表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/847

第三章  第2話 「ええのん?」

第三章 2話です。



いつも読んでくれてありがとうございます。


m(_ _)m

「わわわわわわ!」

操縦桿(レバー)を動かしながら、倫子は焦っていた。

それほどまでにマジカルブルーの猛攻(ラッシュ)は激しかったのだ。


マジカルブルーは左手に丸い盾を持ち、右手に持ったサーベルでマジカルピンクに斬りかかっているのだが、そのスピードが早い。

マジカルピンクは両手に持った刀でマジカルブルーの猛攻(ラッシュ)を捌くので精一杯だ。


『うわ!マミちゃんまだまだ全然余裕やん!』

マジカルブルーの動きを見ながら倫子は思った。

動きに余裕があるのが見ていてわかる。

「そうそうその調子よ。はい交代。」

真美の声が倫子の耳に響く。


マジカルブルーが動きを止めると、今度はマジカルピンクが刀を構えた。

対してマジカルブルーは構えもせず、ただ立ち尽くしているだけだ。


「よーし!いくよー!」

マジカルピンクはブルーに袈裟がけに斬りかかった。

カン!

マジカルブルーは左手を上げ、シールドで難なくピンクの攻撃をはね返した。

マジカルピンクは何度も何度もブルーに打ち込むが、ことごとくシールドではね返されていく。


カン! カン! カン! カン!

「はい。はい。はい。はい。」

真美はテンポ良く声を出しながら、シールドでマジカルピンクの攻撃を捌いていく。

「その調子、その調子。」

真美はそう言いながらマジカルピンクの攻撃を全て捌ききった。


「ダメだぁ~。」

コンテナの待機部屋のソファーに座り、ストローでドリンクを飲みながら倫子が言った。

「ん?何が?」

真美は棒状のプレッツェルにチョコレートのかかったお菓子をポリポリと食べながら、倫子に尋ねた。

「攻撃が全然当たんないね~。」

やんなっちゃう。

とでもいう風に倫子は言った。

「3年よ。」

「へ?」

「3年もかけてやっとここなの。」

真美は右手の指を3本立てながら言った。

「3年?」

「マジカルブルーは3年かけて私が育てたの。でも()()ここなの。やんなっちゃう。」

真美は残念そうな顔をしている。

()()って…。あれだけ動かせるのに?」

倫子は不思議そうに言った。

今のマジカルピンクにブルーと同じ動きは出来ない。



「お姉ちゃんも真奈美ちゃんも、もっと上手に動かせるの。あの二人に比べたら、私なんてぜーんぜん下手っぴよ。」

「そんなに?」

倫子は体が震えそうになった。

綺麗で優しくて料理も上手くて、さらにロボットの操縦まで上手いというのか?

美女神(ヴィーナス)はどこまで完璧なのだ!

いやいや倫子よ。

驚くのはそこではないはずだ。



「3年かけてまだここだけど、もっと上手になりたいの。そうじゃないとブルーにも悪いからね。」

「マジカルブルーに?」

「ブルーはもっと凄い事が出来るはずなの。せっかく出来るのに、させてあげられないのは可哀想でしょ?」

「マミちゃんは凄いねぇ。」

「源さんに言われたの。物にも命はあるって。」

「命…。」

「私達のご先祖様はそういう考えを持っていたんだって。だからこの国には八百万(やおよろず)の神様がいるんだって。」

「なるほど…。」

言われてみれば確かに、神様が八百万もいる国なんて他に聞いた覚えがない。

単純に倫子がそういう話に興味がないから、知らないだけかも知れないが。



「だからロボットにも神様がいて、ロボットにも命があるんだって。源さんて変な事言うでしょ?」

「変…?」

なんだろう?

