第4章 22話 「オペラ殺人事件 後編」
22話です。
名探偵 神楽坂倫子シリーズ File 1
堂々の完結です。
いつも読んでくれてありがとうございます。
(o^o^o)
名探偵 神楽坂倫子シリーズ File 1
「オペラ殺人事件 後編」
私たちは一斉にドアの方を見ましたわ。
「ん?どうした?」
そこにいたのは源さんでしたのよ。
「あーーーーー!」
私は思わず、叫んでしまいましたわ。
源さんがダランと下げた左手に持つ、白くて大きな箱を指さしながら…。
あれはケーキの箱に、間違いなくてよ!
マユタン 「源さん。」
マナミン 「源さん!」
プリティ 「ダメな大人め!」
サトミン 「師匠!」
「なんだなんだ?」
冷酷非情な犯人は証拠品を手にしたまま、とぼけ始めだしましたのよ。
ふてぶてしいったらありゃしませんわ!
「私が買ってきたオペラ…。」
私は静かに泣きながらそう言いましたの。
「えぇ!え?え?え?いや!こ、これは…。」
そう言いながら源さんは首を左右に振りながら、オロオロと慌てふためくばかり。
誰がどう見ても源さんは挙動不振でしたわ。
「師匠がリンリンのケーキを食べちゃったの!」
サトミンは驚いた顔で、源さんに尋ねましたの。
「盗み食いまでするなんて、本当にダメな大人なのだ…。」
プリティちゃんは、冷たい声で言いましたわ。
源さんは最初、納得のいかない顔をしておりましたけれど、ため息を一つつくと突然両手を広げ
「フハハハハ!ケーキはこの源さんが、全部食べてしまいました!ごめんなさい!」
と言いましたの。
シーン…。
その場の空気の温度が一気に下がりましたわ。
「あ、あれ?」
空気の変化に気づいた源さんは狼狽え始めましたわ。
「犯行を認めましたね源さん…。」
私はそう言って源さんを指さしましたわ。
人を指さすのは失礼ですけど、名探偵はみんなそうしますでしょう?
「ごめんなさい。全部食べてしまいました…。」
源さんはそう言って項垂れましたの。
「それでは今から裁判を始めます!被告人の源さんは、椅子に座ってください。」
私がそう言うと、源さんは小さな声で「はい…。」と言って、椅子に座りましたの。
マユタン 「裁判をするのね。」
マナミン 「弁護人はどうすのかしら!」
プリティ 「面白くなってきたのだ…。」
サトミン 「ししょ~!」
マミタン 『ん~?なんか引っかかるのよねぇ~。』
名探偵 「まずは源さん。弁護人を選出してください。」
源さん 「弁護人?」
名探偵 「これは裁判ですから、被告人である源さんにも弁護人が必要でしょう。原告である私の弁護人には、マミタンを指名いたします。いかがですかマミタン。」
マミタン 「え?あたし?」
名探偵 「そうです。マミタンです。」
マミタン 「わかったわ。あたしに任せて!」
源さん 「弁護人って言ってもよぅ…。」
源さんは困った顔をしましたわ。
するとその時
「はいはいはーい!ボクが師匠の弁護人をやるよ!」
サトミンが手を挙げて、そう言いましたの。
「え!」
源さんはそう言ってサトミンの顔を見ましたわ。
「師匠の弁護人は弟子のボクがやる!師匠の罪は弟子のボクの罪だ!」
サトミンはそう言って鼻息を荒げましたわ。
「サトミン…。」
源さんはそう言って目元を手で拭ったわ。
美しい師弟愛ですわね。
「裁判長は女神様。裁判官はマナミンとプリティちゃんにお願いしてもよろしいですか?」
マユタン 「お引き受けいたしますわ。」
マナミン 「わかりました。」
プリティ 「喜んで。」
こうしてオペラ殺人事件の裁判が始まりましたの。
裁判は裁判官の両サイドに、原告と被告にわかれて始まりましたの。
裁判長 「それでは裁判を始めます。まずは原告側の弁護人からどうぞ。」
マミタン 「それではまず最初に、この事件に至るまでの経緯を説明させていただきます。」
