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第三章 6話 「め組。利用される。」

第三章 6話です。


め組の話はいったん終了です。



いつも読んでくれてありがとうございます。


 m(_ _)m

「おかしな事って…なに?」

倫子は恐々(こわごわ)とした様子で真美に尋ねた。

「だんだんマジカル親衛隊が減っていったの。」

「なんで?」

倫子は不思議そうに首を傾げた。

「め組の話は他の親衛隊の間で噂になったの。何組かの親衛隊は市庁舎にまで押しかけて市長に抗議したらしいわ。め組だけずるい。贔屓(ひいき)だって。」

「なるほど~。」

確かにそうとられても仕方がない気もする。


め組は市長自らマジカルの応援を認められのだから、他の親衛隊からすれば気持ちのよい話ではないだろう。

市長のお墨付きと言うのは親衛隊としても箔がつく。

間違いなく大手を振って街を歩けるだろうし、そんな親衛隊は全国を探してもないはずだ。



「あまりにもしつこいもんだから、市長はシティホールに親衛隊を集めたらしいのよ。」

「なにを話たんだろう?」

「それは知らないわ。あたしは参加してないからね。」

「そうだよね。」

倫子はそう言うと笑った。

確かに真美の言う通りである。



「それから日を追うごとに、マジカルの親衛隊が解散していったのよ。」

「何があったんだろうね?」

マジカル(こっち)としては、それでよかったんだけどね。」

「そうなの?」

「声を張り上げるのも応援だけど、心の中でする応援も応援でしょ?応援してくれる気持ちだけで充分じゃない。マジカルはアイドルじゃないんだし、危ないのは心配でしょ?」

「でも、め組の人達は危ないんじゃ…。」

倫子は心配そうだ。

「それがね~。め組は事故も怪我もしたことがないのよね~。」

真美は不思議そうに言った。

「一度も?」

「一度もよ。応援してくれている場所も毎回絶妙なのよね~。絶対に邪魔にもならないし迷惑にもならない場所にいるのよ。あれは一種の才能だわ。」

「そうなんだ…。」

『その才能はいらんなぁ…。』

倫子はそう思ったが大抵の人が同じ気持ちだろう。


「変わった人達だけど悪い人じゃないわよ。でもアレについていけるかって言われたらそれは無理。」

真美ははっきりとそう言い切ったが、何気にキツイ一言だ。

「タマゴ1個であれだけ悩むんだもん。無理だよね。」

倫子は大いに納得している。

め組は倫子からかなり信用されていないようだ。

日頃の行いというものが、いかに大切なのかがよくわかる。



「さぁて。親衛隊達はどうでるかねぇ?」

シティホールでの説明会を終えた鷲巣見源二郞は、市長室のソファーに腰掛けながら首元のネクタイを緩めつつ、目の前に座る体育教師風の男に話かけた。

今は黒っぽいスーツ姿なのでガラが悪く見える。

「さぁねぇ。どうなることやら…。」

体育教師風の男はソファーに深くもたれかかり、ネクタイを緩めながら言った。

市長を前にしている割には、ずいぶんとリラックスしているようだ。


「友人としてではなく、交渉人(ネゴシエーター)としての意見が聞きてぇな。くそったれ。こんなもん首に巻いているからまともな仕事が出来ねぇんだ。」

市長は忌々しそうにそう言うと、手に持ったネクタイを無造作にソファーの上に放り投げた。

「しかしこれで他の親衛隊はめ組(やつら)と同じ真似は出来ねぇだろうな。」

「そうだろうな。それに命がけで応援する以上の事はさすがにないだろうしな。」

源二郞はそう言って笑った。


「最近、親衛隊の動きがおかしかったんだろ?」

「ああ。最近め組の真似をしようと現場に押しかける輩がちらほら出てきてな。青葉署の署長からも相談を受けていたんだ。」

「署長も胃が痛い話だな。」

「青葉署もやることが多いし人手不足だからな。これ以上署長に迷惑はかけたくない。」

「しっかし、さっきは面白かったなぁ。」

ガラの悪いスーツ姿の男は思いだし笑いをし始めた。



青葉シティホールでの説明会の時の話である。

青葉シティホールには各マジカル親衛隊員達は総勢40名。

8グループと言ったところか。

「今回のめ組についての説明会だが、最初に言っていおく事がある。」

源二郞はそう切り出した。

「青葉市としてはめ組の活動を許可しているわけではない。条件付きで容認しているだけだ。君達がめ組と同じようなスタイルでマジカルを応援したいという気持ちはわからんでもない。しかし現場にまで押しかけて応援しようってんなら条件が二つある。一つはさっき配った書類に必要事項を書いて提出してくれ。親衛隊のメンバー全員分だ。」

「市長!これはなんだ!」

血気盛んな若者が配られた書類を見もしないうちに、高くかざしながら源二郞に向かって叫んだ。

「まずは書類を読んでくれ。読めばわかる。」

親衛隊員達は、慌てて書類に目を通し始めたが、すぐにざわつき始めた。

「なんだこれ?」

「応援中に死んでも構いませんだぁ?」

「迷惑をかけたら責任を全て負います?」

「損害賠償までするのか!」

「全部、自己責任じゃないか。」

「うそだろ…。」

親衛隊員達は各々の思いを口にし、戦々恐々としだした。

「警察は俺達を守ってくれないのか!」

「俺達には守られる権利があるぞ!」

「我々に死ねと言っているのか!」

「税金返せ!」

親衛隊達は言いたい放題だ。



「警察が守ってくれねぇだぁ?市民に安全を(うなが)すのが警察の最初の仕事なんだよ。守るのはその次だ。てめぇから好き好んで危ない場所に行こうとするお前らに、青葉署は今まで散々注意してきたはずだぜ?なんなら今まで注意してきた親衛隊の名前を全部挙げてやろうか?」

