第四章 4話 「桜子さんの緊急招集」
4話です。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
「あ!聖美ちゃん。桜子さんが今すぐ乙女座に来てって。」
聖美が熱血屋に戻ると突然、マイちゃんが声をかけてきた。
「ありがとうマイちゃん。すぐ行くよ~。」
聖美は空の岡持を置くと、すぐさま乙女座へと向かった。
『どうしたんだろう?何かあったのかな~?』
聖美は乙女座へと向かいながら不思議に思っていた。
一方大学にいた真美と倫子の元にも、桜子から連絡が届いていた。
「桜子さんが今から乙女座に帰ってきて欲しいって。」
真美はタブレットを見ながら倫子に言った。
「え?桜子さんが?なにかあったのかな?」
倫子は心配そうだ。
「わかんないけど珍しいわね。」
「急いで乙女座に帰ろうよ。」
倫子は焦りだした。
「そうね。帰りましょ。」
真美と倫子は走り出した。
『なんやろ?怖いなぁ…。』
倫子の胸に不安が募っていった。
真美と倫子が乙女座のリビングに入ると、リビングには桜子とまさみちゃん。
それに見知らぬ一人の女性が楽しそうに話をしていた。
「お帰りなさい。真美ちゃん、倫子ちゃん。」
桜子は真美と倫子を笑顔で出迎えた。
「おかえりなさーい。」
まさみちゃんも元気よく言った。
今日はずいぶんとご機嫌が良いようだ。
「お帰りなさい。」
そう言って微笑む倫子が見知らぬ女性は、長い黒髪の白いワンピースがよく似合う、さわやかな桜子とは真逆の、華麗な大人の雰囲気をもつ女性だ。
長い髪を左眼を隠すように垂らしているのが印象的である。
「薫子さん!」
真美は驚きの声をあげた。
「久しぶりねマミちゃん。元気だった?」
薫子はそう言ってにっこりと笑った。
「はい!お久しぶりです。」
真美はそういって薫子に頭を下げた。
「まさみのママなのよ~。」
まさみちゃんは笑顔で倫子に言った。
「そうなんだ~。あれ?まさみちゃん、いいの持ってるねぇ。」
倫子はまさみちゃんが手に持つ物を見ると、笑顔でまさみちゃんに言った。
「プリティちゃんのマジカルステッキー!パパに作ってもらったの~。」
まさみちゃんはそう言うと、マジカルステッキの青いボタンを押した。
「マジカルアターック!」
ステッキから声が聞こえると、ステッキの先端にあるクリスタルが色を変えながらきらきらと光った。
「すごいね~。よかったね~。」
倫子は満面に笑みを浮かべながら言った。
「うん。まさみのパパはすごいでしょ~。」
まさみちゃんは自慢げだ。
素人目に見ても、かなり忠実に作られているのがわかるほどの見事な一品である。欲しがる人は結構いるだろう。
「まさみがマジカルプリティのファンなのよ。パパが作ってくれたのよね?」
「ね~。」
薫子とまさみちゃんはそう言って笑いあう。
「まさみちゃんのパパって、ロボット関連のお仕事をなさってるんですか?」
倫子が薫子に聞いた。
「仕事…。仕事ねぇ…。あの人の本業ってなんなのかしら?」
薫子は真剣な顔で悩み始めた。
旦那の仕事がわからないとは、どういうことなのだろう?
「薫子さんの旦那様はいろんなお仕事を手広くやっておられるの。本業はなんなのかしらね。」
桜子はそういって笑った。
「すごく器用な方なんですねぇ。」
倫子はいたく感心した。
「手先だけは器用なんだけどね。」
薫子はそういって笑った。
「あなたが倫子ちゃんね。」
「はい。初めまして。神楽坂 倫子です。」
倫子はそういって頭を深く下げた。
「初めまして。小笠原 薫子です。」
薫子もそういって頭を下げた。
「早速だけど、シミュレーターに行きましょうか。」
「え!」
薫子の意外な言葉に倫子は驚いた。
「薫子さんが前に言った凄い人よ。」
隣にいる真美が、倫子にそっと耳打ちをした。
「え?」
倫子は真美の顔を見ながら驚いた。
『え?こんなに素敵な方がロボットに乗るの?しかも凄い人なん?』
倫子は頭が混乱してきた。
倫子はてっきり男の人だと思っていたのだ。
それは決して女性蔑視からではなく、単純にイメージの問題である。
そもそも女性である倫子が女性蔑視をするはずがない。
『薫子さんはめちゃくちゃ格好ええなぁ…。また自信がなくなっていくわぁ…。』
倫子はとんちんかんな落ち込み方をしたが、若さ故の落ち込みなのだから、仕方がないことではあるのだろう。
「ねぇまさみ。ママはお姉ちゃん達とお話があるから、桜子ママと一緒に居てね。」
薫子がそういうと
「え~。」
まさみちゃんは口を尖らせながらむくれた。
「今日の夜はパパと三人でお出かけするでしょ?いい子にしていると、良い事があると思うんだけどな~。」