裁判長 「お願いします。」
マミタン 「原告のリンリンは、ハーゼル・アオバのオペラと言うケーキが大好きでした。ただリンリンには一つだけ、不満があったのです。」
裁判長 「不満とはなんでしょうか?」
マミタン 「オペラというケーキは大変美味しいのですが、原価率や製造工程の問題で、小売りされているケーキが小さいのです。」
裁判長 「なるほど。続けてください。」
マミタン 「リンリンはオペラが大変気に入り、一ヶ月以上毎日オペラを買い求めました。それはここにいる皆様もご存じかと思います。」
マユタンとマナミンとサトミン。プリティちゃんも大きく頷いたわ。
裁判長 「確かに原告は毎日オペラを食べていましたね。」
マユタン 「はい。最初は小さなオペラで満足していたリンリンですが、そのうちに小さな夢を見るようになったのです。」
裁判長 「夢とはなんでしょうか?」
マミタン 「はい。リンリンは大きなオペラをお腹いっぱい食べたいという、夢を見るようになったのです。」
裁判長 「それはステキな夢ですね。」
マユタン 「はい。食いしん坊のリンリンらしい、可愛くて小さな夢です。原告はその思いをハーゼルアオバの店主さんに伝えました。」
裁判長 「それでどうなりましたか?」
マミタン 「店主さんはリンリンの夢を快く叶えてくれました。お得意様の頼みなら断れないと、一日に販売するオペラを全てカットしないで売ってくれたのです。」
マミタンの言葉を聞いて、源さんの額から汗が流れ始めたのを私は見逃しませんでしたわ。
裁判長 「素晴らしい店主さんですね。」
マミタン 「リンリンは夢が叶って大変喜びしました。オペラを受け取ったリンリンは満面に笑みを浮かべながら、耳を疑うような信じられない事をあたしに言ったのです。」
裁判長 「信じられない事とはなんですか?」
マミタン 「リンリンは無理を言って作ってもらったオペラを、みんなで食べようと言ったのです!」
マナミン 「まぁ!」
プリティ 「信じられないのだ…。」
サトミン 「食いしん坊のリンリンが!」
源さんは頭を抱えだしましたわ。
罪の重さに気付き、罪悪感に苛まれたのでしょうね。
マユタン 「あたしとリンリンは、乙女座のシミュレーターで練習をする予定でした。
しかし今日は珍しくマジカルチームの全員がこの場所に集まる事が出来ましたので、オペラをみんなで食べようとあたしとリンリンは今日ここに来たのです。そうしてこの悲しい事件が起こってしまったのです…。」
マミタンはそう言って、やれやれという風に両手を上げて首を左右に振りましたわ。
裁判長 「わかりました。被告側の弁護人からは、何かありますか?」
裁判長に促され、被告人と弁護人は話を始めましたの。
サトミン 「師匠。ダメだよ。全然勝ち目がないよ…。」
源さん 「無罪にしろとは言わねぇ。少しでも減刑してもらえるように頑張ってくれねぇか?」
サトミン 「どうやってするの?」
源さん 「それを考えるのが弁護人の仕事じゃねぇか。」
サトミン 「そうか!でも、どうやったらいいのかな~?」
源さん 「無罪なんて絶対に無理だ。最初に罪を認めてから、ちょっとでも俺の心証をあげる努力をしてくれ。」
サトミン 「わかった!やってみる!」
「裁判長!師匠は全面的に罪を認めています!」
サトミンは右手を挙げて、そう言いましたわ。
裁判長 「わかりました。他に言うことはありませんか?」
サトミン 「師匠はいい人です!」
裁判長 「具体的にお願いします。」
サトミン 「えーっとね。師匠はボクを弟子にしてくれました!」
裁判長 「他にはありますか?」
サトミン 「あとねぇ。増し増しチャーシュー麺を食べさせてくれました!めちゃくちゃおいしかったです!」
増し増しチャーシュー麺?
私、今の言葉をしっかり聞きましてのことよ?
