第三章 23話 「道化師の再来」
23話です。
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「あれね!」
眼下に見える2機の道化師を見ながらマミタンが言った。
2機のピエロは原っぱの真ん中で、背中合わせで佇んでいるようにも見える。
何もないこんな場所に出てくるのはなぜだろう?
近くに民家もなく、被害が出にくいのはありがたいのだが。
『またここに来たのね。目的はなんなの?』
マミタンはそう思いながら、道化師達を凝視しつつ言った。
「リン。私は南のやつの前に立つから、リンは北のやつの前に立って。」
「わかった。」
リンの声がマミタンのイヤホンに響いた。
マジカルブルーとマジカルピンクは、それぞれの道化師の前に降り立った。
オオオオオー!
モニターの前に大歓声が沸いた。
「なんだあれは?」
モニターの前の観客達が騒ぎ始めた。
「ブルーのあんな格好は初めて見たぞ?」
「なんと凛々しい姿だ。」
「これはいい!早速モデライズしなくては!」
どうやらモデラーらしき若者は、興奮しながらモニターにタブレットを向けながら言った。
「リンリンの方もいいなぁ。」
「まさに大和撫子!」
「まさに日本女子!」
「リン。気を抜いちゃだめよ。」
凜とした姿で立つマジカルブルーは、頭に真っ赤な薔薇の付いた鍔の広い青い帽子を被り、ボディには青地に金のラインの入った、フランス革命の時のフランス軍の軍服のような外装を纏っている。
まさに歌劇にでも出てくる、男装の麗人のようだ。
左腕にマウントされた円形シールドにも女性の横顔の装飾が施されており格調高く見える。
「うん!」
対してリンリンの方は頭に額当てを付け、黒く染められた電子毛を靡かせながら、まるでピンクの袴を履いた巫女さんのような格好をしている。
腰に刀を佩いた姿は凛々しさすら感じる。
これがマジカルの新たな外装「マジカルブルーナイト」と、「マジカルリンリン大和撫子」である。
「さすがは私のデザインです。一分の隙もなく美しい。」
変形バカはモニターを見ながら満足げに言った。
「帽子の薔薇は要らねぇだろ。作る方の身にもなれや。」
源さんはあきれ顔で言った。
「あの薔薇が重要なのですよ。あの薔薇の赤が青の中に映えているのです。それがわかりませんか?だからあなたはスパロボバカなのですよ。ちなみに、レッドとイエローは白薔薇にしました。」
今度は変形バカがあきれ顔だ。
「へーへー。そうですか。しかし、リンリンの大和撫子の方も古風でいいな。まさか巫女さんとは思わなかったが。」
「大和撫子の袴は赤でもよかったんですが、あえて濃いめのピンクにしてみました。あの色のチョイスが一番難しかった。」
変形バカは満足そうだ。
「へーへーそうですか。」
源さんはそう言って口をつぐんだ。
『バカにつける薬はねぇな…。』
『バカにつける薬はありませんね…。』
変形バカとスパロボバカのバカ二人は、同時に同じことを思っていた。
残念なお話だが、バカはお互い様だ。
「コトバハワカルカナー。ワカッタラ、ミギテヲアゲテクダサーイ。」
マミタンは道化師達に向かって言った。
それにしてもなぜ、マミタンはいつも片言で話かけるのだろう?いまいち意味がわからない。
道化師達は何も言わず、互いに腰を低く落とし身構えた。
「やっぱり無駄か~。」
マミタンは残念そうだ。
「成功したことあるの?」
リンリンがマミタンに尋ねた。
「ないわね。」
マミタンはあっさりと答えた。
『ないんか…。そらそうやろな…。』
リンリンは変に納得した。
道化師達は尖った指先をマジカルに向け、身構えたまま動かない。
「行くわよリン。」
マミタンはそう言うと左腰のサーベルを抜いた。
今回は鞘がある。
