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第一章 21話「聖美燃ゆる!」

第一章 21話です。


本当にゆっくりとしたペースですね。

大丈夫なのだろうか?



倫子と真美が乙女座に戻ると、リビングのソファーに座る未祐みゆがいた。

お風呂上りなのだろう。

まだ乾ききっていない髪を下ろし、スウェットの上下いうラフな格好で、TVを見ながら真由が貰ってきたお菓子をパリパリと食べている。

「おかえりなのだ。」

未祐は、リビングに入ってきた倫子と真美に視線を移すと、無表情で出迎えた。

真美 「ただいま~。」

倫子 「ただいま~。」

倫子と真美は揃って言った。



「マミちゃんとリンちゃんも、マユちゃんのお土産食べるか?」

未祐はテーブルの上に山積みにされたピンクのパッケージのお菓子を一つ手に取ると、倫子に差し出した。

「ありがとうミユちゃん。頂くね。」

倫子は未祐からお菓子を貰うと、未祐の対面のソファーに座った。

真美も倫子の隣に腰掛けながら、お菓子の山からお菓子を一つ手に取った。



「サトミンはもうお仕事に行ったの?」

お菓子のパッケージを開けながら、真美が未祐に言った。

未祐 「お仕事に行ったのだ。」

真美 「今日は1号?2号?」

真美が未祐におかしな質問をした。

「1号なのだ。2号はメンテナンス中なのだ。」

未祐は即答したが一体なんの話だろう?

どこぞの秘密結社が作った改造人間だろうか?



