第4章 17話 「サトミンの日記 前編」
17話です。
初の前編、後編です。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
ボクは今日から日記を書くことにした。
源さんから出来るだけ日記をつけるようにしろと言われて、この日記帳を貰ったからだ。
この日記帳はすごくいい。
分厚くて表紙が白い皮で出来ていて、小さな鍵まで付いてる。きっと高いんだろうな。
とにかくこれが記念すべき最初の日記だし、最初だからとっても嬉しかった事を書こうと思う。
ボクは今日、源さんの弟子になれた。
初めて源さんに会った時から3年。
ずっと弟子にして欲しいと頼んだけど、ある時源さんに
「ケツの青い小娘にはまだ早ぇ。」
と言われた。
「ボクのおしりは青くなんかないぞ!見せてやろうか!」
ってボクが言ったら、源さんはお腹を抱えて笑いだした。
今から思えばとっても恥ずかしい話だけど、あの時は本気でそう思った。
「悪い悪い。代わりにいい師匠を紹介してやる。その人がオッケーしてくれたら、弟子入りも考えてやるぜ。」
と言って、源さんは笑いながらじーちゃんを紹介してくれた。
じーちゃんは漆原って言う人で、大学の先生をしていると言った。
ボクは中学校を出てすぐに働いていたから、大学なんて興味がないしよくわかんなかったけど、どうやらじーちゃんは凄い人らしい。
未だによくわかんないけど…。
ボクがじーちゃんに「師匠!」って言ったら、じーちゃんは師匠は恥ずかしいと言ったので「しそー」と呼ぶ事にした。
しそーはボクに、いろんな事を教えてくれた。
「難しい言葉はじぇんじぇんわかんない…。」
ボクがそう言うとしそーは難しい言葉を使わないで、優しく丁寧に教えてくれた。
ボクは少しづつだけど、難しい言葉がわかるようになった。
しそーはボクにロボット理論ていうのを教えてくれながら、大学で自分のロボットの組み立てなんかもやらせてくれた。
理論の本なんていくら読んでもちんぷんかんぷんで眠たくなるだけだったけど、実際にロボットをいじりながらだと、理論と言うのがよくわかるようになった。
ボクはロボットの基礎っていうのを、しそーから教わったんだ。
しそーは優しかった。
ボクのじーちゃんみたいに優しかった。
じーちゃんが二人になったみたいだと思った。
ボクがしそーからいろいろ教わっていると、商店街の会長と副会長がボクにお願いがあると言ってきた。
嫌な予感しかしなかった。
ボクが熱血屋で働くようになってから、会長も副会長も今まで何度もボクのところにお願いをしに来ている。
大体は車やバイクの修理依頼だった。
そう言えば電飾看板の修理依頼もあったっけ?
自動ドアの修理をさせられた事もあるぞ?
とにかくまたかと思った。
正直、うんざりしてたんだ。
そしたら会長達はテヤンデーと、とんとんを直して欲しいと言ってきた。
『やった!』
と思ったけど最初は嫌なフリをした。
直せるかどうかもわかんなかったからね。
とりあえず図面を見せてもらってボクは驚いた!
こんな図面見たことない!
図面を見てもなんの部品なのか、わからないものまである!
ボクは急いでしそーに連絡をした。
あの時のボクはすごく興奮していたと思う。
だって今すぐテヤンデーと、とんとんを、バラしたくてバラしたくてしかたがなかったから。
ボクがやってもいいかと聞いたら、しそーはすぐにオッケーしてくれた。
ボクはしそーに運搬の手配を頼むと、急いで図面を抱えて乙女座に戻った。
出前なんかしてる場合じゃないぞ!
そんなのいつだって出来るじゃないか!