「うん!」
そう言ってリンリンも腰の刀を抜くと構えた。
しばらく対峙したまま睨み合うマジカルと道化師達。
先に動いた方が負けだ!などという状況ではないはずだが、睨み合う事自体にマミタンは違和感を覚えた。
『マジカルが狙いならさっさと襲ってくるはずなのに、すぐに動かないのはなぜ?2機もいるのは前回の教訓からよね?他に何かあるのかしら?』
マミタンがそう思っていると、マミタンが突然マイクに向かって叫んだのだがそれはリンリンも同じだった。
「リン!後ろよ!」
「マミタン後ろ!」
センサーが自機の後方に新たな敵が現れた事を知らせたと同時に、マミタンとリンリンは互いに自分よりも相手の後方の敵の存在を教えあったのだ。
「挟み撃ち!仲間を待ってたのね!」
マミタンはそう叫ぶと、機体を横にして急発進をかけてバックした。
マジカルブルーナイトの動きを見たリンリンも前に教わった通りマミタンと同じ行動に入ったが、この時のマミタンとリンリンの行動は迅速であった。
挟み込まれるのを避け、V字に迎え撃とうとしたのだ。
「挟撃」と呼ばれる挟み込みを仕掛けられた場合、前後を押さえられるのが最もまずい。
出来れば敵を両方とも前方に持ってくるのが理想である。
そうなると、敵と自分を点とするならば、V字になるのがベストだ。
なんとか、最悪の事態を避ける事が出来たマミタンとリンリンだが、いくら性能の高いマジカルとはいえ、未知数の能力を持つ相手を2機も交えてしまえば、戦力的には圧倒的に不利である。
「リン!追いつめられたら上に飛ぶのよ!」
「わかった!」
道化師が低空飛行は出来ても、高く飛ぶ事が出来ないのは前回のデータからもわかっているが、相手がロボットである以上、今回も同じとは限らない。
しかも増援で現れた2機のロボットは、顔と体こそ道化師と同じだが、手足の形状が全く違う。
特に足が太いのが気にかかる。
追いつめられたらどうなるかはわからないが、とりあえず空を飛べば、間合いを取り直せる可能性は高い。
「こいつは間違いねぇ。あいつらの狙いはマジカルの性能チェックだな。」
源さんは神妙な顔つきで言った。
「でしょうね。とはいえ2対1はまずいですね。あの新型の足も何か匂います。」
変形バカはモニターを直視しながら言った。
「あわよくばマジカルを1機でも鹵獲して帰るつもりだろうが、それはさせねぇ。」
「いざとなれば…ですね。」
「そうだな。準備はしておこう。」
源さんはそう言うと、ポケットからタブレットを取り出した。
道化師達は、2機づつに別れてブルーナイトと大和撫子を追う。
ブルーナイトと大和撫子は追っ手に背中を向けながら、バーニアを噴かして距離をとりつつ、レーダーに映る相手の動きを見ている。
「スピードではこっちが有利ね。」
「マミタン。これからどうしよう?」
「うーん。」
マミタンは頭をフル回転させた。
その頃、中央通りを海浜公園に向かって走る1台の車があった。
車の車体にはマジカルのイラストが所狭しと描かれているが、かなり上手に描かれているのが目を惹く。
「急げハチマキ!法定速度を守りつつ、姫様達の元へと急ぐのだー!」
コブが運転席のハチマキに向かって叫んだ。
「わかっている!」
ハンドルを握りしめハチマキも叫んだ。
「姫様ー!今すぐ参りますぞー!」
マジカルブルー推しのコブは異常に気合いが入っている。
それにしても芝居がかった男だ。
後部座席のチビとマルとノッポの三人は、なにやら慌ただしく荷物をあさっているが、どうやら応援の準備を進めているようだ。
「前回のように遅れるわけにはいかん!マジカル親衛隊『め組』の名にかけて、遅れるわけにはいかんのだー!」
ハチマキはハンドルを握りながら絶叫した。
4対2のバトル開始です。




