第四章 第8話 「お地蔵さん達の決起集会」
8話です。
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「あー!久しぶりにいい運動が出来たわ。」
リビングに入るなり薫子は満足そうに言った。
「あら?みんなどうしたの?」
薫子はソファーに座る、倫子と真美と未祐と聖美に声をかけた。
4人はどんよりとした顔で俯きながら、お地蔵さんのように固まっている。
残念ながら聖美と未祐の秘策とやらは、薫子には通用しなかったようだ。
「みんな終わったの?」
桜子がまさみちゃんを連れて、キッチンからリビングへとやって来た。
「ママ~!」
まさみちゃんが薫子に駆け寄る。
「あらあら。全員汗を搔いているじゃない。みんなでお風呂に入ってきたら?薫子さんもよかったらどうですか?」
確かにお地蔵さん達は、見るからに汗を搔いている。
特に聖美は汗でびっしょりだ。
「私は汗を搔いてないから大丈夫よ。」
薫子はまさみちゃんを抱き上げながら、さらりと言った。
倫子 「え?」
真美 「え!」
未祐 「え!」
聖美 「え?」
4人は同時に声をあげ、一斉に薫子の顔を見た。
なんだかんだで1時間半以上もほぼ休みなしで4人も相手にしていたのに、汗を搔かないなんて事があるのだろうか?
しかし薫子をよく見てみれば、汗を搔くどころか顔のお化粧すら崩れていない。
真美 『嘘でしょ?』
未祐 『すごいのだ…。』
聖美 『なにそれ?』
倫子 『化け物や…。新種の妖怪や…。』
倫子よ。
薫子を化け物だの妖怪などと呼ぶのは、さすがにどうかと思うぞ。
桜子 「みんながお風呂に入っいる間に、ケーキとお茶の用意をしておくわね。」
「そうさせてもらいます…。」
真美がそう言うと4人は一斉に立ち上がった。
「みんな。さっきのアドバイスを忘れないでね。これからはもっと顔を出すようにようにするからね。」
薫子は笑顔だ。
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
4人はそう返事をすると、リビングを出てお風呂に向かった。
「みんなはどうでしたか?」
ソファーに腰掛けながら桜子が薫子に尋ねた。
「みんな上達しているわね。特に真美ちゃんの成長率は高いわね。まだまだ伸びていくと思うわ。」
薫子はまさみちゃんを膝の上に乗せながら答えた。
「ただね…。」
薫子はそこで言葉を切った。
「なんですか?」
桜子は心配そうに言った。
「性能に頼り過ぎているのは否めないわね…。」
薫子は真剣な表情で言った。
「リンちゃんの方は?」
「真由の言っていた通りよ。もう少しで胴を斬られる所だったわ。久しぶりに焦った~。」
「それはすごいですね。」
桜子は嬉しそうに笑った。
「体力と集中力が足りなくて後半はバテバテだったけれど、あの子もまだまだ伸びるわね。」
「それは楽しみですね。」
「そうね。」
♪あ~な~た~に首ったけ~ どーうにもこーうにもフォーリーンラ~ブ
「パパだ!」
薫子のタブレットからセンスの欠片も感じない、おかしな音楽が流れ出した途端、まさみちゃんが嬉しそうに叫んだ。
センスの欠片も感じないと言うのは歌っているマインズに対して失礼だろうから、奇抜なセンスの歌と言い直そう。
まさみちゃんは薫子からタブレットを受け取ると、慣れた手つきで電話に出た。
「もしもしパパー?うん…うん…。」
まさみちゃんは嬉しそうに話をしだした。
「ママ!パパがお仕事終わったって!」
溢れんばかりの笑顔で、まさみちゃんが薫子に言った。
「もしもしダーリン?お仕事のほうはもういいの?」
まさみちゃんから電話を受け取った薫子も、嬉しそうに話だす。
「えぇ、わかったわ。すぐにそっちに向かうわね。それじゃあね。」
薫子はニコニコ笑顔で電話を終えた。
「さすがの鬼百合も、旦那様の前だと形無しですね。」
桜子もニコニコ笑顔だ。
「やぁね桜子。あんまりからかわないでよ。」
薫子は耳まで赤くなった。
「幸せそうで羨ましいです。」
「そうね…。昔の私には想像も出来ないくらい今の私は幸せよ…。あの時の私に教えてあげたいくらいだわ。今のあなたは、こんなに幸せな気分で毎日暮らしているのよって。」
薫子はしみじみとしている。
「ママ~。早く行こうよ~。」
まさみちゃんは体を揺らしながら言った。
「はいはい。早くパパを迎えに行こうか?それじゃあ桜子。ドローンを借りていくわね。」
「どうぞどうぞ。」
「また近いうちに来るわ。」
「また明日ね~。桜子ママ。」
まさみちゃんは桜子に手を振った。
「またお願いします。楽しんできてね、まさみちゃん。」
桜子も手を振り返した。
その頃。
