第一章 14話 「Inside rule」
第一章 14話です。
毎回、4000文字程度で書いています。
(多少、ズレることもありますが。)
稚拙な文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
読んでくれてありがとうございます。
m(_ _)m
土曜日の朝の商店街は、時間が早い事もあり人影もまばらで、真美と一緒に熱血屋を出た倫子が空を見上げると、かなり高い位置に青い屋根が見えた。
かなり大きなアーケードだ。
『大きな商店街やなぁ~。道幅も広いしお店もいっぱい並んでる。昨日はショックが大きすぎて、どうやって熱血屋まで来たのかも覚えてへんかったしなぁ~。』
倫子は熱血屋の前から商店街を見渡すと、商店街にはおしゃれな造りのブティックがあり、ショーウインドウには様々な服がおっしゃれーに並んでいた。
『おしゃれなお店やな~。あとで絶対に行こう。』
おしゃれセンサーが作動した倫子は決意した。
倫子がキョロキョロと周りを見渡すと、他にも落ち着いた造りの本屋、シックな雰囲気の喫茶店、ファンシーなかわいい雑貨店なども見えた。おしゃれなケーキ屋さんもあるようだ。
しかしどのお店もあか抜けていておしゃれだ。
『ん?』
倫子は熱血屋の正面に建つ、派手なカラオケ店の看板に目を奪われた。
正面玄関に掲げられた大きな看板には、リーゼントにサングラスをかけ、白いピチピチの衣裳を着た小太りの男が、スタンドマイクを握り熱唱している姿が描いてある。
両腕にたくさんのヒラヒラが付いているのが謎だ。
「カラオケ『BIGVOICE』?」
倫子は思わず店名を口にした。
「あぁ。熱血屋のお得意様よ。」
真美はさらりとおかしな事を口にした。
「え?お得意様?」
真美の言葉を聞き、倫子は耳を疑った。
なぜカラオケボックスが食堂のお得意様なのだろう?
「あの店で提供される食事は全部、熱血屋から出前を取ってるの。ドリンクだけが自前なのよ。」
真美はあっけらかんと言った。
「それは商売としてはありなの?それで儲かるのかな?」
「儲かるも何も、出前の値段の2割増で出してるからね。売れたら売れただけ儲かるわ。」
「それって転売じゃ…。」
「ん~。同じ料理でも見た目も使っている材料も違うし、転売にはならないんじゃない?料理は全部、BIG VOICEさんの食器で出してるから地元の人たちは別にしても、観光客にはわからないわ。結構人気があるのよ?料理のおいしいカラオケだって。」
いやいやいや。
果たしてそれを人気と受け取って良いのだろうか?
「へぇー。」
倫子はカラオケ「BIG VOICE」の看板を、まじまじと眺めながら声を漏らした。
熱血屋がカラオケボックスに、料理を卸しているという解釈でいいのだろうか?
それではまるで花街のお茶屋さんだ。
「その右隣に建っているビルが『アオバシティの聖地』よ。」
「アオバシティの聖地?」
『何の聖地なんやろう?』
倫子がそう思いながらビルを眺めると、6階建てのビルの看板には可愛らしい美少女アニメのイラストが描いてある。
「これって…。」
倫子はなんとなく理解が出来た。
「サブカルチャーの聖地なの。あのビルの中のほとんど全部がアニメとロボット関連のお店なのよ。」
「ほとんど全部がアニメとロボット!」
倫子は絶句した。
大きなビル丸ごととはすごい!
