第4章 第12話 「傾向と対策とのろけと」
12話です。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
ズルズルズルッ。
ズゾーッ。
ズルズルズルッ。
暗い部屋の中に、麺をすする音だけが聞こえている。
モニターの光を浴びながら、変形バカと源さんがカップ麺を食べているのだ。
いかにも変態らしい侘しい食事だが、それにしても暗い所が好きな連中だ。
「いつもそのメーカーのうどんかそばを食べてますね。」
変形バカはフォークでカップラーメンを掬いあげながら、源さんに尋ねた。
「俺が食えるカップ麺は種類が限られてるからな。」
源さんはそう言って四角いお揚げにかぶりつき、ハフハフと言いながら食べている。
源さんはこれか天ぷらそばしか食べない。
変形バカはカップ麺を食べるが、源さんはあまりカップ麺を食べない。
食べる物が何も無い時に仕方なく食べるくらいだ。
「カップ麺は美味しくないのですか?」
変形バカが不思議そうに源さんに尋ねた。
「いや、俺の中で匂いと味が一致しねぇんだ。食った気がしねぇのに腹が膨らむから、なーんかおかしな気分になる。うどんとそばは多少食った気になるんだが、カップラーメンはあんまりならねぇな。」
「相変わらず変わった人ですね。」
「カップラーメンにマヨネーズぶち込む奴に言われたかねぇな!」
源さんは大声で言った。
「これはこれで美味しいですよ。」
変形バカは平然と言い切った。
「そういや前に、シーフードのカップラーメンに沸騰させた牛乳を入れて食ってたよな?」
源さんは嫌そうな顔で言った。
「それがなにか?あれも結構美味しいですよ?」
「人の食い方にケチをつけるつもりはねぇが、今度からは前もって言ってくれ。俺は場所変えて食うからよ。」
「偏見ですよ。」
「偏見じゃねぇ!単なる好みの問題だ。」
源さんはご機嫌斜めのようだ。
「どうした二人共?いつもの喧嘩か?」
部屋に入ってきた大臣は、自分の椅子に座りながら言った。
「どうしたんだ今日は?えらくご機嫌じゃねぇか。」
源さんは大臣の顔をまじまじと見ながら言った。
「珍しいですね。」
変形バカも大臣の顔をまじまじと見る。
「ん?聞きたいか?教えてやろうか?」
大臣はニコニコと笑っている。
話たくてうずうずしているだろう。
口元がわずかに震えている。
源さん 「いや、いい。」
変形バカ 「結構です。」
大臣の口元を見た、源さんと変形バカは声を揃えた。
「なんだなんだ?君達はカップラーメンを食べているのか?侘しい食事だなぁ。たまには栄養のある物を食べなさい。私なんか昨日は…。」
「わかったわかった。話は後で聞くからよ、先に本題に入ろうや。」
源さんはあきれ顔でそう言うと、一気にスープを飲み干した。
「そうですね。」
変形バカもそう言って、スープを一気に飲み干す。
「そうだな。後で私の話を聞けよ?絶対だぞ?」
大臣はそう言ってニヤけているが、その目が怖い。
源さん 『二時間はかかるな…。』
変形バカ 『二時間コースですね…。』
源さんと変形バカは内心うんざりしていた。
昨日はよほど楽しい事があったのだろうが、家族でお出かけした翌日は必ずこの調子だ。
楽しかったのは結構な話なのだが、アフターケアする方の身にもなって欲しいものだ。
「で、道化師の分析は終わったのか?」
大臣が尋ねた。
「腕と足。どっちも見ましたが、本体はどうやら共通のようですね。」
「てことは、それぞれ腕と足をカスタムしてるだけって事なんだが、体の方がよくわからねぇんだ。多分、体の方は仮のような気がするんだが確証がねぇな。」
源さんは眉を顰めながら言った。
「仮?腕は伸縮式だったが、あの足はなんだと思う?」
大臣が変形バカに尋ねる。
「まず腕の能力を伸縮式だけだと思うのは、かなり危険でしょうね。」
「だな。」
源さんは変形バカに同意した。
「何か見つかったのか?」
「見つかったのではありません。可能性があるんです。」
「可能性?」
大臣は首を傾げた。
