表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/432

174.フェニックスの実力

 火山の中の登山道だけあって、ウェザートいわく火属性の魔力を持っている魔物が多数いる。

 だが、フェニックスはこの火山の主であるため地形を知り尽くしているだけあって、途中でとんでもない攻撃を繰り出してきた。


「……ん?」

「走れ!!」


 細い道を進んでいたリュディガーがウェザートの手を引いて一気に走り出す。

 いきなり何なのかと戸惑うウェザートだが、そこからワンテンポ遅れて上から地鳴りのような音が響いてくる。

 そして今まで二人が歩いていたところに向かって、大量の土砂や大きな岩が次々に落ちてきたのだ。


「う、うわああああっ!!」

「足を止めるな! 潰されるぞ!」


 フェニックスが自分の生み出した特大のファイヤーボールを岩壁の脆い部分に向かってぶつけ、それによって引き起こされた土砂崩れが二人に襲い掛かったのだ。

 岩壁側を歩いていたリュディガーがその崩れてくる音に気が付いてウェザートの手を引いて走っていなければ、二人とも潰されていただろう。


「あいつ、あんなことまでするのか……」

「ヌシだけあって、なかなか知恵の回ることもするみたいですね」


 こうして退路が断たれてしまった中、暑さとも戦いながらなんとか頂上まで登り終えた二人の男。

 しかし、ここまで登ってきた後の作戦は何もなかった。

 単純にあのフェニックスから逃れたい一心でここまでやってきただけなのだが、火山の頂上まで登ってきたということは、ここは火山の火口に当たるわけで……。


「うっ、今までで一番の熱気だ!」

「確かに火口ともなれば……そうなりますね」


 ボコボコと吹き出す溶岩、所々から沸き立つ湯気。

 そしてそれとは正反対の、憎たらしいぐらいに青く澄み渡った快晴の青空の下に火口が存在している。

 その青空の向こう側から、バッサバッサと音を立てながらフェニックスが姿を現した。


「くっ、やはりここまで追ってきましたか!」

「来るぞ……!」


 自分の棲み処を荒らされた怒りからなのか、フェニックスの攻撃は一回目に戦った時よりも激しくなっていることがわかる。

 その巨体を使っての突進攻撃はもちろんのこと、翼を動かして熱風を当ててくることもあるので危なっかしいことこの上ない。

 ここでなら一応土砂崩れに遭遇する危険性はないものの、フェニックスは空を自由に飛び回れるので二人の攻撃が届かない範囲からの攻撃も可能なのだ。


「ダメだ、空に逃げられてしまったら俺たちの攻撃が届かない!」

「そうですね。何とか魔術の攻撃範囲に入ってくれればいいのですが、それがなかなか……」


 敵も先ほどの土砂崩れの時のように知恵が回るタイプの魔物のようなので、勝つのはかなり難しいだろう。

 唯一チャンスがあるとしたら、どうにかして自分たちに近寄らせるしかない。

 この火口の周囲は一周回って戻ってこられる周回路ができているので、二手に分かれてそこをグルグルと回りながらフェニックスを倒す作戦に出る。

 リュディガーがフェニックスをおびき寄せ、その間にウェザートが魔術で倒せる可能性があるかもしれないから……という考えだったからだ。


(来た!)


 リュディガーに狙いを定めたフェニックスは、一目散に彼に向かって突進してくる。

 もちろんリュディガーも走り続けて狙いを定めさせないようにするつもりだったのだが、その直後当初の予想とは違う行動をフェニックスが取り始めた。


(ん?)


 フェニックスは自分に向かって突進してくるのかと思いきや、頭上を通り過ぎて行ってしまった。

 ならば別の場所にいるウェザートを狙いに向かったのだろうかと思ったのだが、その動きを観察してみると火口の中心部の上空で翼をバサバサと動かしながら止まった。

 いったい何をするつもりなのだろうかと思っている二人の目の前で、フェニックスは自分の周囲に多数のファイヤーボールを生み出して空中に浮遊させる。

 そして自分の身体をほぼ垂直になるまでに傾け、反動をつけて翼を動かしながらその場所で横に回転を始める。

 すると、フェニックスの近くで漂っていたファイヤーボールが全方位に向けて飛んでくる結果となった。


「う、うわああああっ!?」

「嘘だろっ!?」


 本当に知恵の回るらしい魔物のフェニックスは、流石にヌシといわれるだけの実力を持っている。

 赤みがかったオレンジ色に輝くファイヤーボールが、まるで砲弾のように二人めがけて襲い掛かる。

 ウェザートの方は魔術防壁をかけていても安心できないし、リュディガーに至っては一瞬の判断でそのファイヤーボールをよけなければならなかった。


(くそっ……手ごわすぎるぞこれは!!)


 やはりヌシを相手に勝とうなんて無理な話だったのだろうか。

 襲い掛かるフェニックスを倒すよりも先に、自分たちが倒されてしまう可能性が高いとリュディガーはファイヤーボールをギリギリで回避し、熱気に耐えながら思ってしまう。

 しかし、この場所に向かって襲い掛かってきたのはファイヤーボールやフェニックスだけではなかった。


(……ん?)


 バサバサと羽ばたくフェニックスの翼の音とはまた別に、どこからか翼がはためく音が聞こえてきた。

 いったい何がどこから現れたのだろうかとまだ緊張が高まるリュディガーの目の前で、フェニックスのさらに上空から突然その姿を現した赤いドラゴンが、上からフェニックスを火口めがけて押しつぶす光景が繰り広げられたのはその時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