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144.看視担当地域

「えっ? 担当地域?」

『うん。僕はバーレン以外にもヴィルトディンも看視を担当しているもんだから、向こうがそんな状況になっているんだったら僕も行かないといけないんだよ』


 セルフォンと一緒にリュディガーたちの帰りを待っていたシュヴィリスが、自分もヴィルトディンに向かうと言い出したのだ。

 いくつもの大陸が存在しているこの世界では、どうしても一匹のドラゴンで何箇所かに分けて看視担当を決めているのだという。

 しかしこれも自分たちには関係のない話なので、リュディガーたちにとっては「ああそうですか」というしかなかった。

 だが、その次に飛び込んできた情報を聞いてしまってはリュディガーたちもヴィルトディンへと行くことになってしまうのだった。


「へっ?」

「だから、そのエスヴェテレスの軍勢の中にいたらしいんだ。黒ずくめの服装で金髪の魔術剣士の傭兵が!」


 ファルスの警備隊長であるシャラードから飛び込んできたその話は、エスヴェテレス軍の中にリュディガーと因縁があるうちの一人である、魔術剣士のグリスがいるという話だったのだ。

 しかし、リュディガーはここでしっかりと確認が必要だと考えてシャラードに質問する。


「違うと思うな。だって、黒ずくめの服装で金髪の魔術剣士なんて他にもたくさんいると思うけど」

「いいや、それは間違いなくお前の昔の仲間だったっていうグリスって奴だぜ。なぜなら、ヴィルトディンの密偵が潜り込んだエスヴェテレスの軍勢の中に、そのグリスってのをちゃんと確認したんだってよ!」

「ふうむ……」


 シャラードからの報告を聞き、リュディガーは考え込んでしまう。

 イディリークがある大陸のみならず、世界中にその名前を轟かせていた元のパーティーメンバーたちは、傭兵仲間たちはもちろんのこと少なからず各国の騎士団や警備隊などにも顔も名前も知られている。

 どうやら今度は、今回のファルスとバーレンの戦争を引き起こそうとしていた手をすぐに実行しているようだが、何にしてもグリスがいるというのであれば行かざるを得ないだろう。


「エスヴェテレスの皇帝もその武力で自分の地位を上げてきたって話だし、どう考えてもそっち方面で意気投合して手を組んだとしか思えないわよ」

「うん……フェリシテの言う通りだわ。でも、私たちが今回の戦争に真っ向から挑んでも勝ち目は薄いと思う」

『うーん、それもそうだよねえ』


 ドラゴンの姿で屋外の鍛錬場に立っているシュヴィリスは、自分もさすがにエスヴェテレスの軍勢を相手にするのは厳しいかなあと考えてしまう。

 なので、ここはグリスの撃破を念頭において戦争に参加することに決めた。


『そうか。そなたたちは先にヴィルトディンへと一度戻るんだな』

「ああ。まさか一度行った国にもう一度こうしていくことになるとは思ってもみなかったがな……」


 ファルスとバーレンを往復するのとは訳が違う。

 しかもリュディガーたちはヴィルトディンからは突然姿を消してしまった身分なので、下手をしたら自分たちまでエスヴェテレスの仲間だと思われてしまう可能性だってある。


「例えば私たちがエスヴェテレスをたきつけたって話になるかもしれないしね」

「そうそう……それからこんなことも考えられるわよ。今は敵同士だとはいえ、ヴィルトディンの人たちはグリスとリュディガーが昔は仲間だったって知っているんだから、もしかしたら仲間割れを起こしたふりをして手を組んでいたって向こうが判断したりして」

「……その想像力の豊かさには閉口する」


 フェリシテとエスティナの予想を聞き、リュディガーがうんざりしたように首を振る。

 しかし、そんな人間たちを背中に乗せながらシュヴィリスが自分の考えを述べる。


『そんなの、向こうに行ってみないとわからないじゃないか。とにかくなんにせよ、僕たちが狙うのはグリスただ一人だからね!』

「もちろんだ」


 ファルス帝国から飛び立った青いドラゴンは、数名の人間たちを背中に乗せてヴィルトディン王国へと向かって飛んでいく。

 果たして本当に向こうにいるのはグリスなのだろうか? それも向こうに行ってみなければわからないが、ファルスとバーレンを衝突させようとしていたのだってかつてのリュディガーの仲間なのだから可能性は高い。

 しかし、その中で違和感を覚えていたのはアレクシアだった。


【そういえば、エスヴェテレスはヴィルトディンに何も言わずに進軍してきたのか? ……いや、戦争は突然始まるものだとは思うからその方が正しいのか……】


 でも、この戦いには違和感を覚える。

 わざわざ海賊まで動かして挟み撃ちにするなんて、軍事力に力を入れている国家のやることなのだろうか? とアレクシアが違和感をぬぐい切れないまま、青いドラゴンとともにヴィルトディンのある大陸へと近づいて行った。

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