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第三章  5話 「め組。直談判する。」

第三章 5話です。



いつも読んでくれてありがとうございます。


 m(_ _)m

乙女座のリビングのソファーに座り、倫子と真美は話をしていた。

「め組の話だけどね…。」

真美はそう言って話を始めた。

「なんで『め組』って名前なの?昔の火消しの組みたい。」

倫子が真美に尋ねた。

「なんでだろう?よくわかんないけど、すごい親衛隊なのは間違いないわ。」

真美はそう言って笑った。

「なにがすごいの?」

倫子は不思議そうだ。

「リンはさ。マジカルが戦っているすぐそばであんな風に応援が出来る?」

「え?」

真美にそう言われた倫子はキョトンとした。

言われてみれば確かにそうだ。

いくら親衛隊だと言っても普通、戦闘中にあんなに間近でサイリウムを手にして、激しく踊りながら応援など出来るだろうか?

あまりにも危険な話である。


「昔はマジカルの親衛隊がいっぱいいたの。でも現場にまで来て応援してくれた親衛隊はめ組だけ。後はみんなモニターの前から応援してくれていたわ。」

「でもそれって危ないんじゃ?」

「私達ももちろんそう言ったわ。でもね。本人達は笑顔で言うのよ『死んでも文句は言いません。やりたいようにやらせて下さい。』って。」

「はぁ?」

倫子の目玉がこぼれ落ちそうになった。

め組は命掛けでマジカルを応援すると言うのか?

なにを考えているのかが、全く理解が出来ない。


「でね。め組の活動を心配した市長が危ない事はやめて欲しいって言ったんだって。」

「普通はそうなるよね…。」

誰が聞いても市長の言う事の方が正しいだろう。

「市長はめ組を市庁舎に招いたの。それでどうなったと思う?」

真美は笑顔で倫子に尋ねた。

「め組が何かしたの?」

倫子は驚いた。

「2年くらい前だったかな…?」

真美はそう言って話を始めた。



その日、青葉市長「鷲巣見源二郞」に招かれた「め組」の5人は、いつもの法被姿で市庁舎へと赴いた。

青葉市中央区にある青葉市庁舎は5F建ての近代的なビルだがそれほど大きくはない。

熱血ビルと変わらないくらいの大きさだろう。

市庁舎は青葉中央通りに面しており、一日の来庁者もかなり多い。


め組のメンバーは市庁舎に着くと、すぐさま眼鏡をかけたインテリ風の女性秘書に案内され市長室へと通された。

市長室は10畳程の広さでそれほど広くはない。

いくつかの棚と事務机。

それに大きなソファー一式が置いてあり、壁には歴代の市長の写真の入った額が飾ってある。

額は2枚しかなく、先代の市長の顔には黒く太いテープでバッテンが貼られている。

まぁ…。それも仕方がないだろう。

撤去されていないだけまだマシだ。



「よう!わざわざ呼びだてて悪かったな。」

事務机に座る鷲巣見源二郞は、和やかな笑顔でそう言うと右手をあげた。

『こ、これが東京都知事の次に力を持つとされる青葉市長、鷲巣見源二郞氏なのか…。』

ハチマキは目の前の男が放つ気迫に飲まれそうになった。

無論、他の4人も同様だ。

写真で見るのとは迫力がまるで違う。


まだ30代の若さながら、青葉市長二期目の鷲巣見源二郞は眉が太く精悍な顔つきには野性味があり、無造作に伸ばした長い髪がさらに野性味を増している。

ラガーマンのような立派な体格なのだが、ネクタイも巻かずにポロシャツにスラックスというラフな格好なのが気にかかるが、屈強なSPと並んだら、どっちが市長だかわからなくなるだろう。


