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第二章 8話 「ハゲタカ急便の姉妹」

第二章 8話です。


新キャラ登場です。


【更新予定】

更新時刻の変更をお知らせします。

基本的には12:00更新ですが、場合によっては22:00の更新になります。

よろしくお願いします。



いつも読んでくれてありがとうございます。


 m(._.)m

「はっはっはっはっ!それでマジカルになったんだ。初めてのパターンだね!」

事務所のソファーに座るノン子は、湯呑み片手に大笑いしている。

「浮かれちゃってつい…。」

倫子は俯きながら小さな声で言った。

「ついマジカルになっちゃったんだ。」

ノン子はそう言ってお茶を飲んだ。



「リンがマジカルをやってくれると、かなり助かるんだけどね。」

真美はおせんべいをかじりながらノン子に言った。

「でもこのパターンは稀なのだ。ウルトラレアなのだ。」

未祐もおせんべいをかじりながら言う。

「マジカルはノン子さんのところの飛行機から発進するんですよね?」

「そうよ。うちは運送屋なんだけど見ての通りの貧乏でね。取引先も中小企業や零細企業ばっかりで、ちっとも儲かりゃしない。マジカルは一番のお得意様だから大事にするよ~。」

ノン子はそう言ってニッコリと笑った。



「それにしてもハゲタカ急便さんて、変わった場所にあるんですね。」 

倫子はそう言うが、一番変わっているのはハゲタカ急便という名前ではないだろうか?

「うちの周りは全部ロボット関連の小さな会社だからねぇ。おかげで笑っちゃうくらい儲かんないのよ。」

「ここには滑走路もないんですね。」

「うちの『ハゲタカちゃん』は垂直離着陸機(VTOL)だから滑走路は要らないのよ。あとは全部ドローンとトラックだし。」

「なぜハゲタカ急便っていう名前なんですか?」

「あれよあれ。あのハゲ。」

ノン子は壁に掛かっている写真を指さした。

写真にはちょび髭のおっさんが写っている。

眼光が鋭く精悍な顔つきではあるが、頭の方は見事に禿げ上がっている。



「あれがうちの父ちゃん。自衛隊で輸送機のパイロットをしてたんだけどさ、8年前に自衛隊を辞めちゃってね。退職金を全部つぎ込んでこの店を始めちゃったんだよね。」

「へぇ~。」

「父ちゃんの自衛隊時代のあだ名がハゲタカ。そう言われちゃぐぅの音も出ないよね。いくら娘でもあだ名を付けた人のセンスを褒めるしかないわ。」

ノン子はそう言って大笑いしている。

「そのハゲがさ、三年前にどっか行っちゃってね~。それからがも~う大変!」

ノン子よ。タカはどこに行ったんだタカは。

ハゲはあだ名ではない、ただの悪口だ。



「お父さんの事も心配ですよね…。」

倫子は心配そうに言ったが、ノン子は笑顔で言い放った。

「べっつにぃ~!あのハゲのおかげで都内でOLやってた私が島に来ることになっちゃったのよ。ハゲが帰ってきたら、お礼に正拳三段突きをお見舞いしてやるわ。」

ノン子がそう言った瞬間

ピシッ!という音がした。

ノン子が手に持つ湯呑みにヒビが入ったのだ。

倫子達は思わず、大きく後ろに仰け反った。


「あのハゲのおかげで、私の人生設計は滅茶苦茶なのよ。結婚を前提に付き合ってた彼氏には振られるわ、運送屋のハードな仕事で全身に筋肉は付くわ、おじさんばっかで良い男との出会いはないわでさ~。正拳三段突き程度ならいいと思わない?きっと神様だって笑って許してくれると思うの。殺さなければね…。生かしておく自信はないけどね…。」

