第一章 17話 「シュパシュパしてやるー!」
第一章 17話です。
今回は少し長い話ですが、楽しんでいただければ幸いです。
読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
「さぁ!ボクと戦闘を始めようか!」
緑の魔法使いがそう言うと
ウオォォォォォォォ!
突然、大歓声が聖地を包み込み聖地が震えた。
「今度はなに!なんなん!」
倫子はあたふたと周りを見ながら叫んだ!
しかし、倫子の叫び声は大歓声にあっさりと掻き消された。
見れば男性客達がかなり興奮しており、モニターを見ながら両手を上げる者もいれば、歓喜の踊りを踊っている者もいる。
中には抱き合って、互いの背中を叩きながら涙を流している人までいた。
まさに興奮のるつぼ。
まさに熱気の嵐。
まさに狂乱の宴である。
倫子は改めて周りを見回した。
この異常な熱気の中、女性客は相変わらずおしゃべりをしながら笑顔でお茶を嗜んでいる。
よほどこの状況に慣れているのだろうか?
それともただ単に興味がないのだろうか?
ギャップの激しさに倫子は戸惑った。
「キター!マジカルのボクっ娘!マジカルグリーンちゃんキター!」
一人の若い男性客が、両手を上げて叫んだ。
ウオォォォォォォォ!
周りの男性客が、一斉に声をあげる。
「我らが『週末の妹』マジカルプリティちゃんキター!」
別のサラリーマン風の男性客が、負けじと両手を上げて叫んだ。
ウオォォォォォォォ!
再び男性客達が一斉に歓声を上げた。
『なに?なに?なに?なに?』
まるで、ピンポンの激しいラリーを見ているかのように素早く首を左右に振って慌てふためく倫子は、男性客の熱気に気圧されて恐れおののいている。
すると突然歓声がピタッと止まり、店内は一気に静かになった。
その変わり様は異常としか言いようがなかった。
『なに?なに?なに?なんなん?』
余りの状況の変化に、倫子の頭は置いてけぼりをくらっているようだ。
「若い人達は元気がありますねぇ。」
「そうですねぇ。」
「有り余ってますねぇ。」
「本当ですねぇ。」
「若いっていいですねぇ~。」
「そうですねぇ~。」
さっきの2人組の老女がそう話しているのがはっきりと聞こえる
『へ?何?何が起こってるのん?』
男性客達はさっきまでの狂乱ぶりが嘘だったのかのように沈黙した。
男性客達が食い入るような目でモニターを見ていると、いきなり画面にDJハマヤーが現れた。
「みんなー!そろそろ落ち着いたかな~?それじゃあいくよー!」
DJハマヤーは叫んだ。
「なんと!なんと!なんとー!今日のマジカルはマジカルグリーンと、マジカルプリティだぜブラザーズ!」
パチパチパチパチパチ
店内に男性客達の大きな拍手の輪が広がっていく。
モニターの中で、マジカルグリーンは左手を暴走ロボットの方に伸ばし、人差し指をクイッ、クイッと動かした。
「ねぇプリティ。あれ全部貰っちゃっていいかなぁ~。」
グリーンのパイロットはマイクに向かって言った。
バイザーで口元しか見えないが、若い女の子のようだ。
「いいのだ。あげるのだ。」
妙に落ち着いた声がイヤホンに返ってきた。
「1機ぐらい回そうか?」
「いいのだ。いらないのだ。面倒くさいのだ。」
「じゃあこれ全部ボクのだ。」
グリーンのパイロットはそう言うと、嬉しそうに口元を緩めた。
暴走ロボット達の2人の魔法使いを見つめている単眼が赤く、妖しく光っている。
「嬢ちゃん。ちぃとオイタが過ぎたぜ…。」
角付きが貫禄たっぷりに言った瞬間。
ドッ!