源二郞の隣に立つ男も源二郞と似た風貌ではあるが、髪が短くて体格もかなりよく、こちらの男は黒のジャージ姿である。

まるで高校の体育教師のような見た目だが、ジャージ越しでも、源二郎に負けず劣らずの立派な体型である事がわかる。



「ま、とりあえずは座ってくれや。美々子(みみこ)くん。コーヒーを人数分頼めるかい?」

源二郞が女性秘書にそういうと、女性秘書は無言で頭を下げてから部屋を出て行った。

「兄ちゃん達がめ組とかいう、マジカルの親衛隊のメンバーかい?」

源二郞は笑顔でハチマキに尋ねながら、隣の男と共にソファーへと移動した。

「そ、そうであります!」

ハチマキの声が裏返った。


「お噂はかねがね耳にしてるぜ。とりあえず座ってくれよ。立ったまんまじゃ話も出来ねぇ。」

源二郞がそう言ってソファーに座ると、男は源二郞の後ろに立った。

「失礼します!」

ハチマキがそう言ってソファーに腰掛けると、残りの4人も続けてソファーに腰掛けた。

「ハチマキしてる兄ちゃんがリーダーか。そっちの角刈りの兄ちゃんがサブリーダーってとこだな。」

源二郞はコブを見ながらそう言った。

「その通りであります!」

ハチマキがそう言うと源二郞が笑った。



「ま、今回来てもらったのは他でもねぇ。おまえさんらがマジカルを応援するのは結構なんだが、やり方がちーとばっかり危なっかしい。もう少しなんとかならねぇかい?って話だ。」

源二郞は和やかに話かけた。

「なりません!」

ハチマキははっきりと答えた。

どうやらコブの言う通り、ハチマキは「バカな動物」のようだ。

コブ 「なりません!」

ハゲ 「なりません!」

チビ 「なりません!」

ノッポ 「なりません!」

4人も同じように答えた。

間違えた。

全員バカだったようだ。

「三人寄れば文殊の知恵」と言うが、バカが5人も集まればなんと言うのだろう?

非常に興味深い話ではある。



「おまえさん達の気持ちはわかった。とはいえ今のままだとおまえさんらになんかあったら、市長の俺の大問題になるのはわかるだろう?そっちの言い分だけじゃ、済まねぇ話になるわな?」

源二郞は笑顔のまま言った。

威圧感など微塵もない。

「はい。」

ハチマキは真摯に答えた。


「出来れば、今のやり方を遠慮してもらいてぇのが俺の本音なんだが、おまえさんらはどう思う?俺の言う事に納得出来ねぇか?」

「いえ。充分理解出来ます。それで今回はこれをお持ちいたしました。是非ともお目通しをお願いします。」

ハチマキはそう言って懐から何かを取り出すと、源二郞の前に置いた。

それは細長く白い紙に包まれた書状であった。


「これは?」

源二郞は書状を見ながら言った。

「我らの覚悟の証です。」

ハチマキはそう言って頭を下げた。

「書状とはずいぶんと古風だねぇ。中をあらためさせてもらっていいかい?」

「是非もなく。」

ハチマキがそう言った。

ハチマキと源二郎は、武士のようなやり取りをしているが、なんなんだこいつらは?


源二郞は書状を手に取り包み紙を開けた。

丁寧に折り畳まれた書状を広げてみると、かなり長い文章のようだ。

源二郞の後ろに立つ男も、源二郞と共に無表情のまま書状に目を通した。

「なるほど…。決意表明ってわけだな…。」

源二郞は真剣な表情でそう言うと俯いた。

「気持ちはわかった。と言いてぇ所だが話が話だ。そう簡単にはいそうですかとはならねぇんだなこれが。おめえら、今の俺を見ても気持ちは変わらねぇかい?」

そう言って源二郞はゆっくりと顔をあげると、その瞬間にめ組全員の体が硬直した。

目の前にいる源二郞が鬼のような顔つきで5人を見ている。

鬼気迫るというのはこの事をいうのだろう。



「生半可な覚悟で、この鷲巣見源二郞を相手に出来ると思うなよ?」

目の前の鬼が口を開いた。

コブは身動き一つとれないほど体を硬直させており、マルとチビはガタガタと体を震わせている。

ノッポは気が遠くなりそうになった。


だがしかーし!ハチマキだけは違った!

