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14.精霊との再会と残る疑問

 その走っているリュディガーの後ろから、ふと声がかけられる。


『リュディガー、無事だったか!!』

「あっ、アレクシア! お前こそ無事だったか?」


 聞き覚えのある声が聞こえたのでそちらに顔を向けてみれば、そこには少しだけ宙に浮きながら自分を追いかけているアレクシアの姿をリュディガーの目が捉えた。

 戦いの痕跡なのか、その肌や服に汚れがついているものの、特に怪我を負っていたりということはなさそうだった。


『わらわならこの通り何も問題はない。むしろそなたは今までどこにいた? わらわはずっとこの周辺を捜していたのだぞ?』

「ああ、それがだな……」


 リュディガーは自分が地下のアジトに追い込まれていたことや謎の二人組の男、そしてこれまた謎の女のことなどを話した。

 それを聞き、アレクシアはふむと考えこむ。


『その二人組の男がわらわを狙っている、盗賊団だか何かのリーダー格というわけだな』

「そうらしい。とにかく一刻も早くここを離れよう。おそらくあの女も同じ集団の仲間だろうからな」

『それがいいだろう』


 こっちだ、とアレクシアはリュディガーを先導していく。

 その先導されながらの彼女の報告によると、黒ずくめの集団は倒しても倒してもキリがないぐらいの人数だったらしく、それこそキリが良いところでさっさと離れてリュディガーを探していたらしい。

 確かにそれぐらいの規模の人数であれば、騎士団の話に出てくるぐらいに有名になっていてもおかしくはないと考えるリュディガーだが、唯一引っかかっているのは地下通路で自分に道を教えてくれたあの女のことだった。


(それにしても、やはりおかしい……あの女が本当にさっきの盗賊団の仲間だったとしたら、わざわざ俺を逃がすなんてことを自分から言うだろうか?)


 何か別の意図があって、あの女はあそこにいたのではないか?

 少なくとも自分はそう思えて仕方がなかったリュディガーは、それをアレクシアに問いかけてみる。


『あの集団の仲間じゃないか、と疑っていた例の女が気になるだと?』

「そうだ。俺は直感というものは余り信じないタイプなんだが、どうも引っかかって仕方がない」

『そう言われてもな。そなたはその女の仲間かもしれない白と黒の男たちに捕らわれていたのだろう? だったら何も悩むことなどない。さっさと逃げるべきだろう』


 気になることは気になるのだが、自分もアレクシアも狙われていると分かった以上やはり逃げる方が今は正しい選択だろう。

 リュディガーは自分が丸腰なのもあって、どうか途中で敵に出会いませんようにと願いながらアレクシアとともに道を駆けていく。

 だが、その願いもむなしく黒ずくめの集団が立ちふさがってきた。


「おい、いたぞっ!!」

「逃がさないわよ!」

「くっ……!!」


 素手で対抗するにはかなり分が悪いので、ここは体術や格闘戦で相手の武器を奪って反撃するしかない。

 リュディガーがそう考える一方、アレクシアはあのケルベロスの時と同じように魔術を使ってその立ちふさがる敵たちを倒していく。

 傭兵稼業を始めてから今までは、体内に魔力がないことからほとんど一人で戦ってきていただけあって、こういう時に戦える仲間が一緒にいてくれるのは本当にありがたいことだ、とリュディガーは心からそう思っていた。

 しかし、さすがに精霊のアレクシアといえども次から次に出てくる黒ずくめの集団に対抗するのは骨が折れる作業だし、先ほど彼女も言っていた通りキリの良いところで逃げなければ埒が明かない。


「適当に相手をして逃げるぞ!」


 リュディガーは向かってきた相手に前蹴りを入れて怯ませ、その相手からロングソードを奪い取って対抗する。

 武器を手に入れられれば不安要素はかなりなくなる。

 騎士団や警備隊での訓練では、ソードレイピア以外にも弓やバトルアックス、ロングソードに槍といった各種武器を扱わせてもらっていたリュディガー。

 体術や格闘戦も学ばせてもらい、魔力がないハンデをカバーするべく必死になっていたその経験が今、こうして役に立っている。


『こっちは片付いたぞ。行こう』

「わかった!」


 だが、そうやって足止めを食らっている間に敵は先手を打ってきたようだ。

 盗賊団はなかなか広い範囲にテリトリーがあるらしく、今までのその足止め部隊とは比較にならない人数の待ち伏せ要員を、アクティルに続く道の終盤に配置していた。

 そしてその集団の先頭には、あの地下牢で出会った二人の男のうち、眼鏡をかけている白髪の男の姿があった。


「ずいぶんと高い実力ですね。いや、感心しますよ」


 パチパチパチとどこか気の抜けた拍手が、周囲の木の幹に反響する。

 その眼鏡の男は多数の部下を従えて、せっかく捕らえた獲物を逃がすまいとこうして待ち伏せをしていたのだった。

 そして、本来の目的であった精霊もその獲物とともにいるとなれば好都合でしかなかった。

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