「1号?2号?なにそれ?」

倫子は不思議そうに尋ねた。

「サトミンの出前用のバイクよ。」

真美がお菓子を食べながら言った。

「出前用のバイク?」

「サトミンは熱血屋(おみせ)の出前兼メカニックなのだ。」

未祐もお菓子を食べながら言う。


倫子はメイドさんの格好をして、後ろに岡持を乗せた出前用の50ccのバイクにまたがる聖美さとみの姿を想像した。

ヘルメットさえ被らなければ悪くはない絵だ。

いや、ネコ耳が付いたかわいいヘルメットならば逆にアリだ。

『出前かぁ…。それもええなぁ…。』

倫子は思わずニンマリとした。



「出前まではコスプレはしてないわよ。」

真美はジトーッとした目で、倫子を見た。

「え?そうなの?」

倫子は少し残念そうだ。


「サトミンは熱血屋(おみせ)のメカニックもやってるからね。コスプレなんかしてたら仕事にならないわ。」

「サトミンはなんでも直せるのだ。電子レンジからロボットまでなんでもなのだ」

未祐は淡々と言った。

「ロボットまで直せるの!」

倫子は驚いた。


「サトミンはゲームとメカのマニアなの。昔で言う『オタク』ってやつ?それも超が付くくらいの。」

この時代、オタクと言う言葉は死語となり、一般的には使われていない。

代わりに「マニア」と言う言葉が使われている。



「すごいんだねぇ。」

ゲームをほとんどしない倫子は感心した。

「サトミンは変態フリークなのだ。」

未祐がそう言うと、真美がすかさずツッコミをいれた。

「ミユも相当な変態フリークだけどね。」

真美は笑いながら言った。


フリークとは、マニアの更に上の存在を指す言葉であり、マニア達からは羨望の眼差しで見られており、フリークと呼ばれる存在はそう多くない。

いわばエリートである。




「会長さ~ん。私まだ出前が残ってるんだけどなぁ…。」

聖美さとみは困った顔で貫徹に言った。

ピンクに黄色いラインの入ったつなぎの作業服を着て、手にはネコ耳がついたピンクのヘルメットを持った聖美は気まずそうに頭を搔いている。


「桜子ちゃんには後で連絡するからよ。ちっとばかり知恵を貸してくれや。聖美ちゃん。」

貫徹は聖美を拝み倒しながら言う。

「しょうがないなぁ。ちょっとだけだよ。」

聖美はしぶしぶ承諾した。



聖美は貫徹に指名を受け、基地ベースに出前を届けに来てすぐに、今か今かと聖美を待ち受けていた貫徹に捕まったのである。

蔵太は熱血屋から出前をした豚の生姜焼き定食を、貪るように食べている。


「とりあえず図面を見せてよ。」

「これなんだけどよ。何とかならねぇかな?」

聖美は貫徹が差し出したテヤンデーととんとんの図面を手に取ると、しぶしぶ図面に目を通し始めた。

嫌々見ていた図面を見ていた聖美は、パラパラと図面をめくっていくうちに、好奇心で目が染まっていった。


「なにこれ?」

「どうした聖美ちゃん?」

「今までこれでやってきてたの?改修はした?」

「してねぇな。何か問題でもあるのかい?」

貫徹は不安そうだ。

「ちょっと待って!」

聖美はそう言うと、携帯を取り出し電話をかけ始めた。


「もしもし、しそー?今、商店街の会長さんに頼まれてテヤンデーと、とんとんの図面を見てたんだけどさぁ…。」

「しそー?」

貫徹は頭を捻る。

しそーとは多分、師匠の事だろう。


「うん。エンジンと駆動系意外は全然ダメ。よく今までやってこれたなってレベル。うん。うん…。じゃあさ、ボクがイジってもいいかな~?うん…うん…。やった~!今日中にラボに運び込むから、車の手配よろしくね~!うん。わかった。図面も持ってくね~。それじゃあ~。」

聖美は携帯を切りながら尋ねた。


「会長。テヤンデーと、とんとんって何年くらい使ってるの?」

「10年だな。」 

「10年!うそ!むちゃくちゃだ~!」

聖美は図面を見ながら目を剥く。

「知り合いのツテで、安く手にいれたからよぉ…。」

貫徹は恥ずかしそうだ。


「このロボットは時系列が無茶苦茶だよ~。」

聖美は驚いている。 

「時系列?」

貫徹は何がなんだかわからない。

「簡単にいうとね。どっちも時代遅れの第一世代ファーストのロボットだけど、エンジンと駆動系だけは、今でも充分通用するんだ。」

「全然簡単じゃねぇな…。」

貫徹はまた頭を悩ませた。



「いいかな会長?今は10年も経ってさすがにガタが来ているけど、ロールアウトされた時点でのテヤンデーと、とんとんは、間違いなく最先端のロボットだったんだよ。しかも10年経った今でも通用するくらいのね!動きがスムーズじゃないのは、メンテ不良が原因だね。」

 聖美は興奮している。


「え?ハンドメイドの格安ロボットだぜ?」

 貫徹は驚いている。

「あのね会長。日進月歩で発展しているロボット産業の中で、10年って言うのはすごい年月なんだよ?このロボットの製作者はすごい天才だよ!うちのしそーよりすごいかも!これ、ボクがいじるからね!」

「よくわからねぇけど、とりあえずは直してくれるのかい!」

貫徹の顔が明るくなった。 



「こっちからお願いするよ。外見はいじっていいの?武器も付けようか?」

「とんとんの外見はそのままにしてもらえねぇかな?テヤンデーは好きにしてくれたらいい、桜子ちゃんには俺から連絡しておく!バイトを休む分の時給は、イロ付けて商店街うちが払う!」

「わかった。ボクに任せてよ。部品の請求書は商店街に回すからね。あとは運搬費と材料費だけでいいや。予算はどれくらいかな?」 

「2機で五千!いや八千万!」

貫徹は言った。

「う~ん微妙な金額だけど、出来るだけ抑えてみるよ。まずはエンジンと駆動系のオーバーホールからだね。でもまぁ、ろくなメンテもしないでよくここまで頑張ってこれたもんだよ。」

「面目ねぇ…。」

貫徹は穴があったら入りたかった。



「会長。ロボットのメンテは絶対にしなきゃ駄目だからね!もっと愛情を持ってロボットは扱わなきゃ。機械は愛情を注げば注いだ分、必ず応えてくれるんだからね。機械は嘘つかないんだよ?」

「肝に銘じるぜ。ところで何日くらいかかりそうだい?」

「2機で10日。1機目が一週間。2機目は残り三日で仕上げるよ。どっちを先にする?」

「テヤンデー!と言いてぇ所だが、とんとんを先に頼む。」

「了解!さぁ!面白くなってきたぞ~!」

聖美は瞳を輝かせながらそう言うと、嬉しそうに笑った。



「マジカルってすごい人気なんだね~。」

倫子は真美と未祐の話を聞きながら感心していた。

「マジカルはロボットなのに飛べるのだ。」

未祐がそういうと倫子は驚いた。 

倫子 「え?ロボットって飛べないの?」

未祐 「普通のロボットは飛べないのだ。重いのだ。」

「そっか!そうだよね!」

倫子は納得した。

何トンもある巨大なロボットを飛ばすのには、かなりの推力が必要なのは倫子でもわかる。

では何故マジカルは飛べるのだろうか?