「うまくパーツで埋めて隠しているつもりだろうが、腕の中に用途の絞り込めない空間があった。それもかなり大きめのやつがな。」
「空間?なんの空間だ?」
「多分、マウントラッチでしょう。何をマウントするのかはわかりませんが、シールドという事はないでしょうね。」
「付けるとしたら、パイルバンカーかマシンガンユニットか…。チェーンソーもあるな…。どっちにしろ厄介な話だな。」
「左右の腕に分けて、二つ使う可能性もありますね。とりあえず、笑っていられる状況にはありません。」
変形バカの声は重い。
「うーん…。」
大臣は腕を組んだ。
「これはおれの勘だが、マシンガンユニットは候補から外していいと思う。マシンガンまで出しちまえば、いくらテロリストでも、まずい事になるだろうしな。」
「こっちも自衛隊が動く事になるでしょうしね。そうなると島が戦場になります。」
「今のところはマシンガンはないんじゃないか?今のところはだがな…。」
「先はどうなるかわからないか…。」
大臣も眉間に皺を寄せた。
「明日がどうなるかなんてのは誰にもわからねぇよ。それだけ世の中ってのは複雑になってきてるからな。それでも備えなきゃならないがな…。」
「そうですね。」
「じゃあ足の方はどうなんだ?」
大臣の問いかけに、変形バカが即座に答えた。
「あの足は二つに折り曲がっていますね。」
「足が折り曲がっている?」
「多分、飛行は諦めて跳びはねるために折り曲がっているのでしょう。大きなスプリングが内蔵されていると思いますよ。」
「ウサギみたいにピョンピョン跳びはねるのか?」
大臣は驚いた。
「バーニアの補助のようなものです。仮想データですが、打ち込んで演算してみたところ1回のジャンプで、10m以上は跳ぶ事がわかりました。私ならあのような美しくない事はしませんがね。」
変形バカは鼻で笑っている。
「ただよ。あの足はバリエーションの一つのような気がするんだよなぁ…。それを言いだしゃあの腕もそうなんだが…。」
源さんもそう言って腕を組み始めた。
「跳びはねながら相手に接近してパイルバンカーなり、チェーンソーなりで相手にダメージを与えてから、跳びはねながら逃げるか…。一撃離脱タイプのロボットのようだな。あとはマシンガンがあればかなり戦闘力は上がるな。」
源さん 「だろうな。乗り心地は最悪だろうがな。」
変形バカ 「でしょうね。」
源さんと変形バカはそう言って笑っている。
「脅威になるのはやはりマシンガンだが、大丈夫だよな?」
「フッフッフ。私の作った『ミルフィーユ装甲』をなめて貰っては困りますね。マシンガンなんて豆鉄砲みたいなものです。」
「偶然の産物にしちゃ大したもんだ。」
源さんは笑いながら言った。
「ですがミルフィーユ装甲の貢献度は高いですよ?」
変形バカはニヤリと笑う。
「確かにな。」
大臣もそう言って笑った。
「まぁ、どっちにしろこれから先の事を考えなきゃならねぇ。少なくとも相手の3手先は読んでおかねぇとな。」
「それじゃあ対策を練るか!」
大臣はそう言って笑顔になった。
『野郎…。さっさと話を終わらせるつもりだな?』
源さんは眉を顰める。
『地獄の二時間になりそうですね…。』
変形バカは諦めた。
対策会議が終わった後、きっちり二時間も大臣の話につき合わされた後、大臣は上機嫌で帰路につき、源さんと変形バカは机の上でぐったりとしていた。
「話が長ぇよ…。」
源さんは机に突っ伏したまま呟いた。
「地獄でしたね…。」
変形バカも机に突っ伏したまま呟いた。
「あんにゃろ~。よっぽど嬉しかったんだろうな…。」
「気持ちはわからなくもないんですがね…。」
「そうだな…。それにしても、さすがに腹が減ったな…。飯でも行くか…。」
「そうですね…。久しぶりに外の空気を吸いたい気分です。」
二人はそう言うと、ゆっくり椅子から立ち上がった。
大臣に何があって、源さんと変形バカが何を聞かされたかは知らないが、二人にとってはかなりつらい時間であったのは間違いないようだ。
「魔法を使えない俺が、大賢者と呼ばれるようになった理由」
もよろしくお願いします。