ノン子は笑顔でそう言ったが、「自信はないけどね…。」の時は目つきが変わり、恨みのこもった声なのが怖かった。

倫子達は無言のまま何度も何度も頷いた。

『運送業も無しやな…。』

倫子がそう思ったのは秘密だ。



「島に来たのはいいんだけどね。OLやってた素人にいきなり運送屋の社長が務まると思う?」

「た、大変だったでしょうね…。」

倫子の声は上ずっている。

「大変も何も右も左もわかんなかったわ。しかもあのハゲ。借金こそしていなかったけど、代わりにとんでもないことをしてくれてたのよ!」

「き、聞いてもいいです…か?」

倫子は恐る恐るノン子に尋ねた。

もしも犯罪絡みだったら怖い話だ。


「全然おっけーよ!聞いてよ!あのハゲ、超破格値で仕事を受けてやがったの!相場の半分よ半分。信じられる?バーゲンじゃないっての。」

セーフ!犯罪絡みではなかった。

倫子達はほっとした。


「金銭的にもどうにもこうにもなんなくなってさぁ、お客さんの社長に値段交渉したのよ。ちょっと値段を上げてもいいかって。」

「それは仕方がないですよね…。」

倫子は悲しそうだ。

「そしたらその社長さん。ものすっごく悲しそうな顔をして一言も喋んないのよ。堪えきれなくなって急いで話題を変えたわ。」

「えぇー!」

倫子は驚きの声をあげた。

「それでね。会社がいよいよ立ち行かなくなっちゃって、妹と二人で頭とお腹を抱えていたら、熱血屋の社長さんがここに来てくれたの。」

「社長がここに来たの?」

真美は驚いている。

熱血屋(うち)と契約しないかって言ってくれたの。」

「社長もなかなかやるのだ。」

未祐が一言呟いた。


「で、契約書を読んだらお店の食材の運搬を全部って書いてあったんだけど、それがとんでもない量だったの。当時うちにはハゲタカちゃんしかなかったからね。とても裁ける量じゃ無かったのよ。」

倫子 「え?」

真美 「え?」

未祐 「え?」

3人は同時に声をあげた。

何気に仲が良い。


「そしたら社長さんが『必要なものはこっちで用意する。』って言って、表のドローンを用意してくれたの。で、契約書もろくに読まないでサインしてハンコを押したらね。最後の方にマジカルの事が書いてあったのよ。こーんなにちっちゃな、ちーっちゃな文字で。」

ノン子はそういいながら、右手の親指と人差し指で小さな輪っかを作った。指と指の隙間は極めて狭い。

「それって詐欺じゃないですか!」

倫子がそう言うと真美が言った。

「なんで契約書をちゃんと読まなかったの!」

「社長もなかなかのやり手なのだ。」

未祐は感心している。

3人の価値観の違いが、明らかに出ているようだ。


「契約金の額が良くてねぇ。恥ずかしい話だけど、妹と二人でやり始めてから借金が出来ちゃってね。後で調べてみたら、油代なんて倍以上ぼられてたからね。素人だと足元見られてかなりふっかけられてたのよ。社長さんが信用の出来る会社を紹介してくれて、取引先を変えて社長が事業内容を確認してくれたら、経費が半分以下になって驚いたわ。契約書を読まなかったのはこっちのミス。社長さんにも注意されたわ。人間追い詰められるとダメね。」

