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131.不思議な夢

「足の調子はどう?」

「ああ、そろそろ大丈夫そうだ」


 リュディガーが成り行きでファルスにやってきてから五日後。

 今のところ、順調にリハビリも進んでおりこのままいけばセルフォンに言われた通り、あと二日ほどでまた普段通りに生活できそうである。

 バーレンからやってきたアレクシアたちも合流し、セルフォンから聞いた話も聞いて東にある洞窟へと向かうことになった一行。

 しかし、その前にこのファルスの頂点に君臨している人物との面会が待っている。


「俺たちもシュソンやシュヴィリスから話を聞いて驚いたが、まさか裏で俺たちをぶつけ合おうとしていた奴らがいたなんてな」

「まったくだ。もしあのままファルス側が進軍してきていたら、俺たちとの全面戦争に発展していただろうからな」


 アレクシアたちと一緒にバーレンからやってきたカリフォンや、雪山で出会ったラシェンもこの部屋にいるので、やや手狭になってしまっている感は否めない。

 だが、それもこれも全てはあのニルス率いる裏世界の集団が糸を引いていたからである。

 それを聞いたこの国のトップも、ぜひとも直接話を聞いてみたいと直々にリュディガーの元へとやってきた。


「執務が立て込んでいてなかなか来ることが出来なかった。許せ」

「は、はあ……」


 金色の髪の毛を伸ばして、相手から見て左目を隠している若い男。

 白い上着と黒いズボンの対照的なカラーリングでコーディネートされた服装を着こなし、二人の将軍を従えてリュディガーたちの元へとようやくやってきた彼こそ、このファルスの頂点に君臨する皇帝セヴィストだった。

 さすがに皇帝ともなればいろいろと仕事が山積みの状態であり、さらには今回のラシェンたちとバーレンとのいざこざの件、それからシュヴィリスやセルフォンといった伝説のドラゴンなど、次から次へと対応しなければならないことが出てきてしまった。


「五日間、姿を見せることができなかったのはこのためだ。大目に見てくれ」

「それは別にいいんですけど、その……両隣の人たちは?」


 皇帝の護衛としてついてきたのは、騎士団の黒い制服を着込んだ黒髪でやや細身の剣士の男。

 そして見るからに傷だらけの鎧を着込んで、まるでこれから戦争にでも行くのかと思うような格好で現れた中年の青髪の槍使いの男だった。

 その二人については、セヴィストがアゴをしゃくって自己紹介をするよう指示を出す。


「俺はファルス帝国両翼騎士団の団長を務めるルザロだ」

「警備隊の総隊長をさせてもらってるシャラードってもんだ。よろしくな」

「俺のファルスでこの二人が最強なんだ。覚えておけ」


 聞くところによれば、この二人は「双璧の将軍」の異名をとっている長年のライバル同士らしく、今回危うく戦争になりかけたバーレンと以前別の理由から戦争になった時も、二人揃って騎士団と警備隊の総指揮を執っていたことで知られている。

 それだけではなく二人も前線に出て戦うことがあるのだが、一人ずつでも一騎当千のレベルなのに二人が息のあったコンビネーションを見せた時には、このファルスにある国の中で勝てる人間はいないとされている。

 イディリークのある大陸を出たことがなかったリュディガーですら、噂には聞いたことがあるほどのそんな二人を従えてやってきたファルス帝国の皇帝は、改めてリュディガーに今までのことについて詳しく説明を求める。


「言っておくが、成り行き上とはいえラシェンの右翼騎士団にそれなりの被害が出ているわけだからな。返答次第によっては極刑もあり得ることを忘れるなよ」

「は、はい……」


 そもそも隠していてもどうせバレることではあるので、リュディガーはアレクシアのことも含めて自分の知っていることを全て話した。

 そしてその中には、自分が見た奇妙な夢の話も含まれていた。


「そんな夢を見たのか?」

『おい、それはわらわたちも初めて聞いたんだが』

『某も初めてだ。なぜ話さなかった?』

「夢の話をしても信じてくれるかわからなかったから、話すかどうか迷ってたんだ」


 そう弁解するリュディガーだが、話を聞いていたシュヴィリスとセルフォンが顔を見合わせているのに気がついて問いかける。


「どうした?」

『いや……今の夢の中に出てきたという二人の人間の話なんだがな、そなたの見た内容からするに、シュヴィリスも某もその格好や容姿の人物に出会ったことがあるかもしれん』

「えっ!?」


 セルフォンに思わず詰め寄ってしまうほどの驚きがリュディガーを襲うが、ここは黙ってセルフォンの話の続きを聞くべきだと思い直して距離を取る。


「それはどういうことなんだ?」

『そのままの意味だ。黒ずくめの人間の方は恐らく、某たちの知り合いだと思う。それからもう一人の男の方が……確証は持てないんだが、それは多分ルヴィバーじゃないのか?』

「そ……そうなのか?」


 リュディガーのみならず、その場にいる人間たちもアレクシアも全員が呆然としてしまう。

 実際のところ、セルフォンもシュヴィリスもリュディガーの証言から話をしているだけであって、それが本当にリュディガーとトリスの先祖であり伝説の冒険者であるルヴィバーであるという確証はどこにもない。

 しかし、話を聞いていたセヴィストやカリフォンたちはもう一人の男……黒ずくめの人間の方が気になっていた。

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