第二章 6話 「やる?やらない?」
第二章 6話です。
話は急展開を迎えました。
はてさて、どうなることでしょう?
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
「マジカルをやるってどういう意味なのかな?」
倫子は眉をひそめながら真美に尋ねた。
「どういう意味って?マジカルに乗らないかって意味よ?」
何を言っているの?とでも言いたそうな顔で真美は言ったが、それを言いたいのは倫子のほうだろう。
「今日から君もマジカルなのだ。」
未祐は左手を腰に当て、ビシッと倫子を指さしながら言った。
「いやいやいやいやいや!おかしいおかしい!」
倫子は両手を前に伸ばし、ヒラヒラと振った。
真美 「いやなの?」
未祐 「いやなのか?」
真美と未祐が同時に言った。
「嫌じゃないけどおかしいでしょ?」
「おかしい?」
真美が首をひねる。
「何が面白いのだ?笑うか?」
未祐は淡々と言った。
「そっちのおかしいじゃないよ。いきなりそんなこと言われたら、普通はビックリするでしょ?」
真美 「しなかったわ。」
未祐 「しなかったのだ。」
真美と未祐は声を揃えた。
「ごめんごめん!ちゃんと1から説明してくれないかな?さっきからびっくりの連続でもう、何がなんだかわけがわかんないよ…。」
倫子は俯き加減になり、右手で額を押さえている。
「それじゃあ続きはリビングで話をしましょ。」
真美がそう言うと、3人はリビングへと向かった。
リビングに着くと真美が紅茶を入れてくれた。
真美に紅茶を注いでいると、未祐が桜子がおやつに作ってくれた生クリームとフルーツたっぷりの「シフォンケーキ」を持って来た。
「少しは落ち着いた?」
紅茶を注いぎ終えた真美が倫子に尋ねた。
「大分落ち着いたよ。」
「シフォンケーキも食べるのだ。おいしいのだ。」
未祐がシフォンケーキを倫子の前に置いた。
「ミユちゃんありがとう。ねぇマミちゃん。マジカルって一体何なの?」
「一言で言うと…。」
真美は視線を宙に移す。
「一言で言うと?」
倫子が真剣な声で聞き直した。
「熱血屋のガーディアン?」
真美が未祐の顔を見ながら尋ねた。
「変態達が作ったロボットなのだ。」
「どゆこと?」
「まとめると、マジカルは変態達が作った熱血屋のガーディアンね。」
「マジカルは全部で6機いるのだ。レッド、ブルー、イエロー、グリーン、パープル。あと1機はまだ決まってないのだ。」
「私はマジカルブルーよ。」
真美の言葉を聞き倫子は納得出来た。
倫子は真美がすごくブルーっぽい気がしたのだ。
「私はプリティなのだ。」
「え?」
未祐の発言を聞き、倫子は目玉が飛び出るほど驚いた。
感情に乏しい未祐がキャピキャピのプリティだと言われても腑に落ちないし、落ちるはずがない。
未祐はソファーから立ち上がると倫子に向かって言った。
「はーい!お兄ちゃん達!元気だった~?みんなの週末の妹。マジカルプリティだよ!」
そう言い終えた未祐は真顔になり、黙ってソファーに座った。
「プリティちゃんだ…。」
倫子は思わず声が出た。
プリティちゃんの可愛い声に間違いない!
「マジカルは熱血屋のアルバイトなのよ。」
真美はあっけらかんと言った。
「ア!アルバイト?マジカルがアルバイト?」
倫子は目玉が飛び出そうになった。
倫子の中でのマジカルのイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
真美 「ちなみに日給制で金額は熱血屋の倍よ倍。ミッションもあってクリアしたら特別ボーナスも出るの。」
「私は今は現物支給なのだ。高校生になったらお金が貰えるのだ。」
未祐はそう言ったが熱血屋は労働基準法を遵守しているという事だろうか?そこに意味があるのだろうか?
