第一章 16話 「おっまたせ~!」
第一章 16話です。
さあ!ロボットバトルの開幕です。
読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
テヤンデーとビッグとんとんは、揃って交差点に向かって移動し始めた。
交差点を迎撃ポイントにするつもりだろう。
青葉島は緊急警報が発報されると、普段とは違う顔を見せる。
警報が鳴ると同時に1車線4m、片側4車線の広い道路の中央分離帯を走る、1m程の壁が次々と地面に吸い込まれていき、同時に信号機の信号の部分が全て垂直に跳ね上がり、支柱ごと地面に飲み込まれていく。
すると走行中の車は焦ることもなくゆっくりと走りながらナビの案内に従い、次々とナビに指示された建物の中へと入っていき、あっという間に車道から車が消え去さると、歩道を歩く人々も焦ることもなく身近な建物の中へと入っていくのだ。
しかし観光客なのだろうか?
中には路上で慌てふためいている人もいて、周りの人達がその人の手を引き優しく建物の中へと誘導すると、その人はおとなしくついていった。
中央通りは緊急警報が鳴ってから2分もからないうちに、人っ子一人いないゴーストタウンとなったのである。
これらは人命を守り街が破壊されるのを防止する為であり、観光客が逃げ遅れたりしないよう島民達が避難場所まで誘導し、なおかつ建物が破壊されないように前もって障害物を隠しているのだ。
そうでもしないと街が破壊される度にいちいち直していたら、青葉島は毎日工事中になってしまう。
テヤンデーとビッグとんとんが、交差点を迎撃ポイントにするのにも理由がある。
交差点の中は広く、ロボットが暴れても比較的被害が出にくいからだ。
もちろん道路と交差点は同じ幅だが、交差点内はロボット同士のバトルを想定して作られており、街の施設の中でも一番頑丈に出来ている。
交差点はいわばロボット達の戦場となるのだ。
「そろそろ見えてきますよ。」
「さすがに2対3じゃ分が悪い。誰か出せねぇのか?」
「ハリー君はコンテストで都内ですし、郷田君は今頃、いびきをかいて寝てるでしょう。昨晩は団体さんが来て忙しかったらしいですから。健斗君はまぁ…。いつも通りですね。」
「あとは夜勤組だけか…。とりあえずは、2人でやるしかねぇな…。」
貫徹は考え込んだ。
「いざとなればたたき起こしましょう。」
副会長は容赦ない言葉を吐いた。
叩き起こされる方の身にもなるがいい。
「仕方ねぇ。気は引けるが最悪そうさせてもらうしかねぇな。」
「会長!来ました!」
副会長がモニターを見ながら叫んだ。
貫徹が慌ててモニターに目をやると、モニターには正面から迫ってくる3機が映っている。
角付きが先頭で三角陣形を組んでいる。
「初顔だな。」
貫徹はモニター越しに、単眼を赤く光らせる角付きを睨みつけながら言った。
「見た目は作業用っぽいですね。おそらく外装を変えてるでしょうけど。ローラーが付いてますから多分、小松崎エレクトロニクスのカスタムじゃないですか。」
「丸々ハンドメイドってわけじゃねぇようだな。しかしなんだあの角は?」
「角は男のロマンでしょう。」
「違ぇねぇ。青いところが殊勝じゃねえか。」
貫徹はそう言うと、にやりと笑った。
「そこのロボット達。止まりなさいブー。」
ビッグとんとんはテヤンデーの前に出ると、暴走ロボット達に向かって言った。
『ブーってゆうた…。』
モニターを見ていた倫子は唖然となった。
唖然とする倫子の顔を見ながら、真美は声を殺して肩で笑っている。
ビッグとんとんの声を聞き、暴走ロボット達は交差点内に侵入すると急停止し、ビッグとんとんとテヤンデーと対峙した。
「ブーってなんだこの野郎!ふざけやがって!」
角付きが叫んだ。
『そう言われてもしゃあないなぁ…。』
倫子は納得している。
「ふざけているのは君たちの方だブー。早くロボットから降りて投降しなさいブー。」
「今ならまだ罪は軽いぞ。さっさと投降しろぃ!」
テヤンデーは眉をつり上げ、ロボットを睨みつけながら十手を向けた。
「うるせー!そこをどけ!」
「邪魔するな!」
「やっちゃうぞコノヤロー!」
暴走ロボット達は口々に叫んだ。
「やれるものならやってみるブー。」
