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129.見知らぬ景色(その2)

「はっ!?」

『あっ、気がついた!!』


 リュディガーが目を覚ますと、そこは灰色の天井が特徴的などこかの部屋だった。

 次に自分がベッドの上に寝ていることに気がつき、さらにそのベッドの横には青髪の男……人間になったシュヴィリスと見知らぬ灰色の髪の男の姿があった。


「えーと、ここはどこだ……?」

『ファルス帝国の帝都ミクトランザにある、フールベリア城の中さ。僕が君をここまで連れてきたの』


 そういうシュヴィリスは、まずは自分の隣にいる見知らぬ男について紹介する。


『それとこの人は、僕がいつも世話になっているファルスにいる医者だよ。名前はセルフォンだ』

「どうもよろしく」

「は、はあ……どうも」


 聞くところによると、セルフォンがリュディガーの両脚を治療してくれたそうなのだ。

 シュヴィリスも昔から世話になっているということで、かなり腕のいい医者らしい……のだが、シュヴィリスの知り合いということはもしかして、と突拍子もないことを考えるリュディガー。

 そこで、礼を言いつつ思い切ってその予想が事実かを確かめてみることにする。


「世話になった。歩行訓練とかは必要になるか?」

「ああ。一週間程度必要になるだろうが、それ以降は歩けるようになるだろう。ただ……」

「ただ?」

「某が思うに、そなたはなぜだか昔の匂いがするんだが……気のせいかな」

「へっ?」


 昔の匂いとは一体なんなのだろうか?

 もしかしたら、自分がルヴィバーの血を引いているからかもしれないと考えたリュディガーは、目の前のセルフォンにそう伝えてみる。

 しかし、彼は首を傾げて眉間に皺を寄せる。


「いや……そうじゃない。もっと違う何かを感じるんだが」

「そう言われてもな。俺は今言った通りルヴィバーの子孫だから、思い当たる節といえばそれしかないんだ」


 昔の匂いというその真意がわからないままだが、こっちの疑問もわからないままにしておいたら困ると考えたリュディガーは、思い切ってセルフォンに質問してみる。


「なぁ、そんな匂いを感じるあんたはひょっとするとシュヴィリスと同じドラゴンなんじゃないのか?」

「……なぜそう思う?」

「シュヴィリスが世話になっている医者、という時点ですでに察しがついていた」


 元々が人間ではない青いドラゴンのシュヴィリスは、確かに人間社会に溶け込んで暮らしてはいるものの、ドラゴンの身体の構造は人間とはまるで違う。

 さらに強大な魔力を持っていることや、シュヴィリスが引きこもり体質で余り他人と会わないことを考えると、そんな彼に付き合ってくれるような人間……しかもすぐに連絡がつくとなれば、もしかするとドラゴンなのでは? というのがリュディガーの予想だった。

 それを聞いたセルフォンは、シュヴィリスに顔を向けてうなずいた。


『……まあ、余り口外しないって約束してくれれば良いか。そなたが察する通り、某はシュヴィリスと同じドラゴンだ』

「人間の姿では医者をやっているドラゴンだと?」

『そうだよ。僕だっていろいろ健康相談に乗ってもらってるんだから』


 そういうシュヴィリスはいったん無視して、セルフォンは話を続けていく。


『ああ。まあ……三千年以上生きていれば人間はもちろん、魔物たちの生態も知り尽くしているからな。だが、そなたが某の元に運ばれてきた時にすぐに違和感を覚えた。魔力がない人間だと』

「それはよく言われる」

『魔術が治療で使えないとなれば、なかなか骨が折れそうな治療になった。だが安心してくれ。木に潰されたのに骨が折れてないというのは不幸中の幸いだった』


 それよりも、とセルフォンはシュヴィリスから聞いた話も含めて話を続ける。


『そなたの昔の仲間が、何かしらの悪巧みをしているようだな。それを聞いてしまったら、某たちもこの世界を看視している立場としては黙って見ているわけにはいかない』

「協力してくれるのか?」

『そのつもりではいるが、まずはその前にそなたに伝えておかなければならないことが二つある』

「二つか……」


 それは非常にシンプルな話で、リュディガーにとってはこの先で乗り越えなければならない試練も含まれていた。


『そうだ。まず、某たちは普段は人間社会に溶け込んで生活しているからな。だから今回のようによっぽど切羽詰まったような状況でもない限り、おおっぴらに協力することはできない』

「そうか……それでもう一つは?」

『こっちの方が重要だ。そなたがそいつらの悪巧みを阻止できるだけの腕前を持っているかというのを、某に証明してみせてくれ』

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