浴場では頭にタオルを巻いたお地蔵さんが、4人並んで湯船に浸かっていた。
「薫子さんてすごいんだねぇ…。」
倫子はしみじみと言った。
「でしょう?自信をなくしちゃうわ…。」
真美は倫子に同意した。
「すごい体力なのだ…。」
未祐も驚いているようだ。
「秘策も全然通じなかったよ…。」
聖美は悔しそうだが、どんな秘策か気になるところだ。
倫子 「あのさ。すごい事言ってもいい?」
真美 「すごい事ってなに?」
倫子 「薫子さんてさ…。マジカルなんじゃない?」
聖美 「あはははは!いいねそれ!」
未祐 「なんで?なんでそうなるのだ?」
倫子 「マジカルってさ、順番で言うとレッドさんがIMMU-0001Rでしょ?」
真美 「ブルーは0002Bね。」
倫子 「イエローさんが003Yでしょう?」
聖美 「グリーンが0005Gで。」
未祐 「プリティが0006PPLなのだ。」
倫子 「ピンクちゃんが0007Pでしょ?じゃあ0004は?」
真美 「そうか…。なるほどね…。」
未祐 「0004がいない…。」
聖美 「そうだね!」
倫子 「0004は薫子さんかも知れないよね?」
真美 「ないとは言い切れないわね…。」
未祐 「意外とあるかもなのだ…。」
聖美 「ほんとだね!」
倫子 「何色なんだろう?」
真美 「そこが気なる?」
未祐 「色は大事なのだ!」
聖美 「金とかだったりして。」
真美 「ずいぶんと派手ね。」
未祐 「黒もありなのだ。」
倫子 「黒か~。シックでいいかも。」
聖美 「花柄!花柄は?」
真美 「花柄?」
未祐 「イチゴ模様はどうなのだ?」
真美 「ヒョウ柄?」
倫子 「レースのフリフリは?」
真美 「あははははは!」
未祐 「あははははは!」
聖美 「あははははは!」
倫子 「あははははは!」 『ぱんつみたいやな…。』
真美 「冗談はともかくとして。せめて薫子さんといい勝負が出来るようにならないとね。一方的は御免だわ。」
未祐 「いつまでも負けたくないのだ。」
聖美 「そうだね~。次こそは勝たなきゃね~。」
倫子 『あれ?今のは全部冗談やったん?』
倫子は頭の中で首を傾げた。
どうやら倫子1人だけが本気だったらしい…。
真美 「でも0004は本当にあるのかな?」
未祐 「番号的に見て欠番の可能性もあるのだ。」
聖美 「源さんの事だから、わざと飛ばしている可能性もあるよねぇ~。」
真美 「あり得るわね…。」
未祐 「ダメな大人なのだ。」
聖美 「ロボットは詳しいんだけどね~。人としてはね~。」
倫子 『無茶苦茶な言われようやなぁ…。』
弟子志望の聖美にまでここまで言われるのであるのだから、源さんの人間性というものが窺われる。
真美 「とりあえずは、薫子さんのアドバイス通りを聞いて頑張りましょ。」
未祐 「頑張るのだ。」
聖美 「がんばろー!」
倫子 「おー!」
こうしてお地蔵さん達の決起集会は終わった。
お風呂から上がり糖分を摂取し終えたお地蔵さん達が、それぞれの部屋に戻ろうとした時である。
「リン。ちょっといい?」
真美が倫子に声をかけた。
「なに?どうしたの?」
倫子が真美に尋ねた。
「ちょっと部屋まで来てくれる?」
「わかった。」
倫子は真美に連れられて、真由と真美の部屋に入った。
二人の部屋は倫子の部屋の倍はあり、シンプルだが機能性の高い部屋だというのが一目でよくわかった。
部屋の中には机にベッド、本棚が二つづつあり、部屋の中央には小さなかわいいテーブルが置いてある。
あとは大きめの鏡台が置いてあるだけなのだが、どれも品のあるかわいらしい物ばかりだ。
壁には大きなクローゼットがあり、部屋の中には衣服は見当たらない。
倫子は少し残念だなと思った。
真由と真美の普段着は非常に興味深い。
『あ、このピンクのカーテンかわいらしいなぁ。』
初めて入った二人の部屋を見て、倫子は失礼だろうなぁと思いながらも、部屋をキョロキョロと見回した。
『ん?何あれ?』
倫子はベッドの枕元に置いてある、おさるのぬいぐるみを見て不思議に思った。
おさるのぬいぐるみは年季が入っている割には手入れがされているようで、全然痛みはなさそうだがどう見ても部屋には不釣り合いだった。
「座って。」
真美が倫子をテーブルに促した。
「うん。」
倫子はテーブルの前に座った。
かなり毛が長くふかふかの薄いクリーム色の絨毯だ。
この絨毯もいいなと倫子は思った。
「ねぇリン。」
真美は倫子の前に座りながら倫子に声をかけた。
妙に真剣な顔だ。
「どうしたの?」
倫子は心配そうに声をかけた。
「あたしとコンビを組まない?」
「へ?」
突然の真美からの提案に倫子はポカンと口を開けた。
寒いです。