薫子は悪戯っぽく言った。
「う~ん…。」
まさみちゃんは口を膨らませながら腕を組んだ。
まさみちゃんなりの、精一杯の抗議なのであろう。
真美はまさみちゃんの前に行くと腰を落とし、まさみちゃんと同じ目線の高さになり、まさみちゃんの目を見ながら言った。
「ごめんねまさみちゃん。ちょーっとだけお姉ちゃん達にママを貸してくれないかな?」
「う~ん。しょうがないなぁ。」
まさみちゃんは渋々返事をした。
「それじゃあまさみちゃん。私と一緒にケーキを作りましょうか?」
桜子の声を聞き、まさみちゃんは慌てて桜子の顔を見た。
「ケーキ!」
まさみちゃんの顔が、満開の花のようにパッと明るくなった。
「どんなケーキが良いかなぁ?」
「いちごがいっぱい乗ってるやつ~。」
桜子の問いかけにまさみちゃんは嬉しそうに答えた。
「それじゃあ一緒にいちごのケーキを作りに行きましょう。」
桜子はそういうと、まさみちゃんに手を差し出した。
「うん!」
まさみちゃんは嬉しそうにそういうと、桜子の手を取り台所へと向かった。
「うるさくしてごめんなさいね。まさみったら久しぶりにパパとお出かけするのが楽しみで、かなりはしゃいじゃってるのよ。」
笑顔でまさみちゃんを見送りながら薫子が言った。
「だからあんなに嬉しそうなんですね。」
真美もまさみちゃんを見送りながら言った。
「急に呼び出しちゃってごめんね。マミちゃん倫子ちゃん。」
「いえいえ。薫子さんの呼び出しならいつでも。それよりもお店のほうは大丈夫なんですか?」
「今日は害虫駆除で清掃会社さんが来てくれたのよ。昨日はGが一匹出てきちゃって仕事にならなかったわ。朝一で根こそぎ駆除したから今夜は臨時休業。とてもじゃないけど、今夜はお店を開ける気にはならないのよ。」
薫子はおぞましげな顔で言った。
よほど嫌な思い出でもあるのだろうか、かなりゴキブリが嫌いらしい。
「って言うのは言い訳でね。久しぶりに家族でお出かけしたかっただけなのよ。まさみも幼稚園をお休みしちゃった。」
薫子はそう言って満面に笑みを浮かべた。
「そうなんですか?」
真美は驚いた。
「そうなんだけどね。二人ともちょっと聞いてよ。ダーリンが今日は忙しいから夕方からしか空いてないって言うのよ。どう思う?女房と子供を置いて仕事だなんて、酷い話だと思わない?」
薫子は不機嫌そうだ。
「それはひどいですよ!」
真美は拳を強く握りしめ薫子に賛同した。
「でしょでしょ!倫子ちゃんはどう思う?」
「私は…。」
倫子は考えた。
「そうですね!せっかくのチャンスなんだから、生かさないともったいないです!」
倫子は力強く言った。
「でしょ?私もお店が夜から朝までだから、まさみを桜子に任せっきりにしていて、あんまり強く言えないんだけどねぇ…。たまには仕事を休んでくれてもいいわよねぇ…。」
薫子は寂しそうな顔で言った。
「でも、夕方からでもお出かけ出来るならいいじゃないですか。私は家族でお出かけをした記憶があまりないですから、正直うらやましいです。」
「え?そうなの?」
真美は驚きながら言った。
「本当?」
薫子も驚いているようだ。
「うちは和菓子屋で年中無休みたいな感じだったんです。元旦からお店を開けますからねぇ、年末は大晦日まで毎日戦争です。」
倫子はそう言って笑った。
「寂しくなかったの?」
薫子が興味と心配の入り混じった声で言った。
「爺と婆がいてくれましたから。」
「お爺さんとお婆さん?」
真美が倫子に尋ねた。
「ううん。爺はお父さんの師匠で、婆は爺の奥さんなの。私のお爺さんとお婆さんは、私が生まれる前に亡くなったの。」
「そうなんだ…。」
真美の声は悲しそうだ。
「お出かけ出来なくてつらくなかった?」
薫子は心配そうだ。
「つらくも寂しくもなかったですねぇ。子供心にうちはこんなもんだと思ってました。それに月に1度は爺と婆が、映画とか遊びに連れて行ってくれましたから、妹と二人で楽しみにしていましたよ。」
倫子は笑顔で言った。
「まさみもそう思ってくれたらいいんだけど…。」
「大丈夫だと思いますよ。まさみちゃんは口数が少ない方ですけど、明るいですから。」
倫子がそう言うと、薫子が食い気味に尋ねた。
「そうかな?大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。」
「そうだといいんだけどね。」
薫子は笑った。
「さぁ。それじゃあ倫子ちゃんから先にやりましょうか。倫子ちゃんがリビング帰ってきたら、今度はマミちゃんが来てね。それじゃあ行きましょう倫子ちゃん。」
「はい!」
薫子に促され、倫子は笑顔で答えた。
まさみちゃんのママの登場です。