増し増し…。
なんて甘美な響きでしょう。
私、大盛りと増し増しという言葉が大好きですの。
裁判長 「被告人の源さんへの質問です。なぜあなたは冷蔵庫の中のケーキを勝手に食べたりしたのですか?」
源さん 「あまりにもおいしそうだったので、つい魔が差してしまいました…。誠に申し訳ありません。いかようなる罰も謹んで受ける所存であります…。」
裁判長 「潔く罪を認めて謝罪をすると言うのですね?」
源さん 「はい。原告の望み通りにさせていただきます。」
裁判長 「わかりました。被告はそう言っておりますが原告はどうしますか?」
マミタンが私の耳元で「どうするリン?」と尋ねてこられたので、私はマミタンに耳打ちをしましたの。
マミタン 「リンリンは条件をのんでいただければ、被告の謝罪を聞き入れ全てを水に流すそうです。」
裁判長 「わかりました。それでは原告側からの、条件を提示してください。」
私は再びマミタンに耳打ちしましたの。
マミタンはうんうんと頷いた後、裁判長に言いましたわ。
マミタン 「原告からの条件は二つ。一つはオペラを弁償して欲しいということです。」
裁判長 「もう一つの条件とはなんでしょうか?」
マミタン 「もう一つの条件は、ここにいる全員に増し増しチャーシュー麺を食べさせて欲しいということです。」
裁判長 「わかりました。被告はそれでいいですか?」
裁判長がそう言うと、源さんはサトミンに耳打ちをしましたの。
サトミンも何度かうんうんと頷いた後
「裁判長!師匠はリンリンの条件を全てのむそうです。でも、増し増しチャーシュー麺は作るのに時間がかかるんだって。1週間後なら用意出来るから待ってくださいって。ケーキの方も同じ物をすぐに用意出来ないから、裁判が終わったらボクが今日の分のケーキを買いに行くから、その時にオペラも注文しますって。」
裁判長 「原告側は被告の提示に納得出来ますか?」
マミタン裁判長が私の顔を見ましたので、私は大きく頷きましたわ。
マミタン 「はい。」
裁判長 「それでは被告は原告にケーキを弁償し、増し増しチャーシュー麺を全員に食べさせる事を求刑いたします。これにて本法廷は閉廷といたします。」
裁判長はそう言うと、パン!と一つ手を叩きましたの。
これで「オペラ殺人事件」は無事に解決したのですわ。
名探偵の出番はありませんでしたけれど。
オホホホホ!
その後、サトミンが代わりのケーキを買いに行ってくれてみんなで食べましたの。大変おいしゅうございましたわ。
源さんがお詫びだって言って、私はモンブランとイチゴのショートケーキを頂きましたの。
みんなでケーキを食べていると
サトミン 「そう言えばさ~。オペラってどんなケーキなの?ボクは食べた事がないな~。」
源さん 「オペラってのは四角い何層にも分かれたケーキでな、スポンジにはコーヒーとコアントローが染み込んでて、チョコレートでコーティングされてんだよ。」
プリティ 「おいしそう。」
マユタン 「オペラはお家じゃ作れないわね。手間がかかりすぎるもの。」
マナミン 「そうね。ちょっと手間がかかりすぎるものね。」
リンリン 「でもおいしかったでしょ?源さん。」
源さん 「あ、あぁ。うまかった。ごめんなさい。」
リンリン 「もういいですよ~。謝らないでくださいよ~。」
マミタン 『なんだろう…。なーんか、引っかかるのよねぇ…。』
サトミン 「コアントローってなに?」
源さん 「リキュールだな。40度くらいあるんじゃねぇか?」
サトミン 「じゃあ、どっちにしてもボクは、オペラを食べられなかったんだね。」
リンリン 「あ!」
マミタン 「そうか!」
プリティ 「お酒。」
マナミン 「本当だわ!」
源さん 「そうだな。」
マユタン 「本当ね。」
そう言うと、最後はみんなで大笑いしましたの。
食いしん坊探偵 神楽坂倫子シリーズ File 1
「オペラ殺人事件」 Fin
【次回予告】
ついに終わりを迎えた「オペラ殺人事件」
だがしかし!この事件にはまだ、深い闇が残されていたのだ…。
裁判では明かされなかった真実が今、解き明かされる!
次回 「ケーキ泥棒の末路」
乞うご期待!
※タイトルは変更になる可能性があります。




