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うつろ船

作者: 植木天洋

 ある日、川の上から小さな家ほどもある器が流れてきました。それはぴったりとしたふたをされて、ゆらゆらと揺れています。大きいのに、水に浮いているのです。

 村の男たちが三人そこに通りかかり、大急ぎで川へかけ降りました。器はとても大きいのですが水につかっているのは下のすこしの部分だけで、ぷかぷか浮いています。

三人は尻をはしょり川に踏み込むと、力を合わせて器を岸へ上げました。

器は岸へ上げたとたん突然どすんと地面に落ちて、もう少しで三人は足の指先をつぶされてしまうところでした。


「これはなんだろうか?」


「中から何か音がするよ。ひっかくような音がするよ」

 通りかかった男の子が、言いました。


 そう言われて耳をすますと、確かに何かをひっかくような音が中からきこえてくるような気がしました。


「まさか、中に誰かいるのかな?」


「誰か、というか、何か、かな?」


 三人は顔を見合わせ、男の子は三人が黙っているので退屈していなくなってしまいました。


「あけるか? あけないか?」


 二人が問答していると、一番最初に器を見つけた男が器の上にのり、蓋を持ち上げていました。蓋は、大きさのわりに案外軽いようでした。


「おーい。勝手にあけるなよー」

 二人は器の上に立った男を見上げて、声をかけました。

「あけなきゃ、なにが入っているかわからないよ」


 なかにはなにもありませんでした。


「なにかあると思っているうちはなにかあるのに、あけてみるとなにもないとは」


 何かを期待していた三人はがっかりしました。


「うつろな舟だー」


 おしまい

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