表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/847

第二章 11話 「発進!新生テヤンデー」

第二章 11話です。


倫子の特訓は続きます。


いつも読んでくれてありがとうございます。


 <(_ _)>

「わわわわわ!」

シミュレーターの操縦桿(レバー)を握ったまま、倫子は声をあげた。

ゴン!

という鈍い音と共にコンテナが激しく揺れ、倫子の操るマジカルが地表に向かって落ちていく。

マジカルがコンテナの天井に頭をぶつけたのだ。

倫子の目の前が暗くなり「失敗!」という文字がバイザーに現れた。

「また失敗だ~。」

倫子は情けない声を出した。

「ドンマイドンマイ!」

真美が倫子に言った。



マジカルの操縦に慣れ始めた倫子の前に最大の難関が現れた。

それが輸送機への着艦である。

地表への降下は難なくこなした倫子だが、着艦となると難易度がグッと上がった。

何しろ体長9.5mのマジカルに対して、コンテナの高さは10mちょっとしかなく、1mも余裕がないのだ。

プリティは体長8mなのでまだ余裕があるが、いくら空中に停止している垂直離着陸機(VTOL)とはいえ、着艦するにはかなりのテクニックが必要になる。

最初は全く成功しなかった倫子も、今では1/2の確率で成功するようになったが、それでは話にならない。

マジカルが歩いてハゲタカ急便に戻るわけにはいかないのだ。



とはいえ、1mも余裕もないスペースに着艦をしろと言うのだから、そもそもの話に無茶がある。

試しに倫子が機体設定をプリティに変えてみると100%着艦に成功したのだが、これがいけなかった。

倫子の持つマジカルのサイズ感がズレてしまったのである。

『いらんことしたなぁ…。』

これが今の倫子の素直な感想だ。


1/2まで上がった成功率が1/4にまで落ちたのだから、倫子がそう思うのも仕方がない。

今の倫子の体は楽な方へ楽な方へと行こうとする。

その自分の感覚さえ疎ましくさえ思える。

『忘れよう!忘れなあかん!』

倫子は強くそう思ったが、一度甘やかされた体と感覚がなかなか元に戻ろうとはしないことを、真美は充分に理解している。



マジカルの発進方法は他にもあるのだが、輸送機からの発進は必須(マスト)であり、必ず習得しなければならない技術である。

だからこそ真美は、倫子に「ドンマイ!」しか言わない。

今の真美に出来る事は「頑張れ!」と言って倫子をけしかけるのではなく、「ドンマイ!」と言って倫子の背中を押すことなのだ。

「ありがとうマミちゃん。感覚が掴めるまで頑張るね。」

倫子はそう言って操縦桿(レバー)を強く握った。

「イメージよイメージ。成功するイメージをわすれないで。」

「うん!」

倫子は力強く応えた。




その頃、商店街の基地(ベース)では商店街会長、山本貫徹(やまもとかんてつ)がテヤンデーのコクピットに座り、今か今かと出動の時を待っていた。

ここしばらくの間の商店街は平和そのものであり、夜中に酔っ払い運転が2件あっただけだ。

それはそれで大変ありがたい話なのだが、何せテヤンデーは生まれ変わったばかりである。

貫徹がテヤンデーに乗りたい気持ちがわからなくはない。

誰だって買ったばかりの新車であれば、届いたその日に乗るだろう。

「とりあえずそこに置いておいて~。」とはならないはずだ。

だが貫徹よ。ガーディアンは車ではない。

有事の際に活動するのがガーディアンである。

気持ちはわかるが、有事が起こる事を望むのはいかがなものか?




「まだ来ねぇなぁ…。早く来ねぇかなぁ…。」

貫徹はそわそわとしている。

「暇だなぁ…ハチ。」

「へいおやびん!」

「早く来ねぇなぁ…。」

「ガッテンだ!おやびん!」

貫徹とハチの不毛な会話が続く。

ハチとしてもさすがに返答に困ったのかもしれない。

暇なら本業に身を入れろと思うのだがどうだろうか。



だがしかーし!

