第三章 第24話 「間に合った!」
24話です。
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「ふん!」
ハリーの掛け声と共に迫り来る大型トラックのパワーとスピードをものともせずに、真正面から受け止めたマッスルワンダホーが足を踏ん張らせると、トラックのタイヤが激しく白煙を上げながら回転し続けたが、車体の両側からマッスルワンダホーに押さえ込まれたまま、トラックは少しも前に進めない。
「HAHAHAHAHA!マッスルワンダホーのパワーを思い知りなさい。」
コクピットの中で余裕の笑みを浮かべながら、ハリー日下は高らかにそう宣言した。
相手は大型トラックだがロボット運搬用のトラックである。
車体は2車線分もあればパワーもあるのだが、そんな大型トラックを正面で受け止めながら、びくともしないマッスルワンダホーのパワーは大したものである。
とても第4世代のロボットとは思えない、ナイトアーサー並のパワーだ。
「相変わらず凄ぇパワーだなおい!」
もう1台の大型トラックを押さえながら、テヤンデーのコクピットで貫徹は言った。
テヤンデーの方も先程から頑張ってはいるが、互いに押しつ押されつの繰り返しなので、食い止めるので精一杯といった所だ。
「HAHAHAHAHA!これくらいは余裕ですよ。さて、会長もお困りのようですから、そろそろ終わりにしましょうか。さぁ!マッスルワンダホーのパワーをくらいなさい!」
ハリーがそう言うと同時にマッスルワンダホーは自分より大きい大型トラックをゆっくりと持ち上げ、そのままジャーマンスープレックスをかました。
ガン!
激しい音と共に大型トラックはひっくり返され、そのまま道路に叩きつけられた。
大型トラックの天井は大きくひしゃげ、ひっくり返った大型トラックのタイヤが目的を失いつつも回転を続ける。
車の天井はかなり厚みがあるので、中の運転手が潰される事はないだろうが、かなり手荒い気がする。
しかし他に止めようがないのだから仕方が無い。
捕まる前にエンジンを切ってくれればこんな事をしなくても済むのだが、そんな人はいないだろう。
「おいおい!中の連中は大丈夫かよ!」
貫徹は心配そうだ。
「HAHAHAHAHA!ですが車はひっくり返さないと止まりませんからねぇ。中の連中はシートベルトをしていれば大丈夫でしょう。してない場合はわかりませんが。」
マッスルワンダホーは道路に手をつきながら立ち上がると、テヤンデーの方へと歩き出した。
「さて会長。私が後ろに回りますので、二人で車を回しましょうか。」
「頼むぜハリー。」
マッスルワンダホーは大型トラックの後ろに回り込むと、大型トラックを両側から持ち上げた。
テヤンデーも同じように持ち上げる。
「ほい。」
「ほい。」
「ほい。」
「ほい。」
テヤンデーとマッスルワンダホーは、息を合わせながら慣れた手つきで大型トラックを回転させてひっくり返すと、大型トラックをゆっくりと道路の上に置いた。
「トラックの中には誰もいませんでした!」
貫徹の耳に、マッスルワンダホーがひっくり返していた大型トラックを調べていた警察からの無線が入った。
「何だって!」
貫徹は思わず叫んだ。
「どうやらリモート運転されていたようです。とりあえず今は動きを止めています。」
「なんだいそりゃ?」
貫徹は不思議に思った。
リモート運転の技術は昔からあるが、今までにそんな事件は一度もない。
「おかしな話ですねぇ。それではただトラックを暴走させただけではないですか。」
ハリーも納得出来ないようだ。
「とりあえずトラックを元に戻すか。」
「そうですね。」
ハリーがそう言ってマッスルワンダホーを動かそうとしたその時。
バキッ!
貫徹の耳に何かが折れたような音が聞こえてきた。
「またやったのか…。」
貫徹はそう言って頭を抱えた。
「HAHAHAHAHA!また操縦桿が折れてしまいましたねぇ。緊急停止しますねぇ。」
ハリーはコクピットの緊急停止ボタンを押しながら、おっとりとした口調で言った。
「またですかー!ちゃんと加減をしてくださーい!」
突然メンテナンス担当の蔵太太の叫び声が聞こえてきた。
ハリーは力余って操縦桿を折ってしまう事が度々(たびたび)ある。
どうやらハリーは力加減というものを知らないらしいが、金属製の操縦桿を折ってしまうというのだから、人並み外れた怪力の持ち主である。
とはいえ、操縦桿を折ってしまうのはいかがなものか?
直すほうの身にもなってほしいものだ。
「しょうがねぇ…。健斗を呼ぶしかねぇな…。」
貫徹はあきれ顔でそう言うので精一杯であった。
どうやら健斗が貧乏くじを引かされたようだ。
「どうしようマミタン!」
道化師達の追従を必死で振りほどきながら、リンリンが叫んだ。
道化師達はなかなかのコンビネーションで、リンリンを追いかけてくる。
リンリンは機体を止める事無く攻撃をかわしつつ、左右上下に動き回りながら逃げる。
マジカルボールでの成果が出ているのだろうか?
