第四章 第11話 「聖美と未祐」
11話です。
来週から、日曜日は休載となります。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
倫子と真由がアルバイトをしていた頃。
格納庫の源さんの元に来客がやってきた。
「お?どうした?珍しい組み合わせだな。」
源さんはそう言って驚いた。
聖美 「えへへへ。」
未祐 「えへへへ。」
そこにはへらへらと笑う聖美と未祐がいた。
なんと驚くべき事にあの未祐が笑っている。
あまりの珍事に源さんは口をぽかんと開けた。
「源さんに差し入れ持ってきたよ~。」
聖美は岡持を源さんに見せながら言った。
「そ、そりゃすまねぇな…。」
なぜか後ずさる源さん。
「これもあるのだ。」
未祐は一升瓶を片手に笑顔で言った。
「えぇ!なんだなんだ!何が狙いだ!」
源さんは岡持と一升瓶を、何度も交互に見ながら首を振った。
源さんは少々、取り乱しているようだ。
「まぁまぁまぁ。」
聖美が源さんをいなす。
「とりあえずお熱いうちに…なのだ。」
未祐も笑顔で言う。
「お、おぅ!」
源さんが椅子に座ると聖美が岡持を開けて、中から焼き肉定食と焼き鳥の盛り合わせ。
それに空のコップをテーブルに置くと、未祐はすかさず一升瓶の封を切り栓を抜いた。
「ちょっと待ってろ。」
源さんはそう言うと、椅子から立ち上がった。
聖美 「はいはーい。」
未祐 「はいはいなのだ~。」
源さんは部屋の棚を開けると、木箱を取り出した。
「二人で食べろ。他のメンバーには内緒だぞ?」
源さんはテーブルの上に木箱を置きながら言った。
「おぉ~!」
聖美は声をあげた。
「すごいのだ~!」
未祐も歓喜の声をあげる。
その木箱には、一箱一万円もする超高級カステラが入っていた。
普通のカステラの倍くらい大きい。
「お茶の用意をするから、しばらく待ってな。」
「食べてもいいの?」
聖美は目を輝かせながら言った。
「いいのか?」
未祐の瞳も眩しい。
「一人だけで飯を食うのは好きじゃねえ。」
源さんはやかんを火をかけながら言った
3人での食事が始まり、聖美と未祐が歓喜の声をあげた。
「なんだこれ!おいしいのだ。」
未祐は目を見開いて驚いている。
「生地が真っ黄っ黄だ!お茶に合うねぇ。」
聖美も嬉しそうだ。
「さっさと用件を話せ。さっきから気持ちが悪くてしかたがねぇや。」
源さんは焼き肉定食を頬張りながら言った。
聖美 「薫子さんに勝ちたい!」
未祐 「勝ちたいのだ!」
聖美と未祐が言った。
「なるほど。そういや昼間にマミタンとリンリンが来たぜ。」
源さんの言葉を聞き、聖美と未祐は互いに顔を見合わせた。
聖美 『ひょっとして…。』
未祐 『同じことを考えているのだ…。』
「二人は何しに来たのかな~?」
未祐は笑顔で源さんに尋ねた。
「こないだの薫子ちゃんとの戦闘データを加工して欲しいってよ。おまえらも欲しいのか?」
聖美 「お願いしまーす!」
未祐 「お願いしますのだ!」
聖美と未祐は声を合わせて言った。
「わかった。すぐに用意しよう。」
焼き肉定食を食べ終わった源さんは、焼き鳥をアテに酒を飲み始めると、PCを手元に引き寄せ、パチパチとやりだした。
「急にやる気になったな。コテンパンにやられたからか?」
二人は無言のまま深く項垂れた。
「ま、データを見直しゃ何かが掴めるだろうよ。」
「ねぇ源さん。ボクの新しい装備はないの?ボクも新しい装備が欲しい!」
聖美は駄々をこねた。
「あるぜ。さっき出来たばっかりだ。」
源さんはあっさり答えた。
「やった!どんなのかな?どんなのかな?」
聖美は興奮している。
「プリティは?プリティの分はないのか?」
未祐も興奮しているようだ。
「あるぜ。そっちは明日、出来上がる予定だ。」
「見たいのだ!」
未祐はさらに興奮した。
「ボクもボクも!」
聖美もヒートアップした。
「ほれ。」
源さんはPCを二人に見せた。
聖美 「おぉー!」
未祐 「おー!」
聖美と未祐は大喜びだ。
「明日から、シミュレーターで動かせるようにしておくから、乗ってみな?二人で練習するには丁度いいだろう?」
「ありがとう源さん!チュッ!」
聖美はそう言うと、源さんのほっぺにチューをした。
「ありがとう!ダメな大人!チュッ!」
未祐もそう言って源さんのほっぺにチューをした。
「なんだなんだ?」
あまりの出来事に源さんは焦った。
源さんからアドバイスをもらい、データを受け取った聖美と未祐は、源さんに御礼を言うと嬉しそうに乙女座に戻って行った。