目の前の鬼の目を、しっかりと見据えながらハチマキは叫んだ。

「男に二言なし!」

鬼はハチマキの目を睨みつける。

ハチマキも負けじと睨み返す。

鬼とハチマキの睨み合いが続く。

「ハチマキに桃が描いてあったら鬼退治みたいだな。」

などと、くだらぬ事を言う者は一人もいない。

いくらバカな動物達でも、そんな雰囲気ではない事はわかっている。



どれだけの時間が過ぎたであろう。

後年、ハチマキはこの時の事をこう回想している。

「人生で最も生きた心地のしなかった時間。」であったと。


「気に入った!好きにしな。」

鬼はそう言って満面に笑みを浮かべた。

そこには、先ほどの鬼気迫る迫力など微塵も残っていない。

「い!いいんですか!」

マルは大きな声で言った。

「ただし条件がいくつかある。それだけ呑めば青葉市としてはお前さん達の活動を容認しよう。」

「条件とは…。」

ハチマキが心配そうに言った。


「おめえらマジカルを応援するのに、どうやって移動してるんだ?」

「自転車に乗って追いかけています…。」

ハチマキは恥ずかしそうに言った。

クソがつくほど貧乏学生の5人にとって、車どころかバイクですら持っているはずがない。

親衛隊をやりながら、お金が稼げるほど世の中は甘くはないのだ。




「誰か車の運転は出来るのか?」

「私が出来ます。他にも二名いますが。」

ハチマキは手を挙げながら言うと、コブとノッポも手を挙げた。

「じゃあ車を一台用意してやる。今後はその車で移動するんだな。」

ハチマキ 「え!」

コブ 「え!」

ハゲ 「え!」

チビ 「え!」

ノッポ 「え!」

め組は思わず声をあげた。

「し、しかしそれでは市長のお立場が…。」

ハチマキは焦った。

いくらなんでも、税金で車を用意してもらう訳にはいかない。


「アホか。どこの市長が頭のいかれた親衛隊に貴重な税金をつぎ込むかよ。俺が乗ってた中古の車が1台ある。それをやるから乗りな。名義変更だのなんだのは後々の話だ。」

「よろしいのですか?」

ハチマキはおそるおそる尋ねた。

「これは市長としてじゃねぇ。鷲巣見源二郞、一個人としての話だ。近いうちに用意するから、ここまで取りにきな。」

「あ!ありがとうございます!」

め組は全員ソファーから立ち上がると、源二郞に深く頭を下げた。


「次の条件だが心して聞けよ?」

「はい。」

「絶対に死ぬな。」

「へ?」

ハチマキの顔が呆けていく。

「島中マジカルを追いかけて応援するのは構わんが、絶対に死ぬな。危なくなったら逃げろ。これだけは死んでも絶対に守れ。ん?死んだらまずいか?」

源二郞は笑いながら言った。

「はい!」

め組は声を揃えて返事をした。

「それとな。帰りに熱血屋に行って、ホイさん定食3つ頼んできてくれ。条件はそれだけだ。」

源二郞がそう言って笑った時

「ホイさん定食は一つキャンセルで。チーズバーガーセットに変更してください。」

部屋のドアを開け、コーヒーを持ってきた女性秘書が言った。

「それで頼むわ。」

 源二郞はそう言って笑った。



「とまぁそんなわけで、め組は市長からマジカルの応援活動を許されたのよ。」

真美はあきれた顔で倫子に言った。

「真美ちゃんよく知ってるねぇ。」

「だって本人達から直接聞いたんだもの。」

「へ?」

「あの日、熱血屋でずいぶんと興奮しながら喋ってたわ~。うるさいったらありゃしない。」

「そうなんだ…。」

「コブさんなんか興奮し過ぎちゃってさ、メンバー全員に焼き肉の食べ放題を奢ったからね。しかも飲み放題付きでよ?」

「へぇ~。信じられないね。」

あのメンバーが焼き肉食べ放題?

倫子はあまりにもピンとこなかった。

勤めて一月にも満たない倫子がそう思うのである。

め組の食生活の貧しさが、改めて手に取るようにわかる気がする。


「それからよ。おかしな事が起こり始めたのは。」

真美が慎重な声でそう言ったものだから、倫子は思わず身構えてしまった。

め組の話はもう少し続きます。



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