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第二章  5話  「マジカルの役目」

第二章 5話です。


いつも読んでくれてありがとうございます。


 m(_ _)m

「そうなんだ…。でもマジカルはなんで現れたんだろう?」

倫子は不思議そうに尋ねた。

「簡単に言えばガーディアン不足が原因ね。でもマジカルがガーディアンに参入した事で、商店街同士のいさかいに変化が現れたの。」

「変化?」

「マジカルレッド、ブルー、イエローの3機が島に現れた時、マジカルレッドが島中に向かって宣言したの。『私達の守護領域(ガードテリトリー)は、この島全体です。』って。」

「島全体!」

倫子の目玉が飛び出しそうになった。

「そ。マジカルの守護領域(ガードテリトリー)青葉(この)島全体なの。」

「さすがに島全体は広すぎない?」

今の青葉島はそれなりに広大な島である。

何しろロボット企業の密集する巨大な工業地帯もあれば、自衛隊の駐屯地まであるのだ。

商店街を7機のロボットで守っているのに、5機のマジカルで巨大な島全体を守れるのだろうか。



真美 「いくら島全体が守護領域(ガードテリトリー)とはいえ、マジカルは全ての事件に手を出しているわけじゃないの。街のガーディアンチームでは手に余りそうな時に現れるのよ。」

倫子 「そうなの?」

真美 「ここ3年の間にロボットの性能は上がってきているし、商店街のロボットは老朽化してきているでしょ?それに地域柄、犯罪件数はかなり多い。となれば当然、手は回らなくなるでじゃない?」

倫子 「確かに…。」

真美 「マジカルの出動回数が増えるのは当然だし、この商店街に頻繁に出動するのも仕方がないのよ。」

倫子 「複雑なんだねぇ。」

真美 「青葉中央区の隣は中小企業の工業地帯になっているからね。早い段階で止めないと被害が増えるかもしれないでしょ?だからみんな必死なのよ。」

倫子 「そうなんだ。でもマジカルって神出鬼没で正体不明なんでしょう?何でだろう?」

真美 「正体がバレたマジカルに、普通の生活が出来ると思う?」

倫子 「あ!そうか!」

真美 「ヘタな芸能人より大変な騒ぎになるわよ?それに下手に騒いでマジカルがいなくなったら、島が大変なことになっちゃうでしょ?」

倫子 「そうか!そうだよね!」

真美 「だから島の人達はマジカルの正体を探さないの。そっとしておいてくれているのよ。お互いのためにね。」

「なるほどね~。」

真美の説明を聞き倫子はすごく納得が出来た。



マジカルは島の人達にとってヒーロー。

いや、ヒロインなのである。

そのヒロインが正体を明かし、島を歩いていたらどうなるだろう?

周りにいる人達は喜んでヒロインに群がるだろうし、ヒロインはその人達への対応に追われるだろう。 

しかしそれはいつまで続くのだろうか?

互いのテンションはいつまで持つのだろうか?

結果的には、お互いに迷惑の掛け合いをして終わるのではないだろうか?

それならば正体不明のヒロインのほうが互いに必要以上に干渉しないで済むし、穏便で平和に過ごせるのではないだろうか?

そう思えば正体など知らないほうが良いだろう。


 

真美 「それにね。マジカルが来てから商店街同士の関係がスムーズになったのよ。」

倫子 「スムーズに?」

真美 「なぜそうなったのかはわからないんだけどね。マジカルが間に入ることによって、商店街同士の険悪な関係が随分とマシになったの。」

「凄いね!マミちゃん詳しいんだね!」

倫子は驚いた。

「この島の人ならみんな知ってる話よ?」

真美は平然と答えた。

「そうなんだ!マジカルって本当に凄いね!」

倫子は瞳をキラキラさせている。

「そ、そうかな?そういえば、マジカルには親衛隊もいるしね。」

真美はまんざらでもなさそうに言った。 

「親衛隊!アイドルみたい!」

倫子はキラキラと目を輝かせながら言った。

「そ、そうね。」

真美は倫子のテンションの高さに驚きたじろいでいる。



親衛隊。

なんという素敵な響きだろう。

アイドルにしか結成されない親衛隊。

力いっぱい声を張り上げ、応援をしてくれる親衛隊。

そう!親衛隊はアイドルの証。

親衛隊というだけで、聖地にいたファン達とは違う気がするのはなぜだろう?

