第二章 4話 「守備領域」
第二章 4話です。
明日から23:00更新となります。
話の流れ上、本日23:00に5話を更新します。
よろしくお願いします。m(_ _)m
いつも読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
「昨日はごめんね~!またやっちゃったよ~!」
翌朝の食堂での聖美の第一声はこれだった。
「こっちこそごめんねサトミちゃん。私がちゃんと確認して渡せばよかった…。」
倫子がそう言うと聖美が慌てて言った。
「リンちゃんは悪くないよ~。いつもなら飲む前に匂いで確かめるんだけど、昨日は忘れてちゃったんだ~。嬉しくてついはしゃぎ過ぎちゃったんだよね~。」
聖美は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「サトミンはお酒の耐性0なのだ。ただ寝ちゃうだけたがら、気にしないほうがいいのだ。」
未祐はそう言いながら、コーンスープにスプーンを入れた。
「そうそう!気にしない気にしない!この体質のおかげでお酒は飲めないけど、その代わりに飲酒運転なんか絶対にしないしね~。悪い事ばっかりでもないんだ~。」
聖美はそう言ってソーセージが刺さったフォークを片手に、クロワッサンにかじりついた。
実においしそーに食べている。
「そう言う事よ。」
真美は紅茶を口元に運びながら倫子に言った。
「次からはちゃんと確認するよ。」
「そうだ!リンちゃんはまだ島の南の方には行ったことがないよね?今度の休みに連れていってあげようか?ボクのひとくんで。」
「是非ともお願いします。」
倫子がそう返事をすると、未祐と真美の動きがピタリと止まった。
「?」
場の雰囲気が急に変わり、倫子は周りを見回した。
未祐と真美の目がじとーっとしている。
「なに?なに?」
倫子は未祐と真美の顔を何度も見直す。
「なんでもないわ。」
真美がそう言うと未祐が
「何事も経験なのだ。」
未祐は冷静に言った。
「じゃあ決まりだね。休みが決まったら連絡するよ。」
「楽しみにしてますね。」
倫子は笑顔で答えた。
今日は倫子も真美もアルバイトと大学が休みなので、2人でリビングのソファーに座り、おしゃべりをしながらTVを見ていた。
「はーい!青葉CATVのアナウンサー。DJハマヤーだyo!『教えて!マジカル!』はーじまーるyo~!」
突然、DJハマヤーが出てきて倫子は驚いた。
『アフロのお兄ちゃんがまた出てきた!教えてマジカルってなんやろ?』
「これは来島者向けのPR番組なの。」
「PR番組?」
「そ。マジカルの説明をしてくれるのよ。見ていればわかるわ。」
真美がそう言うと、DJハマヤーが画面の向こうから熱く語り出した。
「まずはマジカルチームのリーダー『マジカルレッド』だyo!」
画面の中では赤い外装の魔法使いが、華麗な動きで人型ロボットを相手に立ち回りを繰り広げている。
その動きは優雅で美しい。
「この優雅な動き!華麗な剣捌き!まるでワルツを踊っているようだよne!」
『ほんまやなぁ…。』
ロボットの操縦をするようになった倫子は、ハマヤーの言っている事が理解出来るような気がした。
「凄い動きだねぇ。上手い人が乗ればロボットってあんな事まで出来るんだ…。」
倫子が見つめる先には、相手の攻撃をすれすれで避けながらタイミングを計り、カウンターの一撃で相手の腕を切り落とすマジカルレッドがいる。
「わかるの?」
真美はニヤリとしながら言った。
「わかんないよ~。でも、間違いなく今の私には出来ないな。」
倫子は画面を食い入るように見ながら言った。
「次はマジカル1の正直者。『マジカルブルー』だyo!」
ハマヤーがそう言うと画面が切り替わり、マジカルブルーは派手な動きを見せながら、サーベルでロボットに連撃を叩き込んでいる。
ロボットは為す術もなくやられっぱなしだ。
「ブルーの動きは大胆だけどそれだけじゃないね。凄く綿密な動きもしているんだね。」
「へぇ~。」
真美は感心している。
「マジカルブルーの歯に衣を着せぬ発言は、以外とファンも多いんだyo?」
「なーにしてくれてんのよ!こんの、へったくそー!」
画面の中のマジカルブルーは、建物の上に倒れたロボットの足を、ガンガン踏みつけながら怒っている。
『あれ?あれって…あのアパートじゃ?』
倫子は目をこらして画面を見たが、どう見ても何度見ても自分の城になる予定だったアパートだ。
真美は画面から視線を逸らし宙を仰いでいる。
「さぁ!次はマジカルの頼れるお姉さんこと、サブリーダーの『マジカルイエロー』だyo!」
「すいませーん。よろしければ投降してくれませんかぁ~?」
マジカルイエローはのんびりとした声で、ロボットに語りかけている。
場面が変わり、マジカルイエローは襲い来るロボットの攻撃をギリギリまで引きつけ、闘牛士のようにひらりひらりと躱している。
「あそこまで攻撃を引きつけられるなんて、イエローも凄いんだねぇ。」
「そうね。」
「さぁ次はマジカルのボクっ娘『マジカルグリーン』だ!アクロバティックなおてんば娘だyo!」
画面にグリーンが映し出された途端
「うわ!凄い!こんな操縦で酔わないのかな?」
倫子は驚愕の声をあげた。
グリーンはロボットを相手に地面を飛び跳ねるように駈け回り、薙刀を振り回しながら戦っている。
まさに縦横無尽と言うやつだ。
それの動きはまるで、ロボットではなく人間のようにも見える。