「あたしも気をつけるわ!」

真美は真顔で言った。


「という事で、熱血屋の社長さんは私達の命の恩人なのよ。この土地の賃料もサービスしてもらってるしね。マジカルの事は、私も妹も絶対に喋らないから安心して。」

「ここって熱血屋の土地なんですか?」

倫子はびっくりしている。

「正確には『バーニングハート』っていう会社の土地なの。」

「バーニングハート?」

倫子は首を傾げる。 

それにしても変な名前の会社だ。



「熱血屋はバーニングハートの関連企業なのよ。熱血屋の社長がバーニングハートの社長なの。」

真美がそう言うて未祐が続いた。

「知名度は低いけどそこそこの会社なのだ。いろんな事業を多角経営しているのだ。」

「そうなんだ…。」

「うちのハゲがバーニングハートさんから借りてたみたいなの。通帳を見るまで全然知らなかったけど。」

ノン子がそう言うと事務所のドアが開いた。



「ただいま姉ちゃん!お茶ちょうだい!あれ?お客さん?」

頭にキャップを逆さまに被り、インカムを付けて黄色い作業着を着た若い女の子は、事務所に入って早々に言った。

「あれが妹のめぐみ。」

ノン子に紹介されためぐみは、倫子を見て言った。

「武内めぐみで~す。よろしく~!」

「神楽坂倫子です。よろしくお願いします。」

倫子はソファーから立ち上がり頭を下げた。

「倫子ちゃんは新しいマジカルメンバーなのよ。」

「へぇ~。マジカルも楽になって良かったね。うちも仕事が増えて儲かるわ。」

めぐみはどうやら、とても正直な娘さんのようだ。


「ねぇメグ。ハゲが帰ってきたらどうする?」

「一本背負いから寝技に持ち込んで、三角絞めでオトす。」

めぐみはさっきとは打って変わり、冷たい目つきと冷酷な声でそう言い放った。

倫子達は背中に冷たいものを感じた。


「あなた達も1ヶ月以上、水を飲みながらパンの耳をかじったら私達の気持ちがわかるわ。」

めぐみは笑顔で言った。

「あれは効いたねー。痩せた痩せた。契約金が入って二人で熱血屋さんの焼き肉食べ放題に行ってさ。山盛りのご飯片手に食べた食べた。あれだけ食べたのは生まれて初めてよ。」

ノン子はそう言って笑う。

「さんざん食べた後、二人でトイレに駆け込んでね~。その時姉ちゃんがなんて言ったと思う?」

「さ、さぁ?」

倫子達は首を傾げた。

頭によぎった事を口にする勇気は持ち合わせてない。


「ぽつりと一言。『もったいないね…。』だって。笑っちゃうでしょ?」

めぐみはそう言って笑うが、倫子達は愛想笑いを浮かべるだけだ。腹を抱えて笑えるはずなどない。

「メグだって『そうだね…。』って言ったよね?」

アハハハハ!

そう言ってノン子とメグは笑いだした。

なんとも明るく仲の良い姉妹である。



「私は倫子ちゃんがマジカルになってくれて嬉しいわ。頑張ってこの島を守ってね。」

ノン子は倫子にそう言った。

「この島の人達はみんな良い人なの。他所の人達から見れば、危なくて住みにくい島かもしれないけれど、みんなこの島が好きだからね。」

めぐみもそう言って笑う。

「ま、ハゲが戻ってきたら、きっちりと落とし前をつけてもらうけどね。」

ノン子はそう言って不適な笑みを浮かべた。

「当然よね。今から再会が楽しみだわ~。再会したら泣いちゃうかも。」

不適な笑みを浮かべながらめぐみは言った。

3人はノン子とめぐみの雰囲気にのまれ、愛想笑いしか出来なかった。



「ノン子さんとめぐみさんて仲が良いんですね。」

帰りのドローンの中で倫子が言った。

「喧嘩するとすごいけどね。ノン子さんは空手の有段者だし、めぐみさんは柔道の有段者だしね。」

ドローンを操縦しながら真美が言う。

「そうなんですか!」

姉妹喧嘩で空手と柔道の異種格闘技戦を繰り広げるというのか?少し見てみたい気もするが…。



「ノン子さんもめぐみさんも、お父さんの事が大好きなんだね。」

「そうなのか?」

未祐が倫子の言葉を聞き不思議そうに言った。

「お父さんの事が好きじゃないと、あれだけの苦労をしてまで会社を守ろうとはしないんじゃないかな?お父さんの居場所を守りたいから会社を続けているんじゃないかな?本当に嫌なら会社なんて辞めちゃえばいいのに。」

「言われてみればそうかもなのだ。」

未祐も納得したようだ。

「ま、愛情は人それぞれだしね。三段突きと三角絞めも、愛情表現の一つなのかもね…。」

真美は神妙な顔で言った。

なぜだろう。

倫子は真美の横顔から目が離せなかった。

なかなか強烈なキャラです。


二人の独特な世界観が伝わればいいな。




【更新予定】

更新時刻の変更をお知らせします。

基本的には12:00更新ですが、場合によっては22:00の更新になります。

よろしくお願いします。

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