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165.偶然? 妨害?

 しかし、リュディガーたちがフェリシテの足取りを追おうと決意した矢先に邪魔が入ることになった。

 それが偶然なのか、それともまたニルスの息がかかった上での話なのかはわからない。

 なんにせよ、リュディガーたちは地下牢獄を脱出したところで何十人といるであろう武装した集団と出会うことになったのであった。


「一連の人間たちが消えたという事件の主犯格はあなたたちですね? いろいろと話を聞かせてもらうので連行します」

「はっ?」


 本気で驚きを隠せないリュディガーたちの目の前に現れたのは、明らかに組織で行動しているとわかる、赤を基調とした制服を着こんでいる武装した集団だった。

 そしてそれを率いるのは、黄緑色の髪の毛をセンター分けにして肩甲骨の辺りまで伸ばしている赤い瞳の男である。

 だがリュディガーたちも、いきなりそんなことを言われても何が何なのかさっぱり意味がわからないので、まずはトリスがそのリーダー格らしい男に説明を求める。


「ちょ、ちょっと待ってよ。私たちが何をしたっていうの?」

「とぼけないでください。この古い砦を改造した地下牢獄に、誘拐してきた人間たちを連れ込んで何かをしているという情報が我々エスヴェテレス帝国騎士団に入ったんです。そしてその主犯格があなたたちだという話もね」

「いやいやいやいや、私たちは全くの無実よ! 冤罪よ!! 何もしてないわよ!!」


 必死で両手を顔の前で横にブンブンと振って否定するトリスに続き、エスティナも自分たちの無実を証明するために加勢して主張する。


「そうよ。変な言いがかりはつけないでほしいわね。大体その言い方だとこれからこの中を調査するみたいだけど、話だったらこの中を調査してからにしてもらいたいわ」

「ああ。俺たちは今しがたここから出てきたばかりだし、そもそも俺たちだって違う場所からここに連れてこられた被害者なんだ。それでも連行するというのなら、ここをきちんと調べてからにしてもらおうか」


 たたみかけるようにリュディガーも騎士団の人間たちにそう言い、最後にアレクシアがリーダー格の男にこんな質問をぶつける。


『その情報は誰からもたらされた? まさか、ニルスとかいう人間じゃないだろうな?』

「それについてはお答えできません」

『……そうか。しかし、わらわたちはそもそもここの関係者ではないというのは事実だ。それでもまだ疑うのであれば、この男の言う通りきちんと中を調べてから物事を言ってくれないだろうか』


 ハッキリとまっすぐに目を見てそう言われたのが功を奏したのか、リーダー格の男は少し黙ってから一つうなずいた。


「……わかりました。それでは私たちと一緒にこの中に入って、いろいろと中を調べさせてもらいますよ」

「そうしてくれ」


 リュディガーたちだってあらぬ疑いをかけられたまま連行されるのだけはごめんなので、中を調べるのであれば調べてくれと自信たっぷりに言い切る。

 そしてその調査の結果、リュディガーたちは重要参考人としてこのエスヴェテレスの帝都であるシャフザートにあるリーレディナ城へと連行されることになった。



 ◇



「くそっ、俺たちはハメられたのか!?」

「どうもそうみたいね……本当に今はこんなことをしている場合じゃないのに!」


 ハイセルタール兄妹が鉄格子の内側で歯ぎしりをする。

 地下牢獄を騎士団の手によって探索された結果、リュディガーたちが地下で見つかった多数の死体や違法薬物の製造に関わっていたと判断され、こうして城の地下牢獄に収監されてしまったのである。


「それもこれも、全てはあの地下で見つかった書類のせいなのよ!!」

『わらわもそう思うわ。確かにあの死んでいた人間たちが全ての元凶とはいえ、所々に置かれている書類にはわらわたちの関与も匂わせる文言が示されていたと、ここに来るまでの間に聞かされているからな』


 きっとこの事件の裏にはニルスの存在がある。

 なぜかはわからないが、リュディガーたちはそんな気がしてたまらなかった。

 しかし今の自分たちはこんな場所で足止めを食らっている場合ではない。


(こうしている間にもフェリシテが……!!)


 自分たちと別にされてしまったフェリシテの安否が気にかかる。

 武器も連絡用の魔晶石も取り上げられてしまっているのは容易に想像できるので、自分たちが足取りをつかんで助けに行かなければならない。

 そのことを騎士団の団員たちにも話してみたのだが、まずは自分たちの事情聴取が先だということで取り合ってくれそうもなかったのだった。


「フェリシテ……無事かしら?」

「無事でいてくれなければ困るわよ、トリス。それにしてもいつまでこんな所に閉じ込めておくつもりなのかしら? こらーっ!! さっさと話するならしなさいよ!!」


 すると、そのエスティナの絶叫に呼応するかのようにどこかのドアが開く音が響き、続けてカツカツとブーツで地面を歩く高い靴音が響いてきた。

 そして四人の目の前に現れたのは、冷たい目をしている茶髪の若い男と金髪のこれまた若い男の二人組だった。

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