「日給制!いやいやいやいや。気になってるのは時給じゃないし。て言うか、島の平和を守るアイドルは熱血屋のアルバイトってこと?」
真美 「そうよ。」
未祐 「そうなのだ。」
「うそ!うそ!うそ!うそ!うそ!そんな話聞いた事ない!アイドルがアルバイト?ないないないないない!」
真美 「本当よ。」
未祐 「本当なのだ。」
倫子 「ちょっと待って!それじゃあグリーンはひょっとして…。」
真美 「サトミンよ。」
「やっぱりそうなるよね…。」
倫子はがっくりと頭を垂れた。
「それじゃあイエローは…。」
倫子は頭を垂れたまま言った。
未祐 「マナミちゃん。」
「やっぱりそうくるよね~。」
倫子はため息混じりに言った。
「レッドは桜子さんだよね!そうだよね!」
倫子は急に真美の顔を睨みつけるように言った。
真美はにっこりと笑った。
『お願い!桜子さんと言って!桜子さんでいいじゃない!桜子さんにしようよ!』
倫子は祈るように思った。
いや、それは切なる願いそのものだった。
「レッドはお姉ちゃんよ。」
真美が笑顔で言った。
『聞きたくなかったーー!女神様が汚されたーー!』
倫子は心の中で、ムンクの叫びのように叫んだ。
真美 「乙女座のこのフロアでマジカルに乗らないのはリンと桜子さんだけよ。」
未祐 「桜子ママは私達がマジカルだって知ってるのだ。」
真美 「熱血屋の総括部長兼、店長代理だもんね。」
未祐 「乙女座の寮母さんもやってるのだ。」
なんという激務なのだろう。
よく考えてみれば、桜子は凄い女性なのだなと倫子は改めて思った。
「どうして私をマジカルに誘うの?」
倫子は素直な疑問を口にした。
真美 「ねぇリン。本当に守りたい秘密ってね、守るものじゃないの。共有するものなのよ。」
「へ?」
倫子は真美の言っている事が理解出来なかった。
「共有?」
「このフロアーでマジカルの正体を知らないのはリンちゃんだけなのだ。それならリンちゃんにも秘密を知ってもらった方が、秘密を守り続けるよりもずっと楽なのだ。」
確かに未祐の説明には説得力があった。
「遅かれ早かれ、リンにはマジカルの秘密を教えるつもりだったの。でもシミュレーターの成績を見て、これならリンもマジカルをやってみたらどうかなって思ったのよ。」
真美はそう言って笑った。
未祐 「それにこのままリンちゃんに隠し続けると、サトミンが持たないのだ。」
「ミユちゃんそれってどういう意味?」
「サトミンはボクっ娘。でもグリーンだとばれないように、人前では出来るだけ「わたし」って言うのだ。乙女座の中だけは気兼ねなく「ボク」って言いたいけど、リンちゃんにばれないように意識をして「わたし」って言ってるのだ。それがサトミンのストレスになってきてるのだ。」
どうやら倫子は、知らないうちにサトミンの胃を攻撃していたようだ。
「そうだったんだ…。」
倫子は申し訳ない気持ちになってきた。
「別に強制しているわけじゃないのよ?嫌なら嫌でいいの。たださっきも話した通り、マジカルも人手不足なのは確かなの。マジカルになってくれると助かるのも事実よ。人手不足だからといって、店先にアルバイト募集の張り紙を出すわけにもいかないでしょ?」
確かに真美の言うとおりだろう。
「私は学校があるから平日は出られないのだ。だからリンちゃんがマジカルになってくれると助かるのだ。」
なるほど。だから週末の妹なのだなと倫子は思った。
「でもシミュレーターと実際の操縦は違うでしょ?」
倫子は不安そうに言った。
真美 「それじゃあ実際に乗ってみる?」
未祐 「乗ってみるのだ。」
倫子 「え?」
真美 「百聞は一見にしかずでしょ?ケーキを食べ終わったら、マジカルに乗りに行きましょ。」
「それがいいのだ。」
未祐も賛同した。
「はぁ…。」
倫子は気の抜けた返事をした。
10分後、3人は青葉島上空を4人乗りのドローンで移動していた。運転は真美である。
倫子と真美は大学にドローンで通学している。
熱血屋の屋上がドローンの駐挺場になっており、出前用のドローンと共に置いてあるのだ。
「もうすぐ着くからね。」