「じゃあなんでマジカルは飛べるんだろう?」

倫子の疑問に真美が答えた。

「マジカルが軽いからでしょ?」

確かに軽ければ軽いほど、ロボットは飛びやすくなる。

しかしマジカルに付いているバーニアは数も少なく、そんなに大きな物ではないのも気になる。


「マジカルは謎だらけなのだ。機体もパイロットも謎なのだ。」

未祐がそう言うと倫子は驚いた。

「え!そうなの?」

「マジカルは神出鬼没なのだ。最後は飛んで行っちゃうのだ。バイバイなのだ。」

未祐はそう言って手を振った。


「マジカルって何人?ん?何機いるの?」

倫子の質問に真美が答える。

「レッド、ブルー、イエローでしょ?グリーンにプリティ。全部で5機ね。勢揃いした事はないけど。」

真美は指折り数えながら言った。

「そんなにたくさんいるの!」

「まだいるかもよ?」

真美はそう言って笑った。


「でもプリティは名前通りかわいいよね。パープルって呼ぶよりプリティの方がしっくりくるもん。」

倫子がそう言うと、未祐が右のこめかみを右手の人差し指で何度も掻いた。


「マジカルって可愛くて、スタイルがいいよね。」

倫子は頭の中でテヤンデーや、ビッグとんとんとマジカルを比較しながら言った。

テヤンデーは三頭身でかわいいフォルムで動く眉毛もチャーミングだし、とんとんは丸々としていてかわいい。

マジカルはスタイルがよくてかわいい。

三者三様のかわいさがある。



「ロボットもいろいろなのだ。おもちゃのロボットもロボットなら、マジカルもロボットなのだ。」

未祐はとんとんのぬいぐるみを手に取りながら言った。


真美 「ロボットには世代があるのよ。」

倫子 「世代ってなに?マミちゃん。」

真美 「簡単に言うとね。第1世代から第3世代までのロボットって、テヤンデーみたいな三頭身なのよ。第4世代からは今みたいな6頭身の人間に近い形になったの。」

倫子 「そうなんだ~。」

真美 「で、今は第7世代なの。」

倫子 「じゃあマジカルは第7世代なの?」

「それは謎なのだ。わかんないのだ。」

未祐はとんとんで手遊びしながら言った。



倫子 「それも謎なの?」

未祐 「マジカルが最初に出てきたのは3年前なのだ。レッドとブルーとイエローの3機だったのだ。まだ第5世代の頃にマジカルは飛べたのだ。」

倫子 「え?」

「それから1年もしないうちに、グリーンとプリティが出てきたんだけどね。」

そう言って真美が二つ目のお菓子に手を伸ばす。



「今の技術ではロボットが空を飛べるようになるのは20世代くらいじゃないかと言われているの。じゃあ、マジカルって何世代のロボットだと思う?」

真美はお菓子のパッケージを開けながら言う。

「わかんにゃい。」

しばらく考えた倫子は、首を捻りながら答えた。

「でしょ?わかんないのよ。」

真美はお手上げといった風に両手を広げた。

「マジカルは規格外なのだ。ロボットと呼ぶのも怪しいのだ。」

そう語る未祐の手で、とんとんは空を飛んでいる。

とんとんもきっと喜んでいるはずだ。



ヴーッ ヴーッ ヴーッ ヴーッ

突然、倫子の鞄が小刻み震えだした。

倫子は慌てて鞄からタブレットを取り出し、画面にタッチした。

「倫子。お母さんお店にいてるさかい、お店まで来てちょうだい。」

そう言ってタブレットの中で笑っているのは、母の美智子だった。

どうやら商店街チームに、何やら動きが出てきました。どうなる事やら…。

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