変かと問われてみれば、変かも知れないし、変ではないかも知れない。

なんとも言えないおかしな感覚だ。



「あたしは最初、源さんは変な事言うなぁって思ったの。そもそもあたしは無信心だからね。でもブルーに乗ってるうちに源さんの言葉の意味が、少しずつだけどわかってきたような気がするのよ。」

「私も私だけのマジカルピンクを育てなきゃね。」

「マジカルはあたし達の相棒(バディ)だからね。」

「マミちゃん!休憩が終わったらまたやろう!」

「いいわよ~。」

真美はそう言って笑った。

『マミちゃんが3年も頑張って、ここまで上手に動かせるんやったら、今の私が下手っぴでも当たり前やん。そんなマミちゃんが教えてくれてるんやから、上手になれへんかったら私がサボってるだけやん。大丈夫!不器用やけどサボってはいいひん!絶対に上手になるはずや!』

倫子は自分にそう言い聞かせた。



倫子と真美が模擬戦をしていると出動要請がかかった。

どうやら中央通りを2機のワーカーが暴走しているらしい。

2人は慌てて現場に向かった。

「げ!あいつがいる!」

現場に着いて早々、真美は嫌そうな声をあげた。

「あいつ?」

倫子は道路の前方に立つ2機のロボットを見た。

1機はテヤンデーだが、もう1機は初めて見る機体だ。



「なにあのロボット?」

倫子は目を細めながら見慣れぬロボットを見つつ、思わず真美に尋ねた。

「あれがヘンなやつのヘンなロボット。『ナイトアーサー』よ。」

真美はだるそうに答えた。

「確かに…。ヘンなロボットだねぇ…。」

倫子はナイトアーサーを見ながら言った。



ナイトアーサーはお金持ちの家に置いてあるような、西洋のフルプレートの甲冑を着たようなボディをしているのだが、見た目がおかしい。


何がおかしいかというとまずはそのバランスだ。

数本の溝が入ったフェイスガードの付いた兜を被った頭と胴体、丸い球状の肩から生えた上腕は普通サイズなのだが、下腕も上腕も太い。

足も同様に膝から下が太く、全体的にアンバランスなボディだ。

しかも背中には大きな鞘だけを斜めに背負っていて、なぜか鞘の中に剣は入っていない。

持っているのは鞘だけで、他には武器も盾も見あたらないのだ。


「なんで鞘だけ持っているの?剣は?忘れてきちゃったのかな?」

倫子は不思議そうに言った。

「あれが普通なのよ。でも、アーサー(へんなの)が出てきたって事は、あたし達の出番はないわね。」

「そうなの?」

「ま、しばらく黙って見ていましょ。」

「うん。わかった。」



「じゃじゃ馬娘が来やがったか~。」

健斗はモニターに映るマジカルブルーを見ながら頭を掻いた。

バイザーで顔は見えないが、嬉しいわけではなさそうだ。

「健斗!いつも通りに頼むぜ!」

貫徹の声が聞こえる。

「はいはい。お任せください会長。頑張りますからねぇ。」

健斗はそう言うと、中央通りを北から南下してくる2機のワーカーに目をやる。

2機とも足元から白煙が立ち上っている。

車輪(コマ)付きか…。」

健斗は面倒くさそうに言葉を吐いた。

ワーカーは中央通りをガーディアンのいる方向に向かって、真っ直ぐ南下してくる。



ナイトアーサーとテヤンデーは交差点の中に入り、迎撃態勢をとった。

軽快に歩くテヤンデーに対して、ナイトアーサーの足取りは重く、ずいぶんとゆっくりと歩いている。

『動きがすごく遅いな…。なんか重そう…。』

倫子はナイトアーサーの動きを見てそう思った。

「リンは西側の交差点の入口に向かって。あたしは東側に向かうから。」

真美はそう言うと、マジカルブルーを交差点の東側へと移動させた。

「うん。わかった。」

倫子もそう答えると、交差点の西側へとマジカルピンクを移動させる。



「ん?こんな所で何してんの?」

倫子は交差点の南東の角にあるビルの屋上を見て驚いた。

もえぎ色の法被を着た5人の男達が、サイリウムを両手に持ち、激しく踊りながらこっちに向かって大声を張りあげている。