そう言ってビッグとんとんは首を左右に振りながら、短い両腕を上下にバタバタと振った。
明らかな挑発行為である。
『え?なんで怒らせるのん?なんで?』
倫子は訳がわからなくなった。
「おちょくりやがって~。喰らいやがれ!」
角付きはビッグとんとんに襲いかかると、持っている棒で何度も何度も繰り返しビッグとんとんを叩いた。
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
硬い金属音があたりに響く。
しかしビッグとんとんは和やかな笑顔を浮かべたまま、微動だにせず呆然と立っている。
ガンジーも真っ青な無抵抗主義だ。
必死でとんとんを叩続ける角付き。
笑顔で叩かれ続けるとんとん。
黙って見ている2機の暴走ロボットと、テヤンデー。
「このこのこのこのこの!」
角付きは必死でとんとんを叩き続けるが、とんとんの外見に変化はない。
よく見るとロボットの持つ棒が少しづつ曲がってきている。
「かったいなコノヤロー!おい!全員でやるぞ!」
「おう!」
「おうよ!」
角付きの号令で3機のロボットがビッグとんとんを囲みタコ殴り、いやぶたさん叩きを始めた。
「ワッハッハッハ!斧ならまだしもそんなほっそい棒きれなど屁でも無いわ!ビッグとんとんの防御力を舐めるなよ!貴様らとはモノが違うのだよモノが!」
副会長はそう言って高らかに笑ったあと、スピーカーのスイッチをONにした。
「わははははは!どしたどしたブー?こんなものなのかブー?全然平気だブー!痛くも痒くもないブー。」
ビッグとんとんは短い両手をバタバタとさせながら首を左右に振った。
「舐めやがってコンニャロ~!」
3機のロボットは叩くペースをあげた。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
激しい金属音が響き渡る中、副会長がマイクに向かって叫ぶ。
「会長!今がチャンスです!」
「よっしゃ任せろ!」
会長はそう叫ぶと、テヤンデーをビッグとんとんの方へと向けた。
テヤンデーは三頭身の体を揺らし、短い手足をバタバタと動かしながら走りだすと、ビッグとんとんをタコ叩きをしているロボットの後ろに回った。
「足さえ殺しゃあ問題ねぇ!」
会長がそう言うと同時に、テヤンデーが十手を持つ右手を高々と振り上げた。
「喰らいやがれ!」
会長がそう叫んだ途端、テヤンデーの動きが止まった。
「なんだ?どうしたんだ?」
会長は慌ててハンドルをガチャガチャと動かし、何度もペダルを踏んだが、テヤンデーは一向に動かない。
「おいおい!どうしたってんだ!テヤンデー!」
会長は手当たり次第にボタンを押し始めたが、緑のボタンを押した時ハチがいきなり喋りだした。
「おやびん!てぇへんだ!」
「てぇへんなのはわかってんだよハチ!動けこんちくしょう!」
会長がそう言ってコントロールパネルを叩いた!
パネルに大きなヒビが入る。
テヤンデー。
完全に沈黙…。
「やっちまったー!おい模型屋ー!全然メンテが出来てねぇじゃねぇかー!」
会長は全てを模型屋になすりつけた。
「会長?どうかしましたか?」
副会長が会長に尋ねた。
「テヤンデーが動かねぇ…。」
「えぇぇぇぇ!」
「うんともすんとも言わねぇ…。」
「ど、ど、ど、どうするんですか!ビッグとんとんは防御しか出来ませんよ!」
副会長は泣きそうな顔で叫んだ。
副会長、挑発はうまいが実はかなりの小心者なのである。
残念なことにビッグとんとんは包丁を持ってはいるが、攻撃は一切出来ない。
その証拠にビッグとんとんの持つ包丁は、硬い金属で出来てはいるが刃は入っていない。
これだけ大きな包丁に刃を入れたら危なくて仕方が無いのだから、当然と言えば当然の事であろう。
そもそもビッグとんとんは、ぬいぐるみになるようなほど丸っこいフォルムである。
手足も短く指もなければ肘の関節すら無いのだから、攻撃など出来るはずもない。
唯一の武器は巨体を生かした体当たりのみであるが、体当たりは禁じ手となっている。
力余って建物にでもぶつかれば、被害は甚大なものになるからだ。
ビッグとんとんに出来る事。
それは「挑発」と「防御」のみである。
ビッグとんとんは語尾にブーをつけて相手を挑発し、腹を立てた敵の攻撃を一身に受けることしか出来ないのだ!
