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第一章 18話 「アニキー!」

第一章 18話です。

明日の更新はありません。

楽しんで頂ければ、幸いです。



読んでくれてありがとうございます。


 m(_ _)m

「アイス。」

呆けた顔の倫子を見ながら真美が言った。

「へ?」

倫子はキョトンとした顔で真美を見た。

「アイス。溶けちゃうわよ。」

真美は笑っている。

「あ!」

倫子が手に持ったアイスに目をやると、アイスがかなり溶けかかっている。

『きなこがない!もったいな!』

倫子は慌ててアイスを舐め始めると、ポケットからティッシュを取り出し、床に落ちたきなこアイスを掃除し始めた。



真美はソファーに深く腰掛けながらキャップを深く被り直すと、声は出さずに体で笑い始めた。

『リンは見てて面白いわねぇ…。でも、これって島民わたしたちの感覚の方がおかしいのよね…。』

真美は笑いながらそんな事を考えていた。




「さぁ!仕切り直しだよ!」

2機の暴走ロボットの元へと辿り着いたマジカルグリーンはそう言うと、角付きに薙刀のきっさきを突きつけた。

頭を潰され右腕がない角付きは、タツの機体に支えられるようにして立っている。

「アニキ。どうします?」

「どうするもこうするもねぇ。おまえは逃げろ!」

「えぇ!ヤスはどうするんです?」

「ヤスには悪いが諦めろ…。」

アニキは悔しそうに言った。

「でもアニキ。逃げるってどこへ?」

「地下だ。」

「地下?」

「島の南の海岸の近くに、大きなトンネルがあったろ?」

「はい!ありやした!」

タツは思い出しながら答えた。


「あのトンネルの中に逃げこめ。ロボットは捨ててもいい。そこでクライアントが待っているはずだ。」

「へい!わかりやした!それじゃあアニキ!早く行きやしょう!」

「いや、お前だけ逃げろ。緑のやつは俺が食い止める。」

「アニキー!」

タツは悲痛な叫びをあげた。


「どんな仕事でも請け負った以上は、きっちりやり遂げなきゃならねえ。それにヤスをほったらかして逃げるなんざぁ、兄貴分としちゃあ出来ねぇ相談だ。お前だけでも逃げろ!」

「ア!アニキぃ!」

タツの頬を熱い涙が伝う。


「お前が持ってる荷物をクライアントに渡すんだ。わかったな!わかったらいけ!」

「ア!アニキぃ!」

「タツ!無事に逃げ切れよ!元気でな!」

角付きはそう言うと、タツの機体を残った左手で突き飛ばした。

「かかってこいやゴラァ!」

角付きは咆哮をあげ、グリーンに突っ込んで行った。



「くそぅ!くそぅ!くそぅ!」

タツはそう言うとペダルを力一杯踏み込み、グリーンの横をすばやく駆け抜けていった。

「右腕がないくらいなんぼのもんじゃーい!丁度いいハンデじゃーい!さぁ!遠慮なくかかってこんかーい!」

道路を滑走するタツの後ろから、アニキの放つ威勢のいい啖呵が聞こえる。

タツは右腕で涙を拭うと、南を目指して機体を走らせ続けた。




「うわぁぁぁぁぁぁー!」

タツが走り出して20秒もしないうちに、アニキの断末魔がコクピットに響いた。

「アニキぃー!」

タツは操縦桿を力いっぱい握りしめながら叫んだ!

涙が滲む目でモニターを見ると、プリティが道路の真ん中に立っているのが見えた。


「どかんけぇコンヤローがぁ!ぶち壊しちゃるぞー!」

タツは紫色のプリティに向かって声を張り上げた。

週末の妹に向かって暴言を吐くとは失礼千万な奴である。


「わしゃあ絶対に!絶対に逃げ切るんじゃ!逃げ切れんかったらわしゃあ、アニキに申し訳がたたんのじゃー!」

固い決意を口にしてタツは道路を滑走する。

その目には責任感。

いや、執念で燃え盛る炎が噴き出しているようだ。



前方から迫り来るタツの機体を見たプリティは

「いやーん!こわ~い!」

そう言って体をくねらせると、慌てて左に寄って道を空けた。

「わかりゃあええんじゃ、わかりゃあ。」

タツが満足げにそう言ってプリティの横をすり抜けようとしたその時!