まさに言葉の魔法だ。



「プレゼントをいっぱい貰ったりしてるのかな?サインなんか求められちゃったりして?歌は歌わないのかな?」

いかん!倫子は我を忘れたようだ。

「マ、マジカルはロボットよ?リン。」

真美はたじろぎながら言った。

「そうか…。そうよね…。」

倫子のテンションが一気に下がる。

マジカルは人ではない。

ロボットなのだ。

しかもパイロットが姿を現さない以上、女の子がマジカルに乗っているという保障はどこにもない。



今の時代、声などいくらでも変えられるのだから、パイロットが髭面で胸毛モジャモジャのおっさんという線も無いとは言い切れない…。

そうであっても困るし、想像すらしたくもないが…。



「そうだね…。」 

倫子のテンションは、株主なら真っ青になるほど急暴落した。

この時の倫子の頭の中には前に熱血屋(お店)で見た、髭面で胸毛モジャモジャのおっさんが魔法少女の格好でポーズを決めていたのだから無理もない。

こうなるともうただの想像などではなく、かなりきつめの拷問であろう。 

想像力に富んでいるというのも、良い事ばかりではないようだ。


「マジカルはプレゼントを一切受け取らないし、サインも書かなければ歌も歌わないわよ。」

「でしょうね…。」

倫子は小さな声で言った。

精神的ダメージがかなり大きいようだ。



「新記録達成おめでとう!」

ヘルメットを被った真美が、手を叩きながら倫子に称賛を送る。

「おめでとうなのだ。」

未祐もそう言って手を叩く。

「ありがとうマミちゃん!ミユちゃん!タイムは?」

シートに座る倫子は、ヘルメットを外しながら言った。

「2分38秒よ。3分を大幅に切ったわ。これですべてのミッションをSランクでクリアー出来たわね。」

真美はヘルメットを外しながら言った。



「なかなかやるのだ。」

未祐も感心しているようだ。

「やるわね~。」 

真美はニヤリとしながら言った。

「意外なのだ。驚いたのだ。」

抑揚のない声で未祐が言う。

「え~。そうかなぁ~。」

原付免許も持っていない倫子が、照れながら言った。


「全然気付いてないのね…。」

真美は未祐に囁いた。

「リンちゃんは空間把握能力が高いのだ。」

未祐はあっさりと言い切った。

真美 「このタイムを出すのに普通は1ヶ月以上かかるわよ。」

未祐 「リンちゃんは一生懸命やってたのだ。青葉大に受かったのも納得なのだ。」

真美 「リンは根性あるもんね。どう思う?」

未祐 「いいと思うのだ。」

真美 「じゃあ決まりね。」

「決まりなのだ。」

未祐は頷いた。



「さっきから何を話しているの?」

倫子は不思議そうに尋ねる。

「リンはすごいねって2人で話してたのよ。」

真美は笑顔で答える。

「そうなのだ。リンちゃんはすごいのだ。」

未祐の言葉に感情の色はない。

「え~。そうかなぁ~。もっとタイムを縮めたいなぁ。もう1回やっていい?」

よほどに嬉しいのだろう。倫子はニヤけ顔だ。



真美 「ねぇリン。ロボットの操縦は楽しい?」

倫子 「楽しいよ。ロボットの操縦って面白いね。将来、自衛隊に入るのもありかも。」

「毎日ハードな訓練なのだ。毎日ドカ食いなのだ。筋肉カッチカチになるのだ。」

未祐がボソッと言った。

「自衛隊は無しの方向で!」

倫子は秒で前言撤回をした。



「そう言えばさ、リンはなぜ青葉大を選んだの?」

「え?」

真美からの質問を受けた瞬間、倫子の目が泳いだ。