その場には出動を心待ちにする、もう一人の不届き者がいた。

そう。副会長の石田丸夫である。

「楽しみだなぁ~。」

副会長はニヤニヤと笑いながら言った。

その目に狂気をはらみながら…。




その時!テヤンデーとビッグとんとんのコクピットに通信が入った。

「産業スパイとおぼしきワーカーが1機、青葉中央通りを南下中。担当地区のガーディアンは出動準備をお願いします。」

貫徹 「来やがったぜ!」

丸夫 「キター!」

会長と副会長は笑顔で歓喜の声をあげた。

青葉シティロード商店街はこのままでいいのだろうか?かなり不安を感じる。

「行くぜ副会長!」

「会長行きましょう!」

テヤンデーとビッグとんとんは基地(ベース)のシャッターの前へと急いだ。

テヤンデーは右手に刺叉を。ビッグとんとんは右手にフライパンを持っている。



格納庫のシャッターが開き、新生テヤンデーは通りに出た。

初めてのお披露目である。

「お!テヤンデーが新しくなったな!」

モニターを見つめる観客の一人が言った。

「ビッグとんとんは、包丁からフライパンになっているな!」

別の観客も驚きの声をあげた。



「お静さんも大変だねぇ。」

年配の女性が心配そうに言った。

「本当ねぇ。貫徹さんの道楽に付き合わされちゃって…。」

連れの同年代の女性も気の毒そうに言った。

「今日はお肉をやめて、お刺身にでもしましょうかねぇ。」

「うちは煮付けにでもしますか。お静さんの愚痴の一つも聞いてあげなきゃね。」

「そうね。終わったら山貫さんに行きましょう。」

 二人はそう言って笑った。




「そこのロボット!止まりなさいブー!」 

『止まるなよ…。止まるなよ…。』

副会長は強く心に念じながら言った。

「大人しくしやがれこの野郎!」

テヤンデーは手にした刺叉でワーカーを指しながら言った。

『大人しくすんじゃねぇぞこの野郎…。』

貫徹も強く心で念じる。

どちらもダメな大人だ。



今回のワーカーは普通の人型ロボットだが、右手がドリル、左手が大きなシャベルになっているので、おそらく掘削作業用のワーカーだろう。

攻撃力は高いが、今の会長と副会長(浮かれたバカ二人)に敵などいない。

そんな強敵ですら会長と副会長(浮かれたバカ二人)の目には、よだれがこぼれ落ちそうな程の御馳走に見えているのだろう。



ワーカーは当然の如く、ドリルを前に突き出しテヤンデーとビッグとんとんに向かってやってくる。

ドリルは多分、「やっちゃうぞ!」という脅しであろう。

貫徹 「かかった!」

丸夫 「キター!」

会長と副会長(浮かれたバカ二人)は思わず本音を口にした。

この二人はもうダメだ…。



ビッグとんとんは、フライパンを高く振りかざしながら急に動きだした。

「お!やる気じゃねぇか副会長。」

貫徹はそう言いながら刺叉を構えた。


「くらえ!『ボコボコにしてやんよアターック!』」

副会長の雄叫びと共に、ビッグとんとんがフライパンを振り下ろそうとしたその時!

ワーカーの左手のシャベルが、ビッグとんとんの頭に伸びてきたかと思うと、シャベルがとんとんの頭を押さえると、とんとんの放ったフライパンの一撃はスカッ!という音が聞こえそうなほど見事な空振りを見せた。



「あれ?あれ?あれぇ~?」

素っ頓狂な声で焦る副会長。

ビッグとんとんの頭を押さえるワーカー。

フライパンを上げ下げし続けるとんとん。

呆然とその光景を見ているテヤンデー。

静まり返るモニターの前の観客達。



ワハハハハハハハ!

しばらくの間を置いて、モニター前の観客達が爆笑の渦にまみれた。

「と!届いてねぇ!」

腹を抱えて笑う観客の一人が叫ぶ。

さらに沸く観客達。

頭を押さえられたビッグとんとんの『ボコボコにしてやんよアタック』はワーカーに全く届かない。



「ここは俺に任せろ!」

テヤンデーはそう言うと、ワーカーの左足首を刺叉で強打し、ワーカーを転ばせた。

ドン!

という音と共に、ワーカーは地面に倒れた。

テヤンデーはすかさず刺叉でワーカーのボディを押さえて叫んだ。

「今だ副会長!足を潰せ!」

「はい…。」

副会長は半泣きになりながらワーカーの足に近づき、フライパンでペシペシと叩き始めた。

徐々にへこんでいくワーカーの足を見ながら、会長はホッと胸をなで下ろした。

これで逃げられる事はなくなった。




するとワーカーのコクピットハッチが開き、慌てて男が飛び出てきた。

「逃がすかばかたれ。ハチ!取る取るキャッチャーだ!」

「ガッテンだ!おやびん!」

ハチがそう言うと、テヤンデーは刺叉をワーカーから外し左手を男に向けた。

その動きは素早く無駄がない。


パシュ!

テヤンデーの左の袖口からネットが射出されると、逃げる男の上に覆い被さった。

「うわー!」

男はネットに絡み取られ、叫び声をあげて地面に転がった。


「新しいテヤンデーはやるなぁ!」

モニター前の観客達はテヤンデーに盛大な拍手を送った。

「いい!新しいテヤンデーはいい!」

そう言って貫徹は一人悦に入っているが、副会長は半べそをかきながら、フライパンでワーカーの足を何度も何度も叩いていた。

それはまるで、調理場で肉を叩く下ごしらえ中のコックさんのように見える。



  

犯人が連行され、ゾンビさん達がひと仕事を終えたあと、基地(ベース)に戻った貫徹は満足げにテヤンデーのコクピットパネルを撫でていた。

「すげぇ活躍だったぜテヤンデー。まるで全盛期の頃のようだ…。」

貫徹は5年前までのテヤンデーを思い出していた。

あの頃のテヤンデーはまさに無敵だった。

あらゆる相手を手玉にとり、圧勝の日々であった。

テヤンデーは格安で手に入れたハンドメイドロボットとは思えぬ、大活躍を見せてくれたのだ。



生まれ変わったテヤンデーのおかげで、商店街のガーディアンチームも強くなり、マジカルも今よりも動きやすくなるはずだ。

そう思うと貫徹はもの凄く嬉しくなったが、しかしもう一人の男は違った…。

まるで深い海の底にでも沈み込んでしまったかのように、その大きくて丸い体を小さく丸めながら、ビッグとんとんのコクピットにちょこんと座っている。

「うっ…ううっ…ううっ……。」

むせび泣く丸夫の目からは、止め処なく涙が溢れていた。

もう少しです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