「なんだか騒がしかったなぁ。あれ?おぉぉ!」
源さんはテーブルの上を見て、目が点になった。
「カステラを全部食われちまった…。一人一斤は食ったって事か。」
源さんは悲しそうに呟いた。
その夜。
真由と健斗は都内のホテルの一室にいた。
朝から雑誌のグラビア撮影を2件、それにTVの収録を1本終えた二人は遅い夕食を採った後、青葉島への帰島を諦め、いつものホテルへ宿泊したのだ。
真由も忙しかったが健斗も忙しかった。
健斗は用心棒兼マネージャーであり、真由の身の回りの世話はもちろんのこと、先方との打ち合わせだけでなく真由さんへと渡される差し入れという名の「下心の塊」を受け取る事までしている。
現にホテルにチェックインする前に、段ボール4つほどたまった「下心の塊」を送ったばかりだ。
それでもまだ乙女座のみんなで分けるようにと、真由の持って来たボストンバッグ2つに詰めたお菓子がある。
最初の頃の健斗はその差し入れの数に圧倒されたが、1年もこんな事を続けていれば膨大な量のお菓子を見ても『今日は少ないな。』くらいにしか思わなくなった。
慣れとは恐ろしいものである。
部屋にはベッドが二つ並んでおり、窓側のベッドに真由が横たわっている。
真由のファンからすれば『うらやましいやつめ!明日も月夜だと思うな!』と言いたい所だろう。
しかし健斗はベッドで寝ていない。
自分のベッドに腰掛けているだけだ。
「いつもごめんなさいね。」
真由が健斗に言った。
「気にしないでください。これも仕事ですから。」
健斗はそう言って真由に笑いかけた。
「夜通しはつらいでしょう?眠くなったら寝てね。」
「これも修行のうちです。それにこれくらいで寝ていたら、師匠に殺されますよ。」
健斗は笑いながら言った。
「それにしても立派になったわね。」
「真由さんと真美に初めて会ってから、かなり経ちましたからね。」
「ちゃんと食べている?おにぎりとカップラーメンばかりじゃ駄目よ?」
『なぜだ!なぜバレるー!』
健斗は内心焦ったがすました顔で言った。
「まぁ、それなりに…。」
「昔はよく、乙女座で一緒にご飯食べたわね。」
「あれは美味かったなぁ。あのクソ親父。自分の飯どころか、息子にもろくに飯を食わせてくれませんでしたからね。俺の体は桜子さんと真由さんの作ってくれたご飯で大きくしてもらったようなもんです。あの頃が俺の人生で一番豊かな食生活でした。」
健斗は嬉しそうに恥ずかしそうに言った。
「そう?今度、健斗くんの好きなコロッケを作ってあげようか?」
「え!」
真由の言葉を聞き、健斗は真由のコロッケを思い出した。
ゴロッとしたお芋とたくさんのミンチに肉汁を吸った玉ねぎが、からりと揚がったサクサクの衣に包まれた真由のコロッケ。
大人の手のひらくらい大きな熱々のやつに、ウスターソースをかけてかぶりつく。
お肉のとんとんが裸足で逃げ出すほど旨いコロッケ。
そう言えば大学に通い出して1年は食べていない。
「それは是非とも…。」
健斗は無意識につばを飲んだ。
「それじゃあ今度作るわね。」
真由はにっこり微笑んだ。
「ありがとうございます。」
健斗も満面に笑みを浮かべた。
「お父さんの事…。まだ許せない?」
「それはまぁ…。昔ほどではないですけど…。まだ納得出来ないと言うかなんと言うか…。」
急に話が変わり、健斗は戸惑いを見せた。
「健斗くんはいいわね…。」
真由はポツリと言った。
「え?」
「お父さんと喧嘩が出来るなんて、うらやましいわ…。」
「真由さん…。」
「ごめんなさい。私、嫌な事言っちゃったわね。」
真由は少し悲しそうに言った。
「俺の方こそすいません…。」
先に父親の話をしたのは健斗だ。
それに対するお詫びという事だろう。
「お父さんの事思い出しちゃった…。健斗くん。いつものいいかな?」
真由はそう言うと、スッと右手を健斗に伸ばした。
「はい。いいですよ。」
健斗もそう言って右手を差し出した。
「ごめんなさいね。私が寝るまででいいからね。」
「朝までだって平気ですよ。」
健斗はそう言って真由の手を優しく握った。
「ありがとう。」
真由はそう言うと、静かにゆっくりと瞼を閉じた。
12/12より週1のペースで新作を書き始めます。
それに伴い、マジカルリンリンは日曜日は休載となります。
転生話にインスパイアされた作品で、舞台は外国てす。
完全な転生話ではありません。
Hな話も出てきますが、詳しい描写は書きません。
毎週、日曜日更新の予定です。
ご一読して頂ければ幸いです。