「ロボットに興味があるようには見えないのだ。」

未祐はそう言って倫子を見た。

「おしゃれかなぁ~って…。」

「へ?」

真美が変な声を出した。

「意味がわからないのだ。」

未祐も不思議そうだ。

「大学でロボットの研究をしてたら、おしゃれかなぁ~っと思って…。」

倫子は顔を真っ赤にしながら言った。

真美 「ほー。」

未祐 「へー。」

「あれ?笑わないの?」

今度は倫子が不思議そうに尋ねた。

「笑うも何も…。ねぇ?」

真美が未祐の顔を見る。



「そんな動機で受かるほうがおかしいのだ。落ちた人が聞いたら倒れるのだ。」

「それで受かるほど簡単じゃないわよ?」

真美はあきれた顔をしている。

「絶対に受からなきゃ駄目だったから、頑張って勉強したんだよ。」

「いやいや。青葉大の受験は頑張るのが当たり前(セオリー)よ?頑張っても普通じゃ受からないのよ?1浪2浪は当たり前だし、3浪もいっぱいいるのよ?」

「清々しいほど不純な動機なのだ。面白いのだ。」

『反論出来ない…。』



「真美ちゃんは頭が良いからわかんないだろうけど、私は頭がよくなかったから頑張ったんだよ?2年間、必死だったんだから。」

「あたし?あたしは頭良くないわよ?高校生の時は熱血屋(ここ)でアルバイトばっかりしてたし。」

「うっそーん!」

倫子は大きな声で言った。

「嘘じゃないのだ。マミちゃんはバカなのだ。」

「ミユ。さすがにバカは言い過ぎよバカは。ちょっとバカなのよ。」

「訂正するのだ。マミちゃんはちょっとバカなのだ。」

「それでいいのよ。」

真美は満足そうに頷いた。

なんだこの会話は?



「じゃあなぜマミちゃんは青葉大に受かったの?」

倫子はむくれながら言った。

「フッフッフッ…。私には秘密兵器があるのよ!」

そう言って真美は不適に笑った。

「秘密兵器言うななのだ。」

未祐は感情のこもっていない声で言った。

「はい?どういう意味?」

「未祐が一度見聞きした事を忘れないのは、知ってるでしょ?」

「うん。前に聞いたよ。」

「忘れないんじゃない。()()()()()()のだ。」

「だからさ。ミユに受験勉強の家庭教師をしてもらったのよ。1回に付きイチゴショート一個で。そしたら青葉大に受かったのよ。だからミユのおかげなの。ラッキー!」

真美は笑顔でサムズアップをしながら言った。

「ホールは駄目だったのだ…。」

未祐の声は少し残念そうだ。

「ほーる?」

倫子は頭がパニックになった。

中学生が高校生に勉強を教えて、大学に合格させたと言われたのと同様の事を言われたのだ。

パニックになってもおかしくはないだろう。



「ま、信じろと言われても無理よね。」

真美も仕方がないかという顔をしている。

「信じなくてもいいのだ。」

未祐は興味がないようだ。

「心配しなくてもリンも近いうちにミユのお世話になるからね。その時になったらわかるわよ。」

「リンちゃんはイチゴタルト。フルーツタルトでもいいのだ。」

「はぁ。」

倫子は気のない返事をした。




「あ、そうだ!肝心な話を忘れてた。ねぇリン。」

「なに?」

倫子は真美の顔を見た。

真美はニコニコとしている。

「マジカルやる?」

「やる?」

未祐も倫子に尋ねた。

「はぃ?」

倫子の思考は完全に停止した。

さてさて、物語の歯車が急速に回り始めました。


どうなるんでしょうか?

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