聖地が短い笑いに包まれたあと、すぐに沈黙が訪れたが観客達の目は全く笑っていないのが怖い。
『笑うポイントがわからへん…。』
倫子は少し残念そうだ。
「おいヤス!お前は小っこい方をやれ!タツ!お前は俺と緑のやつだ!」
「へい!」
「へい!」
角付きとタツの機体は、棒を片手にマジカルグリーンへと突進すべく、足元から白煙を吐き出しながら車輪を回転させた。
ヤス機も同様にプリティへと突撃をかける。
「1機こっちにくるのだ…。こっちに来るななのだ。」
プリティは冷静な声で言った。
「じゃあそれはあげるよ。」
グリーンは気楽に言った。
「いらないのだ。あっちいけなのだ。」
抑揚のない声でプリティのパイロットは返す。
3機の攻撃はほぼ同時に行われた。
「いや~ん!こっちに来るぅ~!」
プリティがかわいい悲鳴をあげながら体をくねらせつつ、左に伸びる道路の方に走っていくと、対してグリーンは右の道路の方に素早く移動していく。
グリーンとパープルを追いかけるように、暴走ロボットは左右二手に別れた。
「いや~ん!こないでぇ~。」
プリティはそう言いながら、大げさな動きで左に伸びる道路の方に向かって走る。
「かわいがってやるぜぇ~。」
ヤスはそう言いながら、わざとゆっくりとプリティに近づいていく。
その姿は飢えた狼がか弱い子鹿を追い詰める様を彷彿とさせる。
「キャー!こっちに来ちゃいやぁん!」
プリティの悲鳴が街にこだました。
一方、グリーンは角付きが棒で襲いかかってきたところを 薙刀の柄で難なく受け止め、角付きとグリーンがせり合いをしている間に、タツがグリーンを追い抜きグリーンの後ろに回りこんだ。
タツの機体の位置を確認した角付きは、グリーンを突き飛ばすようにしてグリーンから離れると全速力で後退する。
2体の暴走ロボットはグリーンと一定の距離をとりつつ、道路の真ん中でグリーンに挟撃を仕掛けたのだ。
「ま、こうなるよね~。」
3機の間に緊迫した空気が流れる。
「副会長さん動ける?」
ビッグとんとんにグリーンから通信がはいった。
「グリーンちゃん!大丈夫!まだ動けるよ。」
副会長はすぐさま答えた。
「じゃあテヤンデーを連れて基地に戻って。あとはボクとプリティでやるから。」
「ありがとう。そうさせて貰うよ。」
「気をつけてね~。」
グリーンからの通信が途切れると、ビッグとんとんは体でテヤンデーを基地の方へと押していった。
「さぁて。次はどう出てくるかなぁ~。」
グリーンのパイロットが楽しそうに呟いた。
「覚悟はいいか!緑のやつ!」
「2対1だぞコノヤロー!」
暴走ロボットはグリーンに向かって叫んだ。
「へへーんだ!お前達なんかこのシュパシュパ丸でシュパシュパしてやるー!」
グリーンは薙刀を手に暴走ロボットに向かって言った。
パチパチパチパチパチパチ
聖地のモニターの前では、大きな拍手の渦が起こった。
『シュパシュパ丸で!シュパシュパって…なに?』
倫子は首を傾げたが、周りの男性客達はニヤニヤと笑っている。
「何言ってんやがんだコノヤロー!」
角付きがそう叫ぶと、2機の暴走ロボットは同時にグリーンめがけて突っ込んできた。
「これなら逃げられんだろう!」
角付きが叫んだ。
「いっくよー!」
グリーンが薙刀を手に、正面にいる角付きに向かって走り出した。
「バカめ…。」
角付きのパイロットはニヤリと笑う。
いくら自分に突っかかってこようと攻撃を受け止めれば、その隙にタツがグリーンの背中から襲いかかり、ダメージを与えることが出来るだろう。
何しろこっちには車輪が付いているのである。
移動スピードと機動力は、比べものにならないほどこちらの方が上だ。
現にタツはかなりのスピードで、グリーンの近くまで迫りつつある。
あとは自分がグリーンの攻撃を受け止めて、動きを止めるだけだ。
角付きのパイロットがもう一度ニヤリと笑った時、グリーンが薙刀を大きく振りかざして角付きに向かってジャンプした。
華麗に宙を舞うグリーンは、バーニアをふかしながら一気に距離を詰める。
「飛んだ!」
角付きが慌てて頭をあげ、グリーンの姿を追いかけた。
その時、角付きのメインモニターを巨大な影が埋め尽くした。
「うわ!」
パイロットは思わず手で顔を庇った。
グシャッ!