なかなか見事な逃げっぷりだ。
「攻撃する隙がないわ!」
マミタンも叫ぶ。
ブルーナイトもリンリン同様、執拗なまでに追従されている。
こちらもかなりのコンビネーションで襲ってくるものだから、マミタンもなかなか攻撃に移れない。
「この人達、ピンクちゃんを捕まえようとしてる!」
「でしょうね!」
そもそも道化師達の動きは、攻撃と呼べるものではなかった。
明らかにマジカルを捕縛をしようとしている動きだ。
その証拠に腕の大きいタイプの道化師は、手のひらを大きく広げて迫ってくるし、足の大きなタイプは隙あらば背後を取ろうと、跳びはねながら押し迫ってくる。
『なんなのこいつら?マジカルが目的?かなり訓練されてるわね。もしかして軍人?』
「リン!そっちは大丈夫?」
「スピードではこっちが上だからなんとかなりそう。だけど攻撃するタイミングが…。」
「絶対に捕まらないで!捕まったら連れて行かれちゃうわよ!」
「え?人さらいなの?」
リンリンは驚いているようだ。
「リン!攻撃は考えなくていい!隙を見てあたしが1機づつ倒していくから、鬼ごっこだと思って逃げて!」
マミタンは叫んだ。
「鬼ごっこ?わかった!この人達はプリティちゃんよりヘタだし逃げ切れる!」
リンリンがそう答えるやいなや、迫り来る2機の道化師の繰り出す波状攻撃の隙を見つけたマミタンは
「コンニャロー!」
そう叫びつつ、目の前に迫る腕の大きい道化師を袈裟がけに斬りかかった。
道化師は上体を反らし、かろうじてブルーナイトの攻撃を避けた。
「甘いっちゅーの!」
ブルーナイトは道化師に向かって突進しながら、手首を180度回転させ、道化師の肩口めがけてサーベルを跳ね上げた。
ブルーナイトのサーベルは道化師の肩を斬り落とすことは出来なかったが、付け根の半分ほどを切り裂いた。
腕の動力用のケーブルが切断されたのだろうか、突撃道化師の右腕がダランと下がり、慌ててバックでブルーナイトから離れようとしたその時!
「あっちいけー!」
マミタンはそう叫ぶとブルーナイトにダッシュをかけ、道化師の胸板にキックを入れると、そのままバーニアを最大出力で噴かし前へと飛んでいく。
ズシャァァァァァァァァァー!
道化師の足が地面を大きく削りながら、もの凄いスピードで後ろへ運ばされていく。
メキッ メキッ メキッ
『この硬さなら中のパイロットは無事でしょうね。』
道化師の胸から発せられる音を聞きながら、マミタンは思った。
人殺しになるのは御免被りたい。
足の大きな道化師は慌ててブルーナイトの後を追ってきたが、いかんせんスピードが違い過ぎるので、かなりの距離があいた。
ブルーナイトは右前方にリンリンの姿を捉えると、キックをやめて地面に降り、着地と同士にダッシュをするとサーベルを構えた。
胸板を蹴られた道化師は体勢を崩し、ゴロゴロと転がっていく。
「その腕邪魔ー!」
マミタンはそう叫ぶと、リンリンに襲いかかろうとする腕の大きな道化師の背中から斬りかかり、その左腕を根元から切り落とした。
腕を落とされた道化師は、振り返りざまに右手を振り回しながら鋭く尖った指先をすぼめ、ブルーナイトへ抜き手を放つ。
ブルーナイトは咄嗟に左腕のシールドで抜き手を薙ぎ払うと、右腕の付け根めがけて鋭い突きを放ったが、右側から伸びてきたもう1機の道化師の右手の手のひらが、その突きを受け止めた。
『反応がはやい!』
マミタンは焦った。
道化師の機体スピードにしては、あまりにも反応が早かったのだ。
『やっぱり軍人?』
「リン!こっちよ!」
マミタンはブルーナイトを上昇させながら叫ぶ。
「うん!」
リンリンはそう言うと、ブルーナイトと合流すべく大和撫子を上昇させた。
『まずいわね…。バーニアの推進剤が半分しか残ってないわ…。』
バイザーに映る推進剤の残量を確認しながら、マミタンは思った。
先程のキックで推進剤を使い過ぎたのだ。
帰りの事を考えると、これ以上は残量を考えてバーニアを使わなければならないが、しかしそれは戦術の幅が狭くなるという事を意味する。
「すごいねマミタン!」
リンリンは感動している。
「手傷は負わせたけど、不利な状況に変わりないわ。」
マミタンの緊迫した声を聞き、リンリンのスイッチが入った。
「そうだね!今度は私の番だね!」
リンリンはそう言うと、近づいてくる道化師達を見据えながら刀を構えた。
「間に合った!」
ハチマキが車を走らせながら叫ぶ。
「しかしどうする?周りは何も無い原っぱだぞ?」
コブは辺りを見回しながら言った。
「出来るだけ姫様達から距離をとるんだ。姫様達の邪魔になっては申し訳ない。ノッポ、ゴーグルを用意してくれ。」
ハチマキがそう言うと、ノッポは無表情で手に持った人数分のゴーグルを見せた。
「さすがはノッポだ。」
ハチマキはそう言ってニヤリと笑った。
「それじゃあ、姫様達から見えないのでは?」
マルがそう言った途端、コブが吠えた。
「馬鹿者!姫様達を出来るだけお傍で応援することが俺達の本分だが、決して姫様達のお邪魔になってはならん!たとえ姫様達に見て貰えなくとも、我らの想いには関係ないのだ!」
「すいませんでしたー!」
マルは泣きながら謝った。
「もういいコブ、マル。それより場所を決めよう。」
ハチマキがそう言った時、チビが空を指差しながら言った。
「なぁみんな。あれはなんだ?」
め組は全員で空を見上げた。
『腕のやつにはダメージを与えたけど、足のやつはどっちも無傷よね…。それにしても、あの足がどうにも怪しいわ…。』
マミタンがサーベルを構えながら足の大きな道化師を見ながらそう考えていると
「おっ待たせ~!」
上空からプリティの弾んだ声が聞こえてきた。
次回の主役はプリティちゃんです。




