恋のハットトリック。決めるか守るか、勝つのはどっちだ?
なろうラジオ大賞3 参加作品
使用キーワード「ハットトリック」
校内を、背の高く細身の美男子と、髪の長い美少女、非の打ち所のない二人が歩いている。
通りすぎる者は皆、振り返り噂する。
「おい、見ろよ。生徒会長と副会長が歩いてるぜ」
「素敵ねー お互い付き合えば、お似合いのカップルなのに」
「どちらも成績優秀、品行方正、眉目秀麗に容姿端麗」
「あの会長に誘われたら、どんな女子でも振り向くよな」
「この前、あの3組のお嬢様を落としたってよ」
「ホント? さすが会長、どんな女もイチコロね」
「あれ? でも、すぐ分かれたって」
「やはりあの女じゃな。会長とは釣り合わないよ。顔だけで性格悪いし」
「ってことは次のターゲットは、副会長?」
「副会長はディフェンスが固いからな」
「通称、鉄壁の美少女」
「今まで数々の男子が告白しても、誰も落とせなかったって言うし……」
「なあ、この勝負どっちが勝つと思う?」
「勝負?」
「ああ、もし会長が副会長と付き合えば、これで3人目。ハットトリック達成」
「でも、副会長は未だ失点なしの防御率0、セーブ率100%」
「どっちだ?」
「会長だろ。この勢いだと、明日には付き合ってるさ」
「いや、見てみろ。副会長は顔も合わせてないぜ。脈なしだな、これは」
ざわめく生徒達を尻目に、歩く二人は声を潜め話す。
「ねえ、また変な噂してるわよ」
「いつもの事だろ、気にするな。ところで、3人目って何だ? 俺はそんな遊び人じゃないぞ」
「私だって、鉄壁の女ってなによ。まるで冷たい女みたい」
「実際、そうだろ? よってきた男、全員追い返してんだから」
「それはそうでしょ、とっくの昔から付き合っているんですから。私たち」
「言っとくけど、3組のアイツとは付き合ってないからな」
「ええ、分かっているわ。あの子、あなたといることで箔をつけたかっただけだから」
「しかし、どうする? 実は既にこんな関係なんて知られたら」
「そうね、それだとなんだか、私が負けたみたい」
「このままだと、俺が負けることになるのか」
「なんで、こんなに回りの目を気にしながら過ごさなければいけないの! もう最悪! せっかくの学園生活が」
「そのために生徒会役員になったんだろ。もうすぐ部屋に着くから。そしたら二人っきりだぞ」
「あーあ、普通に生活したい。ロスタイムが多すぎるわ」
「なら、延長戦するか?」
「延長戦?」
「大学へ……」
「一緒に……?」
「同じ大学に進学して……」
「「キャンパスライフ!!」」
どうやらこの試合の決着は、延長戦までもつれるようだ。