という大きな音と共にメインカメラの映像が真っ暗になったかと思うと、画面がサブカメラに切り替わった。
グリーンが角付きの頭を左足で踏みつけながら、さらに高く跳んだのだ。
「俺の頭を踏みやがった!」
プライドだけは高い角付きのパイロットが叫んだ。
「アニキー!」
後ろで見ていたタツが叫ぶ。
高く宙に浮いたグリーンのパイロットは素早く手足を動かしつつ複雑な操作を同時にこなしながら、巧みにグリーンを操る。
グリーンは空中で綺麗に回転をしながら、握った棒を高く振りかざす角付きの肩口に切り込んだ。
ゴン!
大きな音をたてて肩口から斬り落とされた角付きの右腕は、握った金属の棒ごとそのまま道路に落下した。
頭はグリーンに踏まれてぺちゃんこになっていて、見る影もない。
暴走ロボットの右腕を切り落としたグリーンは、空中で回転しつつ道路に着地し左膝を地面に付いた。
グリーンは素早く立ち上がると振り返りもせず、腰を捻りつつ右足をくの字に曲げると、角付きの背中めがけて思い切り右足を伸ばしキックをぶちかました。
グリーンのキックをくらった角付きは、バランスを崩しながら激しく前に倒れ込む。
「うわ!」
「うわぁ!」
角付きとタツは互いに声をあげながら衝突し、抱き合うようにして道路に倒れた。
グリーンは振り向きもせず、そのままプリティの元へと走り去る。
『綺麗な動きやなぁ…。まるで人間…ちゃうな。トップアスリートみたいな動きや…。』
モニターを凝視しながら、倫子はそう思った。
その頃、別のドローンカメラがプリティとヤスの攻防を映し出していた。
別の画面ではもえぎ色の法被を着た5人組の男達が何かを手に持ち、ビルの屋上でなにやら変わった踊りを踊っている姿がちらっと映ったが、すぐに違う画面に切り替わった。
プリティはなよなよとした動きで移動を続けていたが、道路を背にすると動きを止めてヤスの機体の方に体を向け
「いや~ん。こわ~い。」
と言って、ヤスの機体を見ながら怯えた素振りを見せた。
「捕まえたぜぇ~。」
ヤスは楽しげにそう言うと金属の棒を振りかざし、プリティに覆いかぶさるように襲いかかった!
「いや~ん。」
プリティかわそう言って華麗にバク転をしながら後ろに下がろうとしたその時、プリティの右足のつま先が前傾斜勢で突っ込んで来たヤスの機体の顎先にクリティカルヒーット!
