168.騎士団の比率
「それで結局、ついてくるのはあなたなのね」
「ええ。団長も副団長も陛下のおそばについていらっしゃいますから」
リュディガーたちはディレーディから許可を得て、その有名な火山へと向かっていた。
もちろん、そこはリュディガーたちがヴィルトディンの将軍クラデルと一緒に戦ったフェニックスの棲み処でもあり、そこに行くのであればまたフェニックスと遭遇する可能性もあるということだ。
しかし、それをひっくるめてでもフェリシテがそこに連れ去られたという情報があったため、リュディガーたちは絶対に行かなければならなかったのだ。
その外国人たちの案内役を買って出たのが、最初に地下牢獄までやってきた部隊を率いていたあの黄緑色の髪の毛を持つ帝国騎士団員のウェザートだった。
「へー、あなたも元々傭兵だったの?」
「そうなんです。私の他にも三人同じ境遇の団員がいましてね。その三人とは昔からの傭兵仲間でして、一緒に騎士団へと入団したんですよ」
今ではそれぞれが部隊長を任されるだけの責任者に昇格しており、ウェザートもその部隊の責任者の一人としてあそこに向かった結果、こうしてリュディガーたちと行動を共にする結果となった。
一度リュディガーたちとは面識があったのに加え、魔術を得意とする騎士団員のため、今現在不在となっているフェリシテの代わりに十分に戦力になるだろうと判断した上でのザドールによる選抜だった。
そしてウェザートもリュディガーと同じく傭兵だったため、活躍する大陸は違えど今回の似顔絵の人物の噂は前々から聞いていたとのことである。
「でも、まさか似顔絵の人物があなたの元のパーティーメンバーだったグレトルさんだとは思いもしませんでしたよ」
「俺も驚いたが、あの男がここに来た理由も今はなんとなくわかる気がする」
ユクスが持ってきた似顔絵。
そこに描かれていたのは紛れもなく、リュディガーが追いかけている元パーティーメンバーの一人であるグレトルだったのだ。
なぜウェザートや他の三人の傭兵たち、更にはユクスも昔は傭兵だったのにグレトルのことがわからなかったのかというと、その答えは単純なものだった。
「私たちもお名前やその活躍については聞いていましたが、実際にお会いしたことはないですからね。リュディガーさんたちと出会ったのもこの事件がきっかけで初めてですし、同じパーティーに所属していたのも初耳でした」
「まあ……俺はパーティーの中の雑用係みたいなもんだったからな」
このままだと何だかネガティブな空気が流れてしまいそうなので、それを横で聞いていたエスティナが話題を変えてみる。
「それよりも一つ気になるんだけど、あなたといい仲間の三人の傭兵といい、あのユクスって副騎士団長といい、この騎士団って傭兵上がりの人が多くないかしら?」
「ええ、それはそうです。元々は陛下が武勇で名を馳せた人間ですから、それに憧れて傭兵たちがこの国に自然と集まってきて、今では騎士団の六割が元傭兵上がりの人なんですよ」
「ええーっ、そんなに!?」
トリスも驚きを隠せない。
自分たちが今から助けに行くフェリシテが所属しているイディリーク騎士団でも、確かに傭兵上がりの団員がいると聞いたことはある。
だが、まさかそこまで傭兵だった団員の比率が高いとは思ってもみなかった。
「ですからもともと士気が高い方が多くて、戦場でも攻めの姿勢を見せるという方針がうちの騎士団にあるんです」
「攻めの姿勢ね……それは大層なことだが、今回ヴィルトディンに攻め込んだエスヴェテレスの連中は自分たちとは関わりがないと声明を出した。それはきちんと言うんだな」
「それはもちろんですよ。私たちだって、目的がなかったら進軍なんかしませんからね。確かに軍国主義をうたってはいますが、節度は持っているつもりですから」
「節度か……ならば、あんな条件も出さないでほしいもんだな」
リュディガーは思わずそう呟いていた。
なぜなら火山に向けて出発する前に、ディレーディからリュディガーに対してもう一つの条件を出されたからである。
「ああ、それってあれでしょ。火山での話が解決して戻ってきたら、あの陛下と話をした鍛錬場でお兄ちゃんと陛下が手合わせをするっていう話でしょ?」
『そうだな。わらわもそれには驚いたが、軍国主義ということを考えると好戦的な性格の人間が多いこともうなずけるな』
事実、自分やシュヴィリスのことを話してみるとそれにやたらと食いついてきたのがディレーディだったので、武勇で名を馳せたというのはどうやら本当だったらしい。
それについてはウェザートから説明が入る。
「陛下はそうした過去もありますので、ああいうお方なのです。申し訳ございませんがそこだけはご了承ください」
「どっちかっていうと俺は断りを入れたい気持ちでたくさんなんだがな。まあ、とにかく今は火山のふもとにあるっていう研究所で何が行なわれているのかを確かめるとしよう」
だが、この時のリュディガー一行は知らなかった。
その研究所には、強引に手合わせを申し込んできたディレーディよりもさらに面倒くさい存在がいるということなど……。