「…。」
真美は黙ったままだ。
「さぁ!最後は我らが週末の妹『マジカルプリティー』だyo!週末だけじゃなく、平日も出てきてくれyo~。」
「グリーンもそうだけど、プリティちゃんも凄い体幹だね。平衡感覚も凄いなぁ。あんな操縦が良く出来るなぁ。マジカルのパイロットは全員操縦が上手いんだね。」
倫子はいたく感心しているようだ。
画面の中のマジカルプリティーは小柄な体格を活かし、後方宙返りやバク転、前方半身ひねりなどの体技を駆使し、ロボットを翻弄している。
そしてロボットがマジカルプリティーの間合いに入ると、マジカルステッキ?でビビビビビ!とやる。
「TVの前のブラザー達!マジカルの凄さはわかってくれたかな?マジカルが頑張ってくれているから、みんなは安心して青葉アイランドのサイトシーンを堪能してくれyo!おっと!警報が出たら必ず近くの建物に避難してくれyo!約束だze!」
DJハマヤーがそう言うと、画面にマジカルプリティーが現れた。激しく両手を振っている。
「TVの前のお兄ちゃん達!プリティー達の活躍は見てくれたかナ?青葉島の平和はプリティー達が守るから安心してね!それじゃあ待ったね~。」
そこで番組は終わり、愉快なテーマソングと共に「お肉のとんとん」のCMが始まった。
画面の中では曲に合わせて、とんとんがたくさんの子ブタさんを引き連れて、腰を振り振り踊っている。
「マミちゃん。マジカルってなんなの?」
「なんなのって、ただの正体不明のガーディアンよ。」
「なんでテヤンデーとか、とんとんはTVに出てこないの?」
「一番の理由はマジカルが人気あるからなんだけど、もう一つは公平を期すためよ。詳しく説明をすると、青葉島には幾つもガーディアンのチームがあるの。」
「え?」
倫子は素っ頓狂な顔になった。
「商店街のガーディアンチームだけじゃ、島の全部は守れないでしょ?島の大企業もガーディアンチームを持っているわよ。」
「確かに。」
「ま、大企業のガーディアンチームは自分の会社しか守らないけどね。そのかわりに青葉市に防衛費用を寄付してるの。その寄付をガーディアンチームで分けあって、チームを維持している部分も大きいの。ま、早い話がお金でサポートしているわけよ。」
「なるほど~。」
「商店街のガーディアンチームは、ここ以外に2チームあるの。『青葉銀座通り商店街』と『青葉ロマンス通り商店街』って言うの。」
「それだけあれば安心だね。」
倫子は嬉しそうに言った。
「それがねぇ…。」
真美は眉を顰めた。
「何かあるの?」
倫子は心配そうに尋ねた。
「しょーもない言い争いが絶えないのよ…。」
真美はやれやれと両手を上げた。
「言い争い?」
「チーム毎に守備領域があるんだけど、守備領域によって事件の発生頻度が違うのよ。」
「確かに違ってくるよね。」
「地理的な問題もあって一番頻度が高いのがここ。その次が『銀座通り商店街』で一番頻度が低いのが『ロマンス通り商店街』なんだけど、3年前までは寄付金の配分は均等だったのよ。」
「さすがにそれは不公平なんじゃ…。」
「そう。ここは頻度が高い分、必要経費は高くつくでしょ?でも『ロマンス通り商店街』は年に数回、出動するかしないかなのよ。」
「ふんふん。」
「そうなると差が生じてくるでしょ?」
「うん?」
「ここは出費が多いからロボットの改修にお金がかけられなかったの。でも残りの商店街は3年前に第2世代のロボットから、第6世代のロボットに買い換えたのよ。そしたらここのチームのみんなが怒っちゃってね。」
『そらぁ怒るわなぁ…。』
倫子は会長達に同情した。
「それで市長に掛け合って、出撃回数によって寄付金の分配率を変えたんだけど…。」
「ふんふん。」
「会長達からすれば、ろくに出動もしないで良いロボットを持ってるなんて納得出来ないでしょ?自分達は旧式のハンドメイドをあれこれやりくりしてるんだからさ。」
「確かにねぇ。」
「だから会長達は3年間お金を貯めて、今回の改修に踏み切ったのよ。ここのロボットで第6世代のロボットは『ナイトアーサー』だけだからね。」
「ナイトアーサー?」
「へんな奴が乗ってるへんなロボットなのよ。」
真美は嫌そうな顔で言った。
「へんな奴のへんなロボット?」
倫子は不思議そうに尋ねた。
「そ、へんな奴のへんなロボット。ナイトアーサーは背中に大きな鞘を背負ってるんだけど、剣は持ってないの。」
「へ?鞘だけ背負ってるの?」
なんだそれは?
誰が聞いてもおかしいと思うだろう。
「ね?へんでしょ?」
「へんだね。」
「そのくせにすんごい、いかつくて重くって固くってさぁ。パワーもあるんだけどね。と・に・か・く・変な奴なのよ!」
なぜか真美は怒っている。
「ははははは。」
倫子には乾いた笑いしか出来ない。
「ま、そんなわけで商店街のガーディアンチーム同士がいがみ合っているのよ。商店街自体は仲良く付き合っているんだけどね。」
「そ、それはよかったね…。」
倫子は胸を撫でおろした。
これで商店街同士まで仲が悪ければ目も当てられない。
「で、3年前、青葉島にマジカルが現れたのよ。」
真美はなぜだか自慢げに言った。
本日23:00に5話を更新します。
本来は月曜日から更新時刻を変更するつもりでしたが、話の流れ上、きりが良いので明日からの変更にしました。
寝る前に読んで頂いて、クスリとでも笑って頂けたら嬉しいです。
めっきり寒くなって参りました。
お体御自愛ください。