ヤスの機体は首元からオイルや冷却水を撒き散らしながら、頭を蹴り飛ばされた。
「こないでぇ!」
プリティはそう叫ぶとそのままバク転を続け、ヤスの機体から大きく距離をとった。
最後のバク転の際に高く跳びあがり、両足をハの字に大きく開いて着地をしたプリティは、腰を落としながら左手を横に開きスティックを握った右手を地面につけた。
その体勢のままゆっくりと顔を上げたプリティはヤスの機体を見たが、頭がなくなったヤスの機体を見たプリティは、一瞬固まったように動かなくなった。
「キャー!ごめんなさ~い!首がとれちゃった~、」
プリティはそう言って体勢を整えたかと思うと、口元を両手で隠して驚いたような素振りを見せた。
「面倒くさいのだ…。」
プリティのパイロットはコクピットでぼそっと呟いた。
「ちくしょう!やりやがったな!」
ヤスは頭に血が上り、モニターに映るプリティを睨みつけた。
とはいえ、本来睨みつけるべき目は頭ごと道路に転がっているのだが…。
ヤスがプリティを睨みつけていると、突然、プリティがおかしな行動をとった。
「ん?」
ヤスが目を細めてプリティをよく見ると、なぜかプリティは伸ばした右手の人差し指をチョンチョンと前後に動かし、ヤスの機体の後ろを何度も指さしていた。
「なんだ?」
ヤスが目を擦りながらそう言うとプリティが
「うしろ、うしろ。」
と言いつつ道路の端に移動した。
「え?うしろ?」
そう言ってヤスが後ろを振り返ると、薙刀を持ったグリーンがもの凄いスピードでこちらに向かってやってきていた。
「うわー!来たー!」
慌ててヤスは車輪を全回転させながら、プリティのいる方へと逃げ出した。
この瞬間、ヤスは追う者から追われる者へと変わったのだ。
ペダルを思い切り踏み込み、さすがに追いつけないだろうと思ったヤスがバックモニターに目をやると、グリーンがさらに物凄いスピードでこっちに向かってくる。
グリーンはバーニアから青白い炎を出しながら宙に浮き、道路の上スレスレを滑空していたのだ。
「うそだろ~!」
ヤスは目の玉が飛び出しそうなほど驚いた。
「つーかまーえたー。」
グリーンはそう言うと、さらにスピードをあげた。
グリーンとヤスの機体の距離はあっと言う間に縮まってゆき、ヤスの機体はグリーンの射程圏内に入った。
「いやぁぁぁぁ!」
焦るヤス。
「GAMEOVERだよ!」
にやりと笑うグリーン。
「アニキィー!助けてぇぇぇぇ!アニキィー!」
泣き叫ぶヤス。
「ボクの勝ちだ。」
楽しそうに勝利宣言をするグリーン。
目にも止まらぬ早業で、追いかけながらヤスの機体を何度も斬りつけるグリーン。
斬られながらも必死で滑走するヤスの機体は、グリーンに関節ごとに腕を切り落とされ、地面に部品をばらまきながらも進んでいく。
まさにロボットの活け造りだ。
ヤスの機体が哀れに見えてくる。
グリーンが頭と両腕をなくしたヤスの機体に追い着いた時、グリーンが元気よく言った。
「秘技!シュパシュパ斬りー!」
グリーンがそう言った途端、グリーンはヤスの機体を華麗な薙刀捌きで何度も斬りつけた。
「アニキー!」
断末魔の叫びをあげ、ヤスの機体はバラバラになって地面に落ちていった。
グリーンはヤスの機体が視界から消え去ると、すかさず華麗なターンを決めてプリティのいる所へと戻っていった。
「大丈夫かい!プリティ!」
プリティの元に着いたグリーンは、心配そうに声をかけた。
「助けてくれてありがとう!こわかったぁ~。」
そう言ってプリティは俯きながら両手で顔を覆った。
グリーン 「へっ。」
プリティ 「へっ。」
コクピット内の2人がそう言って口元を歪めた事は、2人以外誰も知らない。
「それじゃあプリティ。あとはボクに任せて!」
「うん!わかった!気をつけてね!」
プリティは大きく頷いた。
「それじゃあね!」
グリーンはプリティに手を振ると、角付きのところへと向かった。
「いってらっしゃ~い!」
プリティは手を振りながらグリーンを見送る。
パチパチパチパチパチパチ
聖地に盛大な拍手が起こった。
拍手を終えた男達を倫子がよく見てみると、全員が全員、片手にタブレットを持ち、真剣な顔でタブレットを操作している。
『タブレットで何してんのやろ?』
倫子は頭をひねった。
戦闘シーンが上手く書けているか心配です。
よろしければ評価をお願いします。
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