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第4章 第19話 「山貫の人々」

19話です。



いつも読んでくれてありがとうございマッスル。


 (=^・・^)v Thanks!!

「ただいま~。」 

家の勝手口のドアが開き、山本貫徹が中に入ってきた。

トタトタトタ。

「じーじおかえりー。」

家の奥から小さな足音が響き、紫色のクマのぬいぐるみを手にしたお下げ髪の小さな女の子が走ってきた。

「ともちゃんただいま~!」

貫徹は顔をくしゃくしゃにしながらそう言うと、腰をおろし両手を広げた。

女の子は遠慮なく、体をぶつけるように貫徹の胸へと飛び込んだ。

孫のともちゃんも今年で5歳になった。

ボディアタックの威力が年々上がってきているのを、貫徹は肌で感じている。

それは決して嫌な事ではない。

かわいい孫が成長している証拠なのだから、多少のダメージは我慢すればいい。

あと何年かすれば、こんな事もしてくれなくなるだろう。


「じーじ、今日も悪い人を捕まえたね~。」

ともちゃんは目を輝かせながら言った。

「今日はじーじとテヤンデーで捕まえたよ~。」

貫徹はともちゃんを抱き上げながら言った。

「ともみTVで見てたよ~。じーじもテヤンデーもかっこよかったねぇ~。」

ともちゃんは笑顔で言った。

「そうか~。かっこよかったか~。」

貫徹は鼻の下を伸ばしながら、デレデレしている。


ともちゃんにとってじーじはヒーローであり、テヤンデーは世界一かっこいいロボットだ。

じーじはテヤンデーに乗って、島に悪い事をする人を捕まえるのだから当然の事である。

じーじはいつも優しい。

お菓子も買ってくれるし、パフェだって食べさせてくれる。

お願いすればテヤンデーにも乗せてくれるのだ。

そんな事をしてくれるじーじは、お友達のまさみちゃんにもいないだろう。

じーじはともちゃんの自慢のじーじなのだ。


でも、ともちゃんが一番好きなロボットはマジカルプリティだ。

テヤンデーは世界一かっこいいロボットで、一番好きなロボットはマジカルプリティ。

かっこいいと好きは別の話なのだが、それは絶対にじーじには内緒だ。

だってじーじが悲しむから。


マジカルプリティと言えば、じーじがこの前マジカルプリティのクマさんのぬいぐるみをくれた。

TVで見ていてかわいいなぁと思ったやつだ。

ともちゃんは飛び上がって喜んだ。

じーじのほっぺに何回もちゅーをした。

じーじはいっぱい喜んでくれた。

まさみちゃんに自慢したら、まさみちゃんもパパからもらったと嬉しそうに言った。

まさみちゃんはパパの事が大好きなのだ。

だからあまり会えないのが寂しいと言っていた。


まさみちゃんが持つパパが作ってくれたという、マジカルステッキがいいな~と言えば、まさみちゃんは鼻の穴を広げながら

「パパにともちゃんのも作ってってお願いしてみるよ!」

と言ってくれた。

まさみちゃんは優しいのだ。

怒るとちょっと怖いけど。



青葉シティロード商店街の入り口の近くに「山貫やまかん」はある。

決して綺麗とは言えない昔ながらの店構えだが、建物自体は大きな3階建てだ。

毎日、客足が耐えないほど繁盛していて、青葉シティロード商店街会長、山本貫徹の家であり店である。

2階に貫徹夫婦、3階には息子夫婦が住んでいる。

貫徹が店に立つ時間は、極めて短い。

一日に一時間もないだろう。

店を切り盛りしているのは貫徹の妻、静江と一人息子の貫太郎である。

 

