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177.掛け持ちの責務

『言っておくが、俺様はお前のためになんか絶対に協力しねえからな?』


 帝都シャフザートにあるリーレディナ城へと帰還したリュディガーたちだったが、時間短縮のためにエルヴェダーに乗って帰ってきただけあって、当然皇帝のディレーディや騎士団長のザドールからは何がどうなっているのかの説明を求められることになった。

 そして話が全て終わったと思いきや、せっかくのドラゴンが戦力にならないわけがないとディレーディが興奮し始めたのである。


「我が国の軍備拡大のために、ぜひともその力を貸してもらえないだろうか」

『あっ?』


 しかし、そんなヨタ話に付き合っていられるほどエルヴェダーも暇ではないので、ここはしっかりキッパリ断っておくべきだろうと考えたうえでの発言がそれだったのだ。

 しかもお互いの鼻と鼻がくっつきそうなぐらいにまで接近した状態でそれを言われた結果、当然ディレーディの護衛役でもあるザドールとユクスが止めに入る。


「おい、そこまで近づくのは許可していないぞ!!」

「陛下から離れろ!」


 二人の間に割って入る騎士団の二人だが、ここで恐ろしい光景を目の当たりにするリュディガーたち。

 場所が最初にリュディガーたちとディレーディが会談した鍛錬場だからというのもあるだろうが、エルヴェダーは右手でザドールの、左手でユクスのそれぞれの首をガッと掴み、グイっと自分から逆に引きはがしたのだ!


「な……なななななっ!?」

「う、ぐぅ……!?」


 二人ともやや細身の部類に入るとはいえ、日ごろから騎士団員として鍛錬を積んでいる人間なのだ。

 しかも現在人間の姿になっているエルヴェダーも、彼ら二人と体格としてはさほど見た目的に変わらない。

 それなのに、二人同時で全くと言っていいほど歯が立たない状態で押し戻されているその光景を目の当たりにして、リュディガーたちが唖然としないわけがなかった。

 その驚きの視線を送る周囲の人間たちには目もくれず、さらにエルヴェダーは腕に力を込める。

 するとザドールとユクスの足が地面から離れ、フワッと浮き上がったのだった。


「ぐぅ、あああっ!?」

「ぐふ、あがっ!!」

「ま……待て待て! わかった……我が間違っていた!!」


 騎士団長と副騎士団長の二人が片手だけで軽々と持ち上げられ、首を絞めあげられる目の前の状況には、さすがに軍国主義をうたっている皇帝でも諦めざるを得ないと直感で判断したらしい。

 それを聞いたエルヴェダーは力を緩め、ザドールとユクスを地面に下ろしてから改めて本題に入ることにする。


『よーし、それなら話を進めようじゃねえか。俺様はさっき言った通り、この後ろにいるリュディガーたちの力を借りてシュアの争いを止めに行かなきゃならねえ。それは俺様がこのエスヴェテレスとシュアの看視を掛け持っているっていう責務があるからだ!』


 普段は貿易商として世界中を飛び回っているというエルヴェダーは、この二か国の首都にそれぞれ拠点を作っているのだという。

 しかし、その拠点の一つがこうして襲われているのであれば話は別なので、一刻も早くリュディガーたちと一緒に向かわなければならないのだ。


『リュディガーは友達からシュアのことに関しての通話が魔晶石に入っていたみてえだし、俺様としてもくっちゃべってる暇もねえ。わりーけど、手合わせの話はまた今度にしてやってくれよな』

「……わかった……」


 自分が一国の皇帝であろうとも、さすがに目の前に立つのがこの世界を看視しているドラゴンが化けた人間となれば、逆らうことはできそうになかった。

 しかし、リュディガーに対してこれだけは言っておくディレーディ。


「しかし、時間ができたらその時は我との約束は果たしてもらいたい」

「そうですね……約束は約束ですし」


 なんだか了承しない限りこの皇帝はつきまとってくるような気がするので、やるんだったらシュアの戦いが終わってからになるだろう。

 本来であればヴィルトディンの人間たちにも一言言ってから出ていくべきなのだろうが、こうしてわざわざ帝都まで戻ってきただけでもかなり時間を使ってしまった気がするので、それも後回しになってしまう。


『よし、それじゃあ俺様たちはシュアに向かうからな』

「……ああ。武運を祈る」


 エスヴェテレスの人間たちから後押しされ、赤いドラゴンが背中に人間たちを乗せて大空へと飛び立った。


 第四部 完

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