商店街のガーディアンチームの基本戦術はこうだ。
相手を挑発したビッグとんとんが攻撃を受けている間、他の仲間のロボット達が敵の関節を殺し、動けないようにするだけなのだ。
実に単純明快である。
ビッグとんとんの役割。
それすなわち囮である。
ビッグとんとんはずば抜けた防御力をもつ、優秀な囮なのだ。
だがしかーし!仲間からの援護のない囮など、ただのサンドバッグでしかない。
どんなに頑張っても、硬めのサンドバッグでしかないのだ!
今や囮からサンドバッグと化したビッグとんとんを、3機の暴走ロボットが容赦なく棒で叩きまくる。
「何とかしてくださいよぉ~。このままじゃ壊されるかもしれませ~ん。」
副会長は今にも泣き出しそうな声を出した。
よく見れば鼻水まで出ている。
「ちっと待っててくれ!すぐに郷田を呼ぶ!」
会長はそう言うと、お腹のポケットからタブレットを取り出し、電話をかけ始めた。
「早くしてくださいよぉ~。」
実に情けない声だ。
3機のロボットにタコ叩きにあいながら、それでもビッグとんとんは声高らかに言った。
「なんだなんだブー?遠慮すんなブー!もっとガンガンこいやブー!」
副会長はやけのやんぱちだ。
その証拠に今にも泣き出しそうな顔をしている。
鼻水も出ているが。
「さすがはビッグとんとん!」
「かっこいいぜ!」
「男の中の男だ!」
「いよ!島の食いだおれロボ!」
副会長の気持ちなどつゆ知らず。モニターの前の男達はビッグとんとんに熱い声援を送った。
「クソ!全然繋がらねぇじゃねぇか!こうなったら店に直接電話をしてやる!」
会長はそう言って、電話をかけ直した。
「もしもし?俺だ!山本だ!ナオコさんかい?旦那はいるかい?なにぃ?風呂に入ってるだぁ?今すぐこっちに呼んでくれ!はぁ?今入ったとこだぁ?とんとんが危ねぇんだよ!すぐに来いって言ってくれ!頼んだぜ!」
「あぁ!早く助けに来てくれぇ…。お腹が痛くなってきたよ…。」
副会長がそう言って、お腹をさすった時だった。
「とお!」
という掛け声と共に、ビッグとんとんの後ろのビルから大きな黒い影が現れた!
影はビッグとんとん達を軽々跳び越えて前方宙返りをしながら華麗な着地を決めると、3機のロボットはタコ叩きを止め跳んできた影に目をやった。
「なんだありゃ?」
角付きが言った。
そこに立っていたのは、朱色の長い棒を持った緑の魔法使いだった。
緑の魔法使いのとんがり帽子の鍔は短く、顔のバイザーが目元までしかないので涼やかな口元が見える。
スカートの裾は短く、まるでミニスカートを履いたその下にスパッツを履いているようだ。
大胆にも敵に背中を見せながら、緑の魔法使いが朱色の長い棒を右肩に担ぐと、棒の先で折りたたまれていた刃が真っ直ぐと伸び、棒が薙刀になった。
緑の魔法使いは左手を腰に当てると首を軽く左に回し、肩越しに暴走ロボットを見た。
緑のバイザーに光が反射してキラリと光る。
「た、助かった~。」
副会長は安堵の息を漏らすと、そのままシートに深く沈んでいった。
「グリーンちゃん!来てくれたのかい!」
会長がシートから身を乗り出しながら叫んだ。
「わたしもいるよ~!たぁ!」
掛け声と共に、ビルの影から今度は紫の魔法使いが跳んできた。
紫の魔法使いは空中で体をひねると両手を広げ、見事な着地を決めた。
紫の魔法使いのバイザーも、半分しかなく口元が見えている。
左の腰にはアニメに出てくる魔法少女が持っていそうなステッキを佩いていて、スカートの裾は長いが、緑の魔法使いと比べると、サイズが一回りから二回りほど小さい。
「お久しぶり~!全国のお兄ちゃん達~!元気だったぁ?」
紫の魔法使いはそう言って、両手を大きく振る。
「プリティちゃんも来てくれたんだぁ。」
副会長は半泣きになりながら嬉しそうに言った。
モニターを見ていた倫子がモニターを凝視したまま呟いた。
「魔法…少女…?」
その時、緑の魔法使いが言った。
「さぁ!ボクと戦闘を始めようか!」
テヤンデーとビッグとんとんはどうでしょうか?
いろいろなロボットを出したいです。
よろしければ評価をお願いします。
かなりやる気になります。