だが貫徹の朝は早い。

息子の貫太郎と二人、朝の4時には大きなトラックに乗り、島の南にある青葉漁港へと向かう。

貫徹と貫太郎が漁港に着くと

「よ!貫徹さん!調子はどうだい?」

「今日はいいかたの鯛が揚がったよ!」

「うちもいい鮃が揚がったんだ。見たら驚くぜぇ?」

「今日も元気そうだね~。」

こんな感じで漁師や漁協の関係者が、次々と二人に声をかけてくる。


山貫で扱う魚は青葉漁港で水揚げされたものが多い。

青葉漁港で水揚げされた魚のは、まず最初に青葉島で消費されているのだから当然と言えば当然であろう。


日頃の貫徹はテヤンデーに乗ってばかりのダメ親父なのだが、魚の目利きに関しては一流の目を持っている。

毎日、真面目に働いている貫太郎ですら貫徹には及びもしないのだから、その目は確かなのだろう。

貫太郎は貫徹に教わりながら目を養ってはいるのだが、まだまだ貫徹には及ばない。

朝の仕入れが、貫徹の唯一の仕事と言ってもいいだろう。


貫徹は青葉島の魚屋さんの中でも漁師や漁協関係者から一番人気があり、一目置かれた存在である。

貫徹は気前もよく、面倒見もいい親分肌の男だからだ。

こっちが誘って飲みに行っても大抵は貫徹が払うし、祝い事を耳にすれば、いくらかのお祝いを包んでくれたりもする。

相談を受ければ親身になって話を聞き、アドバイスもしてくれる。

まさに男の中の男である。

貫徹が長年商店街の会長をしているのも、そんな貫徹の人柄にあるのだ。


しかし、貫徹の活躍の裏にはある人物の大きな支えがある。

その人こそが、山本貫徹の妻、山本静江である。

静江は貫徹より二つ年上の姐さん女房だが、頭も切れるし人付き合いにも長けている。

何よりびっくりするほど気が利き察しもいい。

貫徹が飲みに行くともなれば、貫徹が気付かぬうちに財布にお金を入れてくれる。


静江は商売も上手で、山貫は静江が居ないと潰れてしまうだろう。

いや、貫徹だけなら山貫はとっくの昔に潰れていたはずだ。


静江と貫徹が一緒になって30年になるが、今まで一度も貫徹に文句を言った事がない。

いつもニコニコしながら、貫徹のやる事を黙って見ている。

貫徹のやる事に口を挟んだりはしないし、テヤンデーを買うと言った時ですら反対しなかったのだ。


だが貫徹は他人の前で静江の話をほとんどしない。

したとしても、褒めもしなければけなしもしない。

静江に偉そうな風には言わないが、直接感謝を伝えたりもしないが、貫太郎はそれが気に入らないのだ。

小さい頃からそうだった。

貫徹は仕朝の入れが終わると、ろくに店にも立たずに好きな事を好きなだけして生きている。

母という大きな犠牲を払いながらだ。


貫徹は母をないがしろにしているわけではないので今は何も言わないが、もしも貫徹がそんなことをしたら貫太郎は間違いなく母に付くつもりだ。

貫太郎は貫徹を憎んでいるわけではない。

母の誕生日にプレゼント一つ送らない貫徹に、納得が出来ないだけだ。

もう少し、母に感謝の気持ちを見せてもいいはずだ。

 

貫太郎は真面目で実直な男である。 

妻の友子と一緒になった時、自分は友子に素直な気持ちを伝えていこうと思った。

そうしていれば、貫徹も少しはわかってくれるのではないかとも思ったからだ。


おかげで貫太郎と友子は、周りからおしどり夫婦と呼ばれるようになった。

娘の友美が生まれてからは、夫婦仲はいっそう良くなった。

貫徹は友美を溺愛しているのだが、母への態度は一向に変わらない。


貫太郎が納得出来ないのもわからなくはない話だが、夫婦というのは他人にはわからないそれぞれの形があるのだ。

貫太郎はまだ30代に入ったばかりなのだから、まだまだ新米パパということだろう。

【次回予告】


 倫子のケーキが、何者かによって食べられた!

 私のケーキを食べた不届き者は誰だ!


 怒りに燃える倫子!

 興味津々な聖美。

 知らぬ存ぜぬの未祐。

 割とどうでもいい真美。



次々と見えてくる真実!

浮かび上がる容疑者達!

脆くも崩れていく信頼関係!


マジカルチームの関係は、ケーキ一つで壊されてしまうのか!


次回


 名探偵 神楽坂倫子シリーズ 第1作。


 「わたしのケーキを返せ!前編。」


 乞うご期待!

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