159.全員見つけるまでの孤独な戦い
扉の向こうの通路へと向かったリュディガーは、すぐ近くの壁に張り付いて曲がり角から先をうかがう。
その曲がり角の先からは明らかに武装している、小柄だがスキンヘッドの厳つい風貌の男がロングバトルアックスを握ってリュディガーの方に向かって走ってきているのが見えた。
こうなれば先にやっちまえという精神で、リュディガーはそのスキンヘッドの男の前に飛び出して全力で顔面に高い打点の蹴りを繰り出した。
「ぐわっ!?」
怯んだ男に対して今度は股間を蹴り上げてやり、ロングバトルアックスを握る手に力が入らなくなったスキンヘッドの男の身体を一気に持ち上げて、奥に見えるドアに向かって全力で突進。
「ふん!!」
見張りの身体を持ち上げてそのままドアに向かって突進し、重さとスピードでドアを突き破りつつ奥の壁まで突進して見張りを放り投げる。
放り投げられた見張りは、その壁の前に置いてあった色々な用具や材料が整理整頓されて並べられている大きな棚を破壊して派手に気絶。
当然、その衝撃音で室内に居た色々な人間たちがリュディガーの存在に気がつく。
「なっ、何だあいつは!?」
「侵入者だ!! 迎え撃て!!」
バタバタと室内が慌ただしくなる。
先ほど暴れていた部屋と似たような造りの地下なので天井に窓なんか必要ないが、天井一杯に備え付けられている照明設備が、ここが地下だということを忘れさせてくれそうな場所である。
しかしその場所で行なわれているのはこの世界を破滅へと導くことになるであろう、凶悪な計画の下準備。
仲間たちを助けに行くついでに、それをストップさせる為にリュディガーは行動している。
ニルスがたくらむ計画など絶対に成功させる訳にはいかない。
(相手は多いが、一人ずつ倒していけば……!!)
見張りの男を気絶させ、続いて右足で蹴り掛かってきた女のその右足を掴んで力任せに遠くへと投げ飛ばす。
室内は広いが、作業用のテーブルや棚といった大きな家具が至る所に置かれているので、なかなか相手が武器を振り回せない状況なのがリュディガーにとっては救いだった。
リュディガーの方も武器を持っていては効率よく戦えないと考えてロングソードを投げ捨て、体術で対抗する。
ここにはロングソード以外にも武器になりそうなものが数多く存在しているので、無理に相手の武器を奪い取る必要もないというのもまたリュディガーに有利に働いた。
なので大人数相手にガンガン臆することなく攻めていく。
怯んだら負けだ。
ロングソードを振り被って向かってきた男に先に抱き付き、男が向かってきたその勢いを利用して近くの棚目掛けて突き飛ばす。
後ろを向けば別の女が魔術の杖を構えて向かってきたので、足首を軸にしゃがみながら横に一回転し、低い体勢から相手の膝を崩してアゴ目掛けて左の拳を突き上げる。
「ぐっ!?」
アゴに打撃を受けて意識が遠のく敵だが、リュディガーはお構いなしに追い打ちでその頭部を地面に叩きつけて気絶させる。
しかしまだ次々に敵がやってくる。
「くっ!」
自分目掛けてナイフを突き出してきた男の右腕の外側に回って、リュディガーは肩からその腕を逆方向にへし折りつつ膝蹴りを腹に入れてから地面に叩きつける。
続けて逆側から小振りな斧を手に向かって来る女の腹を前蹴りで蹴って、前屈みになった女の頭に間髪入れずに再び前蹴り。
女を気絶させてから、今度は部屋の奥のドア目掛けて走り出したリュディガーが近道の為に近くの長テーブルに飛び乗ると、それに呼応した別の男がロングソードを片手に同じくテーブルに飛び乗って向かってきた。
「おらあっ!」
「ふっ!」
ブンッと振り払われたロングソードを屈んで回避し、そのまま男にタックルして男の腰をがっちり両手で抱えて男の後ろへ回り込み、全力で男を持ち上げて後ろに重力の赴くままに背中から倒れ込む。
「なっ……!?」
「ぬうあ……ああああっ!!」
ものすごい音と共にテーブルに背中から叩きつけられた男とリュディガーだったが、リュディガーは素早く男にのしかかって彼の顔面を何度も殴りつけ、男の力が抜けた所で力任せに男を立たせる。
更にもう一発おまけで男の顔面に右のパンチを入れ、男の足を今度は持ち上げて地面に引き倒し、咄嗟のことに反応出来ない男のその顔面を右足でテーブルごと踏み抜いた。
「ぐぶぇ!!」
テーブルに穴が開くほどの衝撃で男を完全に気絶させ、こっちの部屋の敵も全員倒したと判断したリュディガーは、更に奥にある牢獄区画を目指して部屋の奥の扉へと走り出すのであった。
きっとこの先にアレクシア、トリス、エスティナ、フェリシテたちが居るはずだと信じて……。