『こんなとこにいたら危ないなぁ…。って、この人ら熱血屋(うち)の常連さんやん!こんなとこで何してんの?』


間違いない。

あのもえぎ色の法被は、毎日のように店に入り浸り、「特製すたみな丼」一杯で一日粘る常連さん達だ。

何度か注文を取りに行った事もある。

もえぎ色の法被を着て、おかしな踊りを踊る5人が叫ぶ。

「リンリンちゃん頑張れー!」

「ブルーちゃんサイコー!」

「リンリンちゃんがこっち見たー!」

「うおー!ブルーちゃーん!」

「……。」



「マミちゃん。ビルの屋上に人が…。大丈夫かな?」

倫子は心配そうに言った。

「あぁ。もえぎ色の法被を着た人達でしょ?」

「うん…。」

「放っておいて大丈夫よ。手を振ってあげたら大喜びするわよ。」

「そうなの?」

倫子がそう言うと、マジカルピンクが5人に向かって手を振ると。

ウォォォォォー!

5人は歓声をあげた。

『変わった人らやなぁ…。』

「そろそろ来るわよ。」

「うん!」

この瞬間、倫子の頭はマジカルリンリンへと完全に切り替わった。



ナイトアーサーは交差点の真ん中に立ち、テヤンデーは交差点の南側に立った。

2機のワーカーが交差点に近づいてくる。

「はーい!そこのワーカーさん達。暴走行為は大変危険でーす!速やかに止まってくださーい。」

健斗は明るい声で言うと、ナイトアーサーはゆっくりと両手を前に出し、ワーカーをなだめるかのような動作をしたが、ワーカーはナイトアーサーのゆっくりとした動きをあざ笑うかのように、二手に分かれてナイトアーサーの横をすり抜けようとした。

明らかに自分達の方がスピードはあるのだから、さっさと追い抜いてしまおうと思ったのだろう。

気持ちはわからなくもないが、ずいぶんと露骨な態度である。


ワーカーがナイトアーサーをすり抜けようとした瞬間だった。

「止まれって言ってんだろうが!」

健斗はコクピットの中で叫んだ。

無論、スピーカーは切ってある。


ガン!ガン!

立て続けに大きな音が2回した。

「え!」

倫子は大きく口を開けて驚いた。

ワーカーとすれ違う瞬間、ナイトアーサーが両手を横に広げたのだ。

普通のロボットならこんなことをしたら、弾き飛ばされてしまうか腕がもげるだろう。

ナイトアーサーが硬く重く、さらにパワーもある証だ。

2機のワーカーは胸にラリアットをくらい後ろに倒れかけたが、ナイトアーサーは2機のワーカーを抱え込むように抱きしめた。

とんでもないパワーである。



ナイトアーサーは2機のワーカーから手を離すと、左右のワーカーの腕を掴み

「青いお嬢さん。手伝って頂けませんか?」

と言って、おもむろに1機のワーカーをマジカルブルーのいる方へとぶん投げた。

ぶん投げられたワーカーは、地面を転がるようにマジカルブルーの近くにやってきた。


「あら?あたくしでよろしいのかしら?」

マジカルブルーが澄ました声で言った。

「せっかくお越しいただいたのですから是非。」

「そうですか。では、お気遣いありがたく(たまわ)りますわ。オホホホホ。」

マジカルブルーはそう言うと抜刀し、スパスパとワーカーをバラしていった。

「こちらこそ大変助かります。それでは私も失礼して…。オホホホホ。」

健斗がそう言うと、ナイトアーサーが左手でワーカーの右肩を掴み、おもむろに右手でワーカーの左腕を掴むと。

ブチブチブチ!

ケーブルが切れる音を立てながら、オイルや冷却水を撒き散らしつつ、ワーカーの腕があっさりとむしり取られた。

まるで食べ放題のカニのようだ。


「えぇぇぇ~!なにあれ?」

倫子は思わず声をあげた。

ナイトアーサーはまるで蟹の足を(むし)るかのように、ワーカーの関節をを毟っていく。あまりにも雑だ。

『毟るの?毟っちゃうの?そんなやり方もあるのん?それでええのん?ロボットって、そんなもんなん?』

倫子は呆然としながら、ナイトアーサーを見ていた…。

だんだんと寒くなって参りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