第一章 番外編4「乙女座の人々『桜子さんとハルさん』」
第一章 番外編4です。
今回は桜子さんとハルさんです。
読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
桜子は倫子にとって「偉大なる母」である。
熱血屋の総務部部長にして熱血屋店長代理であり、さらには乙女座の寮母さんである桜子は毎日が忙しい。
朝早くから起き、夜遅くまで働いているのだがその内容が凄まじい。
熱血屋の仕切りは当然の事、商店街の寄り合いに参加したり、近所に住むまさみちゃんのお弁当作りから送り迎え。
さらには寮母としての激務を果たしているのだから、とんでもないスーパーウーマンである。
いったい、いつ寝ているんだろうか?
桜子の多忙の原因は社長にあるらしいのだが、社長自身が多忙らしく倫子は一度も会った事がないし、真由や真美達ですら年一で見かけるかどうからしい。
桜子はいつも長い髪を後ろで束ね、ワンピースにエプロン姿でいつもニコニコとしている。
彼女もまた怒るということを知らないようだ。
さすがは「アオバシティの女神」と呼ばれ、商店街の人気者であり頼りにされている存在である。
桜子は周りからの人望も厚く、未祐と一緒の部屋に住んでいるが、未祐は桜子の事を「桜子ママ」と呼んでいる。
倫子の母、美智子も桜子を絶賛しており、乙女座での滞在中に桜子に京風和食の手ほどきをしていたが、美味しい餡子の炊き方まで教えていたのには驚かされた。
それらを見事に再現してみせた桜子にも驚かされたが。
不思議な事に誰も桜子の名字を知らないし、知ろうともしない。
桜子は桜子なのだろう。
倫子がどうしても気になって、失礼を承知で桜子に年齢を尋ねたのだが、その時桜子は笑顔で素早く
「にじゅうさんさ~い。」
と答えた。
倫子はそうなんだぁ。と納得したのだが、真美と真奈美が口に手を当てて笑い出したので
「違うんですか?」
と二人に尋ねると
「私たちの時は『はたち~。』って言ってた。」
と言って笑った。
『一体、何年前に聞いたんやろ?』
と倫子は思ったが、なぜか聞くのが怖くなってやめた。
「青葉シティの女神」は謎は多いのだ。
そこもまた、桜子の魅力の一つである。
自称「乙女座のセキュリティーシステム」であるハルさんは、本当は人間ではないのかと思うほど万能だ。
部屋の照明の調節から、部屋の掃除は当たり前の事、侵入者の撃退までありとあらゆる事をしてくれる。
倫子はリビングで暇そうにしているまさみちゃんとしりとりをして遊んだり、美智子と楽しそうに世間話をしているハルさんを見て驚かされたが、最も驚かされたのがハルさんが侵入者の撃退した時の話だ。
一時期、真由につきまとう不埒な輩が連日乙女座に押し寄せてくるという、招かれざる事態が起こった。
不埒な輩共は、真由の後をつけて乙女座のドアの前に立つと決まって困惑する。
ドアにはドアノブがないからだ。
そうなると不埒な輩共は、決まってドアを手で押すが、当然ビクともしない。
「どちら様でしょうか?」
ドアのライオンに突然話しかけられて、不埒な輩はびっくりする。
ハルさんにそう言われると大抵は
「真由さんにお話があって参りました。」
「真由さんに用事がある。」
「化粧品のセールスに参りました。」
などと言うが。
「当家では男性の方の来訪はお断りしております。また、当家の住人に対するメッセージや手紙、プレゼントの類いは一切、お受け取り出来ません。セールスも必要ありません。早々にお引き取りを。」
ハルさんの機械っぽいアナウンスを聞いてそのまま帰ればいいものを、何しろ他人の迷惑も考えず真由の後をつけてくるような奴らである。
所詮は機械と侮って、言いたい放題言うバカタレ共のなんと多い事か。
そういう不埒な輩は、
「真由さんを出せ!」
「真由さんと話をさせてください!」
「すごくいい化粧水があるんです!」
などと言って居直りを決め込むか、暴れるのが相場であるが、そうなるとハルさんも容赦などしない。
通告をした上で従わなかった場合、不埒な輩は全身に嫌というほど電流を流され、床に倒れてピクピクと全身を痙攣させるハメになる。
それから三分もしないうちに、ハルさんから通報を受けてやって来たお巡りさん達に連行されて行くのだ。
普通ならやり過ぎではないかと思われるだろうが、いかんせんここは青葉島である。
ハルさんは住人の持つ自衛権を行使しただけなのだ。
なんの問題もあるはずがない。
のちに「バカタレ共襲来事件」と呼ばれる衝撃的な事件が起こり、その不毛な争いは一ヶ月以上も続いたが、ハルさんは見事に完全勝利をおさめている。
バカタレ共は一致団結し、手段を選ばずありとあらゆる手を使って勇猛果敢にハルさんに襲いかかったが、全員お巡りさんに連れて行かれたのである。
中には女装をして侵入を試みたバカタレもいたと言うのだから開いた口も塞がらない。
そんな格好で真由に会えたとして、一体何を話すつもりだったのだろう?
バカタレどもの頭の中は理解不能である。
この珍事件により、熱血ビルは「難攻不落の要塞」「青葉シティのアルカトラズ」と呼ばれるようになったのだが、さらに数か月後には「バカタレ共の逆襲事件」と呼ばれる事件が起こった。
その時の詳細もまた、別の機会に書き記すとしよう。
ハルさんの名誉の為に付け加えさせて頂くが、心優しいハルさんは子供相手にはここまではしない。
もっとソフトで優しく、二度と乙女座に訪れる気にならないようにさせるだけだ。
その方法についても、別の機会に書き記させて頂きたい。
倫子にとって、ハルさんはただのセキュリティシステムなどではない。
夜中に廊下に出ると、そっと足元を照らしてくれる心優しい乙女座そのものの存在である。
「にじゅうさんさ~い。」
は知り合いが良く言っていたのを思い出したので、書きました。
決して「17才」ではありません。
番外編は次で終了です。