真美がそう言うと、未祐が地表を指さした。
「あそこ。」
未祐の指さす先には大きな敷地があり、周りを取り囲むように数多くの小さな工場が建ち並んでいる。
『変わった所にあるねんなぁ…。』
倫子はそう思った。
敷地には倉庫らしき建物が2棟並んで建っており、少し離れた場所に大きな格納庫らしき建物が一棟見える。
他には敷地内に大きなコンテナがいくつかあり、コンテナをお腹に載せたかなり大きな輸送機が1機と、大きめのドローンが3機置いてあった。
真美はドローンを上手に操り、格納庫の前に着陸した。
「さ、行くわよ。」
真美はそう言うと、ドローンから降りて格納庫の中に入っていった。倫子と未祐も真美の後に続く。
格納庫に入った途端、がたいが良くてつなぎを着た若い女性が真美に声をかけた。
ショートカットでハゲタカのマークが入ったキャップを被っている。
「いらっしゃい真美ちゃん未祐ちゃん。その子は新人さん?」
「こんにちはノン子さん。この人はここの社長の武内のり子さん。みんなノン子さんて呼んでるわ。」
「はじめまして。神楽坂倫子です。」
倫子は頭を下げた。
「ようこそ貧乏運送屋へ。私は「ハゲタカ急便」の社長をやっている武内のり子。よろしくね!」
そう言うとノン子は倫子に手を伸ばした。
倫子も手を伸ばしノン子と握手をかわす。
がっしりとした力強い手だ。
真美 「ノン子さん。地下に行ってくるね。」
ノン子 「どうぞどうぞ。後でお茶でも出すよ。」
「ありがとう。それじゃあ行こうか。」
真美はそう言うと、倉庫にある事務所の中に入っていった。
事務所の中にはカウンターがあり、その奥に事務机と接客用の古いソファーセットが並び、奥には大きなカーテンがかかっている。
真美は事務所の奥まで行くとカーテンを開き、目の前に並んだ3つのロッカーの真ん中の前に立つと鍵を開けた。
大きなロッカーの中身は空っぽで、右の壁にカードリーダーがあり、真美はカードリーダーにカードを通すと、ロッカーの壁が中央から左右に開いた。
『秘密の扉や!忍者みたいや!』
倫子はワクワクしている。
「入って。」
真美に促され、倫子と未祐は奥へと進んだ。
エレベーターの中は入り口よりかなり広いが、大きなエレベーターの入口の前に、3つのロッカーを置いているのだろう。
「この下は本来、地下鉄の整備工場になるはずだったの。」
エレベーターのボタンを操作しながら真美が言った。
「今はマジカルの整備工場なのだ。」
未祐はそう言った。
エレベーターが動きだしたがそれにしても長い。
降り始めてからかなり経つがまだ着かないので、目的地はかなり深い所にあるようだ。
真美 「ノン子さんはマジカルの事を知ってるけど、絶対に喋ったりはしないから安心して。」
未祐 「大丈夫なのだ。ノン子さんは仲間なのだ。」
どうやらノン子さんは、信用の置ける人物のようだ。
エレベーターの扉が音もなく開き、目の前には広大な整備工場が広がった。
煌々と照らされた広大な工場内には「コンドル航空便」と書かれた大きなコンテナがあり、壁際のハンガーには6機のマジカルがずらりと並んでいる。
「うわぁ~!」
興奮した倫子は思わず駆けだした。
倫子の視界に映るマジカルの姿が、だんだんと大きくなっていく。
不意に倫子は急に立ち止まると、目の前の白いマジカルを見上げた。
「マジカルって髪の毛があるんだ…。」
倫子が見上げる白いマジカルは、とんがり帽子を被っておらず、頭には金色の髪の毛のようなものが肩まで無数に伸びている。
白いマジカルは外装も脱いでおり、滑らかな曲線のボディが美しく、ギリシャ彫刻のような整った顔も美しいのだが、瞳を隠すようにサングラスのようなバイザーがかかっていて、外装を脱いだ白いマジカルのボディは女性らしい流れるような滑らかなラインをしており、関節はまるで人形のような球体関節になっている。
『マジカルって、すごく女性的なロボットなんだ…。』
倫子は白いマジカルを見上げながら思った、
「あれは電子毛ってんだ。」
突然、倫子の後ろから男の声が聞こえた。
最近、寒くてたまりません。
よる年波には勝てない。