ボクが乙女座に戻ると、乙女座には知らない女の人が来ていた。
リンちゃんのママの美智子さんだ。
美智子ママは急いでいるボクの服装を直しながら、落ち着きなさいと言ってくれた。
そしたらなぜだかわからないけど、気持ちが落ち着いてきた。
お土産のケーキをいただいていると、完全に気持ちは落ち着いていたんだから不思議だった。
美智子ママは魔女かもしれない。
それからボクとしそーは、しそーの研究倉庫に運び込まれたテヤンデーと、とんとんをバラした。
外装をバラしたテヤンデーを見て、ボクとしそーは唖然とした。
「なにこれ、しそー?」
ボクがそう言うとしそーが言った。
「わしもわからん。こんなものは見たことがない。」
しそーもそう言って裸んぼのテヤンデーを見上げてた。
普通のロボットだったらフレームだけにしても大きさはそんなに変わらないだけど、外装を外したテヤンデーのフレームは、元の半分もないくらい、げっそりと痩せちゃったんだ。
ピンとこないかもしれないけど、これってすごいことなんだよ。
お相撲さんの着ぐるみを着た普通の人が、お相撲さんと同じくらい強いって言えば、わかりやすいかな?
それくらいテヤンデーの外装は大きくて重かったんだ。
でも、なんでわざわざそんなことをするんだろう?
ボクはしそーに聞いてみた。
「軽すぎるからじゃろうな。」
「軽すぎるの?」
「フレームが小さいのにパワーがありすぎるんじゃ。普通のロボットを250ccのバイクに例えると、テヤンデーは50ccのバイクに750ccのエンジンを積んでいるようなもんじゃろ。」
「え!そんなことをしたら、フレームが持たないよ?」
「だから外装に重量を持たせて、バランスをとっておるんじゃろ。」
「そうか!わざと重くして、パワーを押さえてるんだ!」
「しかしそれを可能にするには、かなりパワーのあるエンジンじゃないと無理じゃ。バケモンみたいなエンジンじゃな~。
かなり緻密な重量計算も必要じゃろうしな~。」
「そうだね。重量計算を間違っちゃったら、機体のバランスがめちゃくちゃになっちゃうもんね。こんなすごいロボットを、10年も前に作るなんて大天才だね!」
ボクはそう言いながら、テヤンデーを作った人のすごさを痛感したんだ。
ボクとしそーは、テヤンデーのエンジンを外して調べてみた。
テヤンデーのエンジンはびっくりするほど小さくて、見たこともない型をしていたからまったく手が出なかったよ。
エンジン自体は長年のメンテナンス不良がたたってかなりへたっていたんだけど、バラすことも出来ないからどうしようもなかった。
仕方がないから出来る限り洗浄したんだけど、それだけでエンジンのパワーが一気に上がってびっくりしたなぁ。
モーターも同じように洗浄したら、動きが見違えるようによくなったのでもう1回びっくりしたんだ。
洗浄を終えて古い部品を新品に変えてから、フレームを組み直している途中にボクはあることに気がついた。
あれだけ大きい外装なら重量計算さえしっかりすれば、新しい武器がつけられないかなって思ったんだ。
ボクはテヤンデーの図面を引きながら、新しい武器を考えた。
一生懸命、いっぱいいっぱい考えた。
目からビームがびびびびび!
ビームなんて作れないよねー。
目からレーザーがびー!
なんの役に立つんだろう?
肘からカッターがびょーん!
危ないよねー。
脛からノコギリがどーん!
足が届かないよねー!
お腹からミサイル発射ー!
捕まっちゃうねー。
じゃあネットがいいかな?
ということで、両手にネットをつける事にしたんだ。
右手にはロボット用のネット。
左手には人命救助用のネット。
二種類のネットにしよう。
そうだ。武器も増やそう。
刺叉を作って十手も増やそう。
しそーに相談したらこう言われた。
「それでいいとは思うが、岡っ引きロボットに刺叉かい?」
言われてみればそうだよね。
ちょっとおかしいよね。
じゃあテヤンデーを岡っ引きから、時代劇の捕物に出てくるようなロボットにしようか?
ついでに腰も回しちゃおう。
そんな事を考えながらボクは図面を引いた。
図面はあっという間に出来上がった。
ボクは出来上がった図面をしそーに見せた。
しそーはよく出来てるねと褒めてくれた。
そうやってテヤンデーは新しく生まれ変わったんだ。
明日は後編です。




