第三章 7話 「青葉署は大忙し」
第三章 7話です。
今回は文章が少ないです。
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
真美と倫子が話していた頃。
3人の男は窓もない狭くて汚い六畳一間の中で、膝を抱えて座っていた。
「何だったんですかねぇ…。」
ヤスは呟くようにアニキに尋ねた。
「わからねぇ…。」
アニキは呟くように言った。
「わしらは何をさせられたんじゃ…。」
タツも力無く呟く。
「はっきりしているのは俺達は騙された。それだけだ…。」
アニキは悔しそうに言った。
ある人物から依頼され、とある会社からロボットの図面を盗み出した挙げ句、青葉中央通りをロボットで暴走した3人が、マジカルグリーンとプリティに見事なまでにコテンパンにされたのは少し前の事だ。
不思議なことに3人は、警察に連行されてロクに取り調べも受けず、しかもなんのお咎めもなくあっさりと釈放された。
「ようするに外国人から依頼されて泥棒に入って、用意されていたワーカーで逃げた。で、マジカルにやられて御用になった。そう言う事だろう?」
まだ若い青葉署の岸本巡査はあきれた顔で3人に聞いた。
「そうです…。」
アニキが力無く答えた。
「わかったわかった。もういいもういい。釈放だ釈放。」
「え?」
「え?」
「え?」
3人は同時に驚いた。
「え?いいんですか?」
アニキはおそるおそる尋ねた。
「おまえらよそ者は知らないだろうがな。お前らみたいなのがこの島には月に何人も出るんだよ。外国人に頼まれて泥棒に入って、ワーカーで逃げるやつがよ。」
アニキ 「へ?」
タツ 「へ?」
ヤス 「へ?」
「その金髪の若い外国人と、南の地下トンネルで待ち合わせしてたんだろ?」
警官はあきれながら言った。
「なんで金髪って知ってるんだ?」
アニキは驚いた。
「前金に一人10万円。成功報酬が100万円。図面と引き換えにもらう手はずだったんだろ?」
「なんで金額まで知ってるんだ?」
「だからよ~。お前らみたいなのが月に何人もいるんだよ!口を揃えて同じ事ばっかり言いやがって。今まで何回聞かされてきたと思ってるんだ!いちいち相手してられるほど、青葉署も暇じゃないんだよ!」
岸本巡査はかなりご立腹のご様子だ。
「泥棒は罪じゃないのか?暴走行為も?」
アニキはそう言ったが、自分から罪に問われようとする泥棒も珍しい。
「あのなぁ。盗られた会社は被害届を出してねぇんだ。いちいち届けを出すのも面倒だし、そもそも盗られて困るような物じゃないらしいんだよ。お前らが盗んだ図面は機械に詳しい子供なら、理解出来る程度のものだそうだ。」
3人は俯いたままだ。
多分恥ずかし過ぎて顔を赤らめているのだろう。
「ぼ、暴走行為の方は…。」
アニキは声を振り絞って言った。
「ロボットは所有者にかかる責任が重いんだ。盗まれた時点で管理不十分で大問題になる。そのロボットが出した被害の半分は確実に負わなきゃならないからな。大抵の所有者は盗まれた時点で警察に報告して、ロボットの所有権を放棄するんだ。そうじゃないと、とんでもない賠償金が請求されるからな。それに比べりゃ大した事はねぇという温情があるんだよ!お前らの乗ってたワーカーは、半年も前に盗難届が出ていたしな。」
あまりの見解に3人は言葉も出ない…。
「まぁ、他にも外国から産業スパイが来ることもあるんだけどな。そっちの方はもっと大変だ。」
岸本巡査はやれやれというふうに言った。
「なんでですか?」
アニキは理解出来ないようだ。
「国絡みとなると話がもっとややこしくなるんだよ。たとえその国の企業が勝手にやった事でも、立派な国際問題になるだろう?当然、賠償責任も出てくる。だから自国の人間が警察に捕まっても、知らぬ存ぜぬを貫かれるんだよ。」
「知らぬ存ぜぬって…。」
「そんな人間は自分の国にはいない。自国民じゃないって言うんだよ!どっからどうみても軍人にしか見えない人間であってもな!」
アニキ 「え!」
タツ 「えぇ!」
ヤス 「えぇー!」
「自国のロボットで暴れまくっておいて、知らんぷりするんだぞ?考えられないだろ?」
3人は言葉を失ったまま顔面蒼白になっている。
「青葉署もそういった対応に追われて忙しいんだよ。それより問題はお前らだ。もしお前らが建物一つでも傷つけてたら、お前らが損害を全額負担しなきゃならなかったんだぞ。」
3人の背筋が一気に凍る。
最初っから建物を壊すつもりはなかったが、もし間違って壊していたらとんでもない金額を請求されただろう。
こけたりしたら大変だ。
アパートを壊したりしたらもっと大変だ。
「暴走行為に関しても本来の罪が重いんだが、お前らは初犯だしこっちも事情もわかっているから、今回は厳重注意で済む。だが次は覚悟しとけよ!初犯に甘い分、再犯の場合は罪が一気に重くなるからな!執行猶予無しの実刑判決だ。最低でも懲役5年は確定だぞ!」
岸本巡査は厳しい顔で言った。
「はい…。」
「はい…。」
「はい…。」
「お前らにも事情があったんだろうがな、罪に問われないからと言って、おまえらのやった事は許される事じゃないんだ!肝に銘じておけよ!」
「はい…。」
「はい…。」
「はい…。」
「と言うわけで帰れ帰れ!これに懲りて2度と悪さすんじゃねぇぞ。」
岸本巡査にそう言われ、3人は青葉署から追い出されたのである。
「なんつー街なんだここは…。」
アニキは情けない声で言った。
「俺達…。これからどうなるんすかね…。」
ヤスは不安そうだ。
「故郷に帰って、実家の農家を継いだほうがええんかいのぅ…。」
タツは弱音を吐いた。
ガチャ
「よお!お兄ちゃんらおなか減ってへんか?飯でも行こか?」
部屋のドアが開き、元気な声が聞こえた。
アニキ 「だんな!」
ヤス 「あにさん!」
タツ 「あにさん!」
3人が声の主の顔を見ると、そこにはにっこりと笑う和菓子屋の将太おじちゃんがいた。
いろいろと大変。




