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第二章  3話 「聖美ノックアウトされる」

第二章 3話です。


よろしくお願いします。m(_ _)m


いつも読んでくれてありがとうございます。


 m(_ _)m

その日の熱血屋も大盛況であった。

週末という事もあるが、聖美のしそーである青葉ロボット工業大学の漆原(うるしばら)教授が、ゼミの学生達を連れて店の一番奥の座敷を貸し切り、総勢12名で宴を楽しんでいた。

「お待たせしました。ジョッキ生11杯とウーロン茶です。」

真美と倫子はそう言って、ジョッキを素早くテーブルの上に置いていく。

今日の真美はアメリカンポリスのコスプレで、倫子はいつもの町娘である。

町娘の倫子もテーブルの上にジョッキを置いていくが、なかなか手慣れた様子だ。

 


テーブルの上には大きな刺身の舟盛りを中心に、焼き鳥の盛り合わせや鶏の竜田揚げ。

大っきな卵焼きに、これまた大きなお好み焼きやボウル一杯のサラダなどが所狭しと並べられている。

「はいはーい!ウーロン茶はボク!」

聖美(さとみ)は手を上げて言った。

「飲み物は全員に回ったかな?」

漆原教授は学生達を見回しながら言った。

「えー。それでは学生諸君。そして聖美くん。今回はお疲れさまじゃったな。おかげさまでテヤンデーとビックとんとんの改修が無事に終わり、商店街に納入出来たわい。それとな、よい知らせがあるんじゃよ。」

「なんだ?」

「なんだろう?」

「なになに?」

「何かな?」

学生達がざわつき始めた。



「商店街会長から、残りの商店街のロボットの改修依頼を正式に受けたんじゃ。」

おぉぉぉぉー!