源二郎の言葉が終わると、会場は水を打ったように静まり返った。


「め組はよ。そこに書いてあるのと同じ内容の血判状を持って俺に直談判しにきたんだ。俺としては自己責任でやると言うのならと容認した。おめぇらも容認して欲しけりゃ、その書類に署名をして提出してくれ。そうすれば最終的に俺と面接をした上で、こちらも納得出来るなら現場でのマジカルの応援を容認しよう。」

ホールが再びざわつき始めた。


「今すぐ提出してくれとは言わねぇ。持ち帰って検討してくれればいい。期限は1週間だ。それと市民IDは絶対に書き忘れないでくれよ。書類が無効になる。」

ざわつきは止まらない。


「それとな、モニターの前で応援するのは構わねぇがあまり騒ぎ過ぎないでくれ。正直なところかなりの苦情がでてきている。これ以上騒がれるとこちらもなんらかの対策をしなきゃならねぇが、俺個人としてはしたくねぇんだ。ルールなんざ増やしてもロクな事がねぇからな。出来るだけおまえらのモラルってやつに任せてぇんだよ。協力してくんねぇかな?俺からの話は以上だ。」

源二郞はそう言うとホールを後にしたのである。



男 「ガーディアンを応援するだけのために、命まで張るってんだからな。しかしまぁ今時、血判状なんてさすがに驚いたが。」

源二郎 「確かになぁ。こいつら腰に刀差して歩いてるのかと思ったぜ。」

男 「ははははは!しかもお前に睨みつけられても、ちゃんと返事をしたしな。床を汚さなかっただけでも御の字だ。」

「わははははは!美々子(みみこ)くんに怒られなくて済んでよかった。」

源二郞は豪快に笑った。

「ま、8グループあってもほとんど来ないだろうな。来たとしても面接でアウトだろ?」

ガラの悪い男はそう言って笑った。


源二郎「本意じゃねぇがそうなるだろうなぁ。め組(あいつら)ほどの覚悟のあるグループは他に無いだろう。」

男 「確かにな。しかしよく考えたな。」 

源二郎 「なにが?」

め組(あいつら)を抑止力にするつもりだろ?」

ガラの悪い男はニヤリとしながら言った。

「何の事やら?」

源二郞はとぼけた。


「親衛隊なんてもんは、他の隊より派手に動きたいはずだ。そうなるとめ組(あいつら)以上の活動をしなくちゃならない。め組(あいつら)が今の活動を続ける限り、他の親衛隊が何をしたところで、活動内容は大人しく見える。毒をもって毒を制すってやつだな。」

め組(あいつら)には悪いが、車はその詫びみたいなもんだ。それに車があれば何かあっても逃げやすいだろうしな。それにしても詫びにしちゃ高くついたぜ~。なんせ頑丈な車を用意したからな~。」

源二郞はそう言ってため息をついた。


「ま、め組(あいつら)なら上手くやるだろ。なんせ飛び出たバカどもだからな。」

「バカでも飛び出りゃ立派な才能だ。中途半端なバカが一番たちが悪い。」

「自分は頭がいいと思っているバカもな。」

ガラの悪い男はそう言って笑う。

「確かにな。め組(あいつら)が、ただのずば抜けたバカで終わるかどうかはあいつらが決める事だ。こっちはできるだけの事はしたさ…。」

源二郞は遠い目をしながら言った。



 

結局、容認を取りに来た親衛隊はいなかった。

しばらくの間は各親衛隊も活動を続けていたが、日が経つにつれて親衛隊の数は減っていき、結局最後はめ組だけになってしまった。

中にはめ組に編入しようとしたり、乗っ取りを謀る親衛隊もいたがことごとく失敗し、め組の前から消えていった。

なぜそうなったかはよくわからない。

当事者達に尋ねても固く口を閉ざしたままだ。

ある男が言った一言が印象的なので書き記す。

め組(あいつら)は狂っている…。」

だそうだ。



数日後、手続きを終えたハチマキが、め組を引き連れて市庁舎に車を取りに行った。

チビ 「かっけー!」

マル 「すごいっすねー!」

チビとマルは感嘆の声をあげた。

「なんだこれは!」

コブも驚きを隠せない。

ハチマキ「…。」

ノッポ 「…。」

ハチマキとノッポは黙って車を見つめている。


「でっかいキャンピングカーじゃないですか!」

マルは嬉しそうに言った。

目の前にあるのはピカピカに光る、白くて大きなキャンピングカーだったのだ。

「これ…。絶対に中古じゃねぇな…。」

ハチマキはポツリと言った。

「間違いない…。新車だ…。」

コブも同意しノッポは力強く頷いた。

シートにビニールがかかった中古車などあるわけがない。

少なくとも新古車以上なのは見てすぐにわかった。

おかしなやつしか出て来ない小説ですね。

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