

「ああ、俺も一緒に見てたからな」


 新婚旅行でシュアへとやってきていた若いカップルの証言は、エルヴェダーの証言と一致する内容があった。

 いくら魔術師部隊が魔術をぶっ放してもまるで効いているようには見えなかったし、武器を持って立ち向かう人間たちは鋼鉄の足で蹴り飛ばされたり、破壊した建物の瓦礫を両手で投げつけてきたりとまさにやりたい放題の限りをつくしていた。


『俺様は人間の時は槍を使って戦うんだが、その槍が全く刺さらない。魔力をいくら込めても突き刺さらなかったから……あれは恐らく特殊な合金か何かを使ってんじゃねえのかな』

「しかも、魔力を感知して人間たちが攻撃してくる場所をしっかり特定できる……みたいなことも言ってなかったかしら?」

『ああ。きっとそういう感知できる機能が付いているんだろうな』


 攻撃力、防御力ともに人間の考えるそれを遥かに凌駕している金属製の化け物は、ブラハード城を始めとしてコーニエルのほぼ全てを廃墟にしてから、魔力を使っているのであろう空中浮遊技術によって南西へと飛んで行ってしまったらしい。


「本来であればすぐにでも兵を出さなければならないのだが、王都がこんな状況では出そうにも出しようがない」


 リュディガーがようやく見つけた、茶髪の騎士団員から聞いたのはどこか諦めにも似た言葉であった。

 彼は魔術師部隊の副総隊長を務めているセフリスという男で、南西に展開している部隊に連絡は入れたのだが、そちらもあんなのが相手だとじきにやられてしまうだろうという予想をしていたのだ。


「それっていつの話なんだ?」

「もう五日前になる。しかし、奇妙なのはそっちに展開している部隊からその金属製の二足歩行の怪物の襲撃連絡どころか、目撃情報も入ってきていないことなんだ」

「なんだって?」


 それは確かに奇妙な話だ。

 もしかするとその怪物はこの王都だけをメチャクチャにするつもりで飛んできたのだろうか?

 何にしても、その化け物が飛んでいった方向が南西だというのであればリュディガーたちも追いかけないわけにはいかなかった。

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