東京では当たり前かもしれないが、少なくとも京都にそんなビルはない。
「そ。あたしもよくは知らないんだけど、アニメとロボットのグッズは何でも揃うんだって。オリジナル商品もあるそうよ。最上階は多目的ホールになっていてね。しょっちゅうイベントやライブなんかをやってるわ。」
「へぇ~。」
倫子はカラフルなビルを見上げながら言った。
「週末になると本土から沢山のお客さんが来るの。ツアーまであるのよ?」
「ツアー!」
倫子は目を剥いた。
「二泊三日のツアーよ。」
「二泊三日!」
倫子の目はこぼれ落ちそうだ。
「金曜日の夜に島に来て日曜日の夕方に帰るの。ツアーのほうが、個人で来るよりホテル代が安くなるのよ?しかも青葉島の特産品のお土産付きだから毎週凄い数の人が来るのよ。もうすぐしたらこのアーケードも人でごった返すわよ。」
「そうか…。だからホテルが取れなかったんだ…。」
倫子は納得した。
「それじゃあ、週末は車も多いんだろうね。」
「青葉島は特殊車両と運搬車両以外は、本土からの車両の乗り入れ禁止よ。バイクどころか自転車も駄目なの。そもそも、島と本土は陸路で繋がっていないし、交通手段はフェリーと高速艇だけよ。ドローンは使えないしね。」
「自転車もダメなの?」
「自転車だけは誓約書を書けば許可されるの。『何が起きても全て自己責任です。』ってね。島民以外がこの島で自動車を運転したければ、必ず講習を受けないと駄目なの。」
「受けないとどうなるの?」
「無許可運転で処罰されるわね。講習を受けていても、事故なんか起こしたら最悪よ。たとえ被害者になっても保険は下りないし、加害者側ならとんでもない金額を請求されるわね。ま、レンタカー自体が無いんだけど。」
「ええぇ!」
倫子は驚くのに疲れてきた。
「街中をロボットや工事用の特殊重機がうろうろしているのよ?車やバイクで走ったら危ないじゃない。これは島を訪れた人達の安全を守るためのルールの1つなの。」
「言われてみればそうか…。」
ロボットが闊歩する街ならではの話なのだろう。
「島民はそんな事に慣れているけど、観光客は慣れてないでしょ?いくら島民でも何が起こるかなんてわからないんだし、対処が難しいのよ。」
『なんか…。海外の国の話みたいや…。』
倫子はそう思ったがそんな国はどこにもない。
「島の人達は観光客が島に来てくれることが嬉しいし、島を楽しんでもらいたいと思っているからこその、厳しいルールなのよ。」
「そっか~。」
「リンだって楽しみにしながら行った旅行先で、嫌な思いはしたくないでしょ?そんな思い出はいらないでしょ?」
「もちろん。」
「そういうことよ。あ、あとね。この島には全国チェーンの飲食店がないのよ。」
「え?一軒もないの?」
「一軒もないわ。」
真美にそう言われ、倫子は慌てて商店街を見回す。
ない!確かにない!
ハンバーガーもフライドチキンも牛丼もない!
さらにうどんもなければ餃子もない!
幼い頃から見慣れた看板は一枚も見当たらない。
「餃子…。」
倫子はがっくりと肩を落とし一言呟いた。
「餃子?リンは餃子が好きなの?」
「好きと言うか、ソウルフードと言うか…。」
倫子は力無く答えた。
神楽坂家では週1で「お持ち帰り餃子day」が設けられているので、島に餃子のチェーン店がないのは倫子としては大変ショックだった。
「まぁいいわ。いつまでも熱血屋の前にいると邪魔になるし、商店街を見て回りましょ。」
真美がそう言うと、2人は連れ立って歩きだした。
2人は商店街の端から端までを歩いたが、距離にして500mくらいはあるだろうか?
倫子が思っていたよりも長かったし、細い脇道が何本もあって探索するのはかなり大変そうだ。
細い脇道を見ると、こぢんまりとした居酒屋やBARがいくつも並んでいて、いかにも裏通りっぽい雰囲気だ。
夜ともなればBARの看板に灯が灯り、居酒屋には暖簾がかかっていい雰囲気になるだろう。
倫子もお酒が飲めるようになれば行ってみたいと思っているが、お酒が目当てではない。
酒の肴には珍味も多いと聞いているので、倫子の狙いはそっちである。
「それにしても朝早くからお店が開いてるね。」
倫子は建ち並ぶ店舗を見ながら言った。
朝の8時過ぎにも関わらず、ほとんどの店舗が店を開けている。
「そうね。平日はそうでもないけど、どこの店も土日と祝日は早くから開けてるわ。」
「観光客目当てなの?」
「それだけじゃないんだけどね。」
真美はそう言って笑った。
「京都は観光名所じゃない?観光客が多いんでしょ?」
「うん。外人さんの観光客も多いけど、京都に住んでる外人さんも多いよ。」
「へぇ~。そうなんだ。」
真美は驚いている。
「この時間だと作務衣を着て、喫茶店でモーニングを食べている外人さんをよく見掛けるよ。」
「そうなの?作務衣を着てるところがすごいわね。」
「京都でも場所にもよるけれど、市内の中心部なら珍しくないよ。」
「この島にもたくさんの外国人がいるけど、作務衣を着てる人はいないわね。京都に住む外国人は風情があるのね~。」
「そうかもね。」
「そうそう。この島には地下があって、複雑な迷路になっているの。」
「迷路?なんで?」
倫子は首を傾げる。
「そ。迷路。地下には近寄っちゃダメよ。間違いなく迷っちゃうからね。それに危ない人も多いし、治安も良くないからね。特に南の地下には近寄っちゃダメ。」
「危ない人?治安が悪いの?」
「半分は噂話なんだけどさ。この島は世界