第三章 18話 「真美ちゃんは真美ちゃんなんだよ。」
18話です。
今月中に3章が終わればいいなと思っています。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
「みんなでプリンが食べられるようになって、本当によかったね~。桜子さんに感謝だよ~。」
倫子はニコニコ顔で言った。
倫子の熱いプリン愛に負けた桜子が両チームの健闘を称える形をとって、明日の朝食には全員がプリンを食べられるようになったのだ。
「そうね…。」
隣の真美はなぜか元気がない。
二人は今、湯船に浸かっている。
マジカルボールが終わった後、気付けば倫子は汗まみれだったのでもう一度お風呂に入ることにした。
真美は汗をかいてはいなかったが、倫子に付き合ってくれた。
「どうしたのマミちゃん?」
倫子は心配そうに真美の顔を覗き込んだ。
「あのさリン。教えてもらってもいいかな?」
「なにを?」
「あたしとマナミンに囲まれた時、どうしてサトミンの方に向かってボールを投げたの?」
「あれはね。真由さんの考えた作戦なの。」
「やっぱり…。詳しく教えてくれる?」
「あのね、私はパスが来たら北に向かって逃げてって言われたの。」
「それから?」
「で、マミちゃんと真奈美さんに囲まれるたら上に飛んで、サトミンの膝元をめがけて、思いっきりボールを投げてって。」
「え?」
真美はそう言うとしばらく考え込んだ。
「そうか!サトミンがトスしたんじゃなくて、トスさせられたんだ!」
真美は目を見開きながら言った。
「そうか!そうだね!そうなるよね!」
倫子も目を見開く。
倫子がいくらパスをもらっても、残念だが今の倫子にマジカルブルーとマジカルイエローを同時に相手をすることは出来ないし、下手に焦って投げてもボールを捕られる確率は高いだろう。
それならばリンリンが、マジカルグリーンの膝元めがけて速いボールを投げる。
飛んでくる球は速く位置も低くいため、サトミンはトスでボールを上げて、球の勢いを抑えてからキャッチしようとするしかない。
あとは球が浮き上がったところを狙って、死角になる上空で待機するプリティが急降下してボールを捕ればいい。
実機ならともかく、シミュレーターではレーダーに映るのはボールだけだ。
名付けるとすれば「トンビに油揚げ作戦」になるだろうか?
「お姉ちゃんはそこまで考えてたんだ…。やっぱり敵わないなぁ…。」
真美はそう言うと考え込んだ。
「真由さんに敵わないとダメなの?」
倫子は不思議そうな顔で言った。
「え?」
真美は倫子の顔を見た。
「私にも妹がいるの。未祐ちゃんと同い年の。」
「美姫ちゃんだっけ?」
「そう。美姫は私なんかよりしっかりしてるの。いつもお姉ちゃんは頼りないって言われちゃう。」
「そうなんだ。」
「でもね。美姫は何をやっても詰めが甘いの。悪い事してもすぐにバレちゃう。」
倫子は笑った。
「けど美姫はいつもなんだかんだで許してもらえるのよね~。うらやましいったらありゃしない。」
「そうなんだ。」
「お姉ちゃんは妹がうらやましいと思うし、妹はお姉ちゃんがうらやましいって思うよね~。」
「そうね…。」
真美のトーンが落ちた。
「それって、お互いが逆の位置に立っていると思うからそう思うんだって。だから立場が逆になっても、同じようにうらやましいがるんだって。でも本当は同じ所に立っているんだって。」
「同じ場所に立ってる?」
「姉妹である前に一人の人間だから。」
「そうか…。確かにそうかも…。」
「昔、お父さんが教えてくれたの。『倫子と美姫は姉妹やけど、姉妹である前に倫子は倫子やし、美姫は美姫なんやで?』って。姉妹だからって同じやないよって。だから私は私だし美姫は美姫。真由さんは真由さんだし、真美ちゃんは真美ちゃんなんだよ。」
「プリンリンのお父さんも良いこと言うわね。」
「やめて~。やめたげて~。プリンリンはやめたげて~。」
倫子は両手で顔を覆い隠しながら言った。
真美は倫子を見ながら笑っている。
「お姉ちゃんと初めて会った日の事を覚えてる?」
「リビングで真由さんが寝ていた時の話?真由さんは寝てても綺麗だよね~。」
「あの時なぜお姉ちゃんがリビングで寝ていたと思う?」
「え?真由さんは眠くなったからって…。」
「部屋に戻って私を起こしたくなかったからよ。眠たくてたまらない人が、服をハンガーにかけて、パジャマに着替えて寝ると思う?」
「そうか…。そうだね。」
「前にも何度か同じ事があったのよね…。お姉ちゃんはいつもそうなの。私に気を使ってばっかり。さっきぶつかった時も、注意も怒りもしないで大丈夫?だもん。そんなに頼りになんないのかな?あたしって…。」
真美は悲しそうな顔になった。
「マミちゃんが頼りないんじゃなくて、真由さんはマミちゃんが大好きなんだよ。」
倫子は笑顔で言った。
「え?そう…かな?」
真美は俯きながら少し恥ずかしそうに言った。顔も少し赤みがかっているようだ。
「あたしだったら気にせず部屋に戻るし、ぶつかってきたら注意するなぁ。寝ている美姫の顔にイタズラしちゃうかも。額に小豆って書くかもしれない…。」
倫子はそう言って悪戯っぽく笑ったが、なぜだ…。なぜ額に小豆と書こうとするのだ…。
「マミちゃんも、真由さんの事好きでしょ?」
「うん…。」
「真由さんはしっかりしてるからさ。今はマミちゃんの出番が少ないだけだよ。いつかマミちゃんの出番が来るから、その時がマミちゃんの出番なんだよ。」
真美は黙って考えこんだ。
「私は真由さんとマミちゃんは、すっごくいい関係だと思うよ?見ていてうらやましくなるくらい。」
「そうかな?」
「姉妹の関係なんていろいろあるでしょ?その中でお互いに思いあってる姉妹がどれだけいるんだろうね。うちなんか喧嘩ばっかり。」
倫子は笑いながら言った。
「あたしの出番…。か…。」
真美はぽつりと呟いた。
その頃、リビングでは桜子と真由と真奈美が話をしていた。
「桜子さんはさっきのゲームをどう思いました?」
真奈美が桜子に尋ねた。
「さすがは真由ちゃんとマナミン提督ね。結構なお点前でした。」
桜子はそう言って笑った。
「マナミン提督はやめてくださいよ~。」
真奈美は照れながら言った。
「みんな上手だったからびっくりしちゃったわ。気になったのは一つだけかな?」
「やっぱり気になりましたか?」
真奈美は真剣な顔で言った。
「急ぐ必要はないけれど、早く出来るに越したことはないわねぇ。」
「どうしましょう?」
真奈美は心配そうだ。
「真由ちゃんはどう思っているの?」
桜子は真由の顔を見ながら言った。
「心配ないと思います。」
真由はにっこりと笑いながら言った。
「なら大丈夫ね。」
桜子も笑って返す。
「リンちゃんはどうだった?」
真奈美の質問に対し真由が答えた。
「リンちゃんはこれから、マジカルチームの鍵になっていくと思います。」
「鍵?」
真奈美は不思議そうに首を捻った。
「そう。私達が次のステップに移る為の、重要な鍵にね。」
真由はそう言うと嬉しそうに笑った。
マジカルボールはどうだったでしょうか?