「えい!」

と言う可愛らしい声と同時に、プリティがタツの機体の左脇腹辺りにスティックの先をちょんと当てると、その瞬間裁きの雷がタツの体を貫いた。

「どぅーん!」

タツはそう叫ぶと体を大きく仰け反らせ、シートの上でガクンと倒れた。

コクピットの中でタツの体がピクピクと痙攣している。

「アニキ…すまんのぅ…。」

薄れていく意識の中、タツはそこまで言うのが精一杯であった…。


タツが気を失ったと同時にロボットも急停止し、全身からほんのりと白煙を吐きだした。

ロボットは両腕を下にダランと伸ばし、頭もガクンと垂れ下がっている。

どうやらロボットも気を失ったようだ。


プリティはステッキを左の腰に戻すと

「ちょっと電圧が強かったかな?プリティったらドジっ娘ちゃん!テへ!」

プリティはそう言って両手を合わせて右の頬に当てると、軽く首を右に振った。

パチパチパチパチパチ!

聖地にプリティへの賞賛の拍手が嵐のように起こった。




しばらくするとグリーンがプリティのそばにやって来て

「さっさとバラしちゃうね~。」

と言って、プリティの前でロボットの解体ショーを始めた。

「ほい。ほい。ほい。ほいっと!」

軽快に声をあげながら、グリーンは見事な包丁。

いや、薙刀捌きであっという間にロボットを捌くと、部位ごとにわけて道路に並べた。


「すごい!すご~い!」

プリティはきゃっきゃと手を叩き、惜しみない賞賛の拍手をグリーンに送った。

「はい終わり!それじゃあ帰ろっか?」

グリーンがプリティに尋ねた。

「うん!」

プリティは大きく頷いた。

「それじゃあみんな!またね~!」

グリーンが明るい声で言う。

「お兄ちゃん達!まったね~!バイバーイ!」

プリティも可愛い声で手を振りながらそう言うと、背中のバーニアから白炎を吐き出しながら空高く飛んで行った。



グリーンとプリティが空の彼方に消えていくと、建物からわらわらと大量の人達が現れた。

『ん?何してるんやろ?』

倫子は不思議そうな顔でモニターを見つめる。

その間にも人々は、グリーンによって分けられた機体へと群がって行く。

『こっわ!なにあれ!こっわ!』

機体に群がる大勢の人達の姿を見て、倫子は驚愕すると同時に背筋が寒くなった。



「TVの前のみんな!今日は本当にラッキッキーだったne!グリーンとプリティが来てくれるなんて、さすがのハマヤーもびっくり仰天だyo~!今日、島に来てくれているお得意様の君!君もラッキッキーだったne!」

モニターの中ではDJハマヤーが、ノリノリで体をくねらせている。

『ラッキッキーってなんやねーん!』

倫子のツッコミセンサーが正常に作動した。



「TVの前のみんな!名残惜しいけど、今回の中継はこれでおしまいだyo~!観光客のみんな!安心して観光を楽しんでくれyo~!それから『今日のマジカルだーれだ!』の正解者の発表は、23:00から放送の『DJハマヤーのエンジョイ!青葉シティ』の中で発表するyo~!楽しみにしててくれyo~!それじゃあみんな!23:00にまた会おうze!Bye-Bye!」

DJハマヤーがそう言って手を振ると、モニターから画面が消えて真っ黒になった。


モニターの前に集まっていた客達は、ぞろぞろと店内に散って行く。

『なんで急にヒップホップなん?ラッキッキーて何やねんな?おさるさんやあらへんで?それよりまず先にアフロのお兄ちゃんはしっかりキャラを固めんと~。ファンキーとヒップホップはちゃうで~。一緒にしたらあかんで~。』

倫子は残念そうな顔をした。

「マミちゃん…。」

倫子が真美に話しかけた。

「なに?」

真美は視線を倫子に移した。

「教えて欲しい事がいっぱいあるんだけど…。」

倫子は上目遣いで真美を見ている。

「でしょうね。」

真美はそう言って笑った。




その頃、青葉島上空を上昇するグリーンとプリティは会話の真っ最中だった。

「あー楽しかった~!プリティはどうだった~?」

「疲れたのだ…。」

プリティは機嫌が悪そうだ。

「テンション上がってたもんね~。」

「上がってないのだ。全部演技なのだ。だから余計に疲れるのだ…。」

「それはプリティが、初名乗りで張り切りすぎたせいじゃないか~。」

グリーンはそう言って笑う。

「あれはやり過ぎたのだ…。あの日に帰りたいのだ…。」

暗く沈んだ声でプリティは言った。


「プリティはまだいいよ~。マジカルの時だけ演技してればいいんだからさ~。ボクなんて毎日演技をしているんだぞ~。」

グリーンはうらやましそうに言った。

「普段からボクって言ってたらすぐにバレるのだ。」

「だよね~。それはさすがにマズいよね~。」

グリーンはそう言って笑った。


「はいはーい!迎えにきたわよ~。さっさと乗っちゃって~。」

若い女性の声が、グリーンとプリティのイヤホンに飛び込んできた。

「はーい。」

「はいなのだ~。」

2人がそう言って一気にペダルを踏み込むと、視線の先にコンドル急便と書かれた輸送機が見えてきた。




「いやー。サイコーだったなぁ!」

タンクトップを着たゴリマッチョのいかつい男が、倫子達の座るソファーの隣のソファーに腰掛けながら、隣に座るカジュアルな痩せ男に話しかけた。

春先なのにタンクトップは寒くないのだろうか?