パチパチパチパチパチ

学生達は手を叩いて喜んだ。

教授(せんせい)!アーサーの改修も出来るんですか!」

女学生が笑顔で手をあげながら言った。

「アーサーとコングはしないのぅ。マッスルとロカビリー、ジュテームの3機じゃな。」

漆原教授の言葉を聞き

「残念!」

「ショック~。」

「やりたかったなぁ…。」

「お近づきになれると思ったのに~。」

女子学生達は残念そうに漏らした。

男子学生達はケッ!とでも言いたそうな顔をしている。



「そう残念がる事はない。今時、第1世代から第4世代のロボットを触れるなんてのはなかなか無い機会じゃぞ?」

漆原教授はニヤリと笑う。

「大学のロボットもみんな、第5世代以降のロボットだもんね。」

「今回はいい勉強になったもんな。」

「ロボット工学の進歩が見えたよな。」

学生達はわいわいと話を始めた。

「まぁまぁ、話は後にしてまずは乾杯じゃ。今日の宴のスポンサーは商店街の会長さんじゃ。みんな感謝して味わおう。それじゃあ。会長さんありがとう!カンパーイ!」

「会長さんありがとう!かんぱーい!」

次々とジョッキが高々と掲げられ、楽しい宴が始まった。



宴が始まってしばらくすると、会長と副会長が揃ってやってきた。

「お!やってるかい!」

会長は笑顔で学生達に声を掛けた。

学生達は箸を止めて、一斉に会長の顔を見る。

「会長!」

「ありがとうございまーす!」

「ゴチになってまーす!」

「すっごくおいしいでーす!」

学生達は各々感謝の言葉を口にする。

「今回はみんなのおかげで助かったぜ。残りのロボットもこの調子で頼んだぜ!」

「頑張りまーす!」

学生達は笑顔で答えた。

みんな気の良い学生達だ。



「漆原教授(せんせい)。この度は誠にありがとうございました。」

副会長が漆原教授に向かって丁寧に頭を下げる。

「満足していただけましたかな?」

「もちろん大満足ですよ。」

副会長は笑顔で答えた。

「それはよかった。今回は学生達にとっても良い勉強になりました。ありがとうございました。」

漆原教授もそう言って頭を下げる。

教授もかなり満足げだ。

「お忙しい中、わざわざすいませんでしたねぇ。」

会長もそう言って教授に頭を下げた。

「山本会長。今日はご厚意に甘えさせてもらっております。テヤンデーの方はどうですかな?」

「よく動くわスピードはあるわで満足も満足。大満足でさぁ。こんな事を言っちゃあなんだが、次の出撃が楽しみで…。」

会長はそう言ってニヤリとした。

「実は私も…。」

副会長もニヤリとしている。

「ハッハッハ。それは困ったもんですな。」

漆原教授は愉快そうに笑った。



宴の最中、学生達はよく食べよく飲んだ。

真美と倫子は何度もキッチンと座敷を往復し、空のジョッキが洗い場に積み上がっていく。洗い場の方も大変だろう。

「遠慮はいらねぇ。じゃんじゃん飲んで、じゃんじゃん食ってくれよ!帰りに土産もあるからな。」

キャー!

おぉー!

会長がそう言うと座敷が沸いた。

「若いもんはこうでなくっちゃいけねぇや。」

会長は満足そうだ。



「はい会長。」

真美が会長に生ビールのジョッキを手渡した。

「おぉ!真美ちゃん!今回はありがとうな!」

会長は満面に笑みを浮かべている。

「ギャラはもらったから気にしないで。それよりあたしでよかったの?」

真美は空になったジョッキや器を集めながら会長に尋ねた。

「可愛い声になって、ハチのやつも喜んでらぁ。」

「照れるぜおやびん!」

真美はハチの声で言った。

「こいつぁ参った!」

会長と真美は、顔を合わせて大笑いをした。



「やっぱり熱血屋(うち)の料理はなんでもおいしいな~。」

聖美は嬉しそうにそう言うと、鶏の竜田揚げにかぶりつき、ウーロン茶を飲み始めた。

「聖美ちゃんはお酒飲まないの?」

隣の女子学生が聖美に尋ねた。

「お酒の味がわかんないんだよね~。ジュースの方が好きだな~。」

「でも聖美ちゃんて凄いよね。テヤンデーととんとんの図面を一人で引いたんでしょ?」

対面の女子学生が聖美に尋ねた。

「うん。」

聖美は小皿にサラダを取り分けながら答えた。



「私には無理だわ。聖美ちゃんはなんで大学に入らないの?入ればいいのに~。」

「本当。もったいないわ~。」

「ロボットは好きだけど他の科目はからきしなんだ~。特に横文字が苦手でね~。外人さんの名前なんて右から左だよ。ジョンとマイコーくらいしかわかんないね~。」

聖美は鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌でそう言うと、取り分けたサラダを食べ始めた。



「あ、リンちゃんウーロン茶おかわり!」

聖美はそう言うとウーロン茶を飲み干し、空のジョッキをそばにいた倫子に手渡した。

「あ、僕はウーロンハイ!」

「僕も!」

「ウーロン茶一つと、ウーロンハイ二つですね。かしこましましたー!」

倫子は元気よく返事をすると、空のジョッキを受け取りキッチンへと向かった。



「あの町娘さんはよく働くねぇ。」

漆原教授は倫子を目で追いながら言った。

「本当にいい娘さんだ。ハチの女房にしてぇくらいだ。」

会長は笑いながら言ったが、会長はハチがロボットだという事をお忘れのようだ。


「お母さんも凄かったですもんね。」

副会長がそう言うと会長が食い付いた。

「そうそう。あの女将がいる店なら、おらぁ毎日通っちゃうね。貢いじゃうね。」

「それは残念。わしも見たかったなぁ。」

漆原教授は残念そうに言った。

「美智子さんいなくて悪かったね。」

突然聞こえた声に、3人の男は驚いた。



「なんでぇ。ホイさんか。」

会長はそう言って胸をなで下ろした。

「ホイさん気を悪くしないで下さいね。」

副会長は慌てて言った。

熱血屋(みせ)からの差し入れね。」

ドン!

ホイさんは手にした大きな皿に山盛りのチャーハンをテーブルに置きながら言った。

「ホイさんチャーハンキター!」

「ヤッター!」

「わー!」

「おいしそー!」

学生達の嬌声と共に、テーブルに置かれたチャーハンはあっという間にテーブルの奥へと運ばれていった。

「みんなありがとね。これで商店街も安心ね。」

ホイさんは笑顔だ。



いただきまーす!

学生達は嬉しそうに言うと、競うようにチャーハンの大皿に集まりあっという間にお皿は空っぽになった。米粒一つ残っていない。


教授(せんせい)。体は大丈夫ね。」

「おかげさまで元気じゃよ。ホイさんも元気そうじゃな。」

「ホイさんいつも元気ね。教授(せんせい)最近来ないね。心配したね。」

「わしゃ100までは生きるぞ。」

「その意気ね。それじゃあホイさん仕事に戻るね。みんなゆっくりしていくね。」

そう言ってホイさんはキッチンへと戻っていったが、そこへウーロン茶を持った倫子と、追加の酢豚とチンジャオロースを持った真美がやってきた。



「ウーロン茶とウーロンハイです。」

倫子がそう言ってジョッキが載ったお盆を差し出すと、男子学生が我先にジョッキを受け取り、最後に聖美がジョッキを手にした。

「あれ?間違った!これウーロン茶だ!」

ジョッキに口をつけた男子学生の一人が言った。

その瞬間、真美が叫んだ。

「サトミン飲んじゃダメ~!」

しかし聖美はすでに、ウーロンハイを一口飲んでしまっていた。

ゴクッ。

「ふにゃ~。」

聖美は一言そう言うと、その場でヘナヘナと倒れこんだ。

両隣にいた女子学生が慌てて聖美の体を支える。

「サトミちゃん!」

倫子は声をあげた。

「あっちゃ~。」

真美は俯きながら顔に手を当てた。

「どした?」

「大丈夫か?」

「聖美ちゃん!」

「聖美ちゃん大丈夫?」

学生達がざわつき出し座敷は騒然となった。


 


結局、真美が聖美をおんぶし、倫子が補助をしながら聖美を乙女座へと運んだ。

真美と倫子は聖美を部屋へと運んだが、聖美の部屋を見て倫子は驚いた。


聖美の部屋には各種ゲーム機器とソフト、あとは得体の知れない機械が転がっており女の子っぽさがほとんどない。

しかも机は年季の入った製図用のトレース台である。

傍らのゴミ箱には、棒付きキャンディの包み紙が満載になっており、反対側に置かれた棒付きキャンディの販促用のディスプレイスタンドには、キャンディが針の山のように突き刺さっている。

唯一、女の子っぽいと言えば、本棚の上に並んだ大小さまざまな可愛い猫のぬいぐるみやフィギュアくらいだろうか?




真美と倫子は聖美をベッドの上に寝かせた。

ベッドの上の聖美は気持ちよさそうに寝息を立てている。

倒れてすぐに調べてみたが、聖美の脈は安定しており急性アルコール中毒ではないようだ。

「サトミンはお酒が全く飲めないのよ。」

「え?」

「一口飲んだだけでこれよ。すぐに寝ちゃうの。」

なるほど。

一口飲んですぐに寝てしまうのだから、味なんて分からないだろう。

聖美は嘘は言っていない。



「そうなんだ…。ウーロン茶とウーロンハイなんて、見た目じゃわからないよね。私のせいかなぁ…。」

倫子は申し訳なさそうに言った。

「誰のミスかなんてわからないわよ。次からは気をつければいいからさ。サトミンもいつもは慎重なんだけど、今日はよっぽど嬉しかったのね。熱血屋(うち)で飲んでたからっていうのも、あるんだろうけど…。」

「そうだね。よっぽど嬉しかったんだろうね。」

倫子は聖美の寝顔を見ながら言った。

聖美は何とも幸せそうな顔で眠っている。

その顔はどこか誇らしげで、充実感と満足感に溢れていた。

近々、更新予定が変更になります。


時間は23:00


更新日程はそのままのつもりですが、2日間に1回になるかも知れません。

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