「まさかグリーンちゃんと、プリティちゃんが一緒に来てくれるなんてな~。これは超レアパターンだぜ!今日来たのは正解だったな!」

ゴリマッチョはかなり興奮している。


「俺達は毎週来てるけどな。でもプリティちゃんは週末しか来てくれないもんな!なんせ『週末の妹』だもんな。」

痩せ男もだいぶ興奮しているようだ。

『週末の妹って…そう言う意味やったんか!』

倫子は耳を象のようにして、2人の会話に耳を傾けていると、真美は笑顔でそんな倫子を見守っていた。



「それにしてもグリーンちゃんの薙刀捌き。相変わらず見事だったなぁ…。」

ゴリマッチョは恍惚とした表情を浮かべる。

「名刀『シュパシュパ丸』のシュパシュパ斬り!いいよな~。」

痩せ男もそう言って恍惚とした表情をしている。

『シュパシュパ丸?シュパシュパ斬り?すごいネーミングやな…。』



「グリーンちゃんのミニスカもいいよなぁ…。あの、見えそうで見えない絶妙な感じは、他のマジカルにはないもんなぁ…。」

ゴリマッチョはそう言って目を閉じた。

一体彼の瞼の裏側には何が映っているのだろう?

『ロボットのスカートの中を見てどうすんねんな?そこに何があるん?夢か?希望か?妄想か?そもそもロボットって、ぱんつ履いてるんか?ロボットにぱんつは必要なんか?』



「チラリズムは男の心を掴んで離さない!」

痩せ男は拳を強く握った。

「そう!チラリズムは偉大だ!故にグリーンちゃんは素晴らしい!」

ゴリマッチョもノリノリだ。

『どっちも無茶苦茶な言い分やな…。』

倫子は目を剥いた。



「プリティちゃんのはじけっぷりもいい!」

「たしかに!」

ゴリマッチョは深く頷く。

話題はマジカルプリティに移ったようだ。

「あのキャピキャピ感に敵はない!」

ゴリマッチョは力強く言い切る。

「プリティちゃん無敵!」

痩せ男も力強い。

『プリティちゃんはロボットやで?』



「あんな可愛い妹がいたらいいなぁ…。」

ゴリマッチョはしみじみと言った。

「俺ならなんでも買っちゃうね!どこでも連れてくね!毎晩枕元で絵本読むね!」

痩せ男の魂の叫びだ。

『そやからプリティちゃんはロボットやん…。』

倫子はため息が出そうだ。



「そう言えば昨日は、ブルーちゃんとイエローさんが来てくれたんだってな。」

ゴリマッチョは笑顔で言った。

「ブルーちゃんもいいよなぁ…。あの歯に衣着せぬサバサバとしたもの言いがいい!もちろん、イエローちゃんのおしとやかな感じもいい!」

痩せ男は恍惚とした表情を浮かべている。

『ほならレッドさんもいはるんやろうなぁ…。』

倫子も2人に感化されているのだろうか?

完全にロボットを人間扱いしている。



「レッドさんも最高!久しぶりに見たいなぁ。」

「最近レッドさんを見ないもんな?さみしい限りだ…。」

痩せ男はしんみりとしている。

『やっぱりレッドさんがいたがな!そやけどマジカルってすごい人気やねんなぁ。まるでアイドルやん。ちゅうかなんやかんや言うて結局、全員好きなんちゃうん?推しは誰なん?推しは。』

倫子は呆れている。



真美はさっきからずっと、おかしくておかしくてたまらなかった。

別にゴリマッチョと痩せ男の会話がおかしいのではない。

この島ではよく見かけるし、常に耳にする話だ。

真美はまるで、万華鏡のようにコロコロと表情を変える、倫子の様子がおかしくて堪らないのだ。

倫子に優しい眼差しを送る真美の瞳に涙が潤んでいたが、きっと涙が出るほどおかしかったのだろう。

タツはどうやら山陰地方の出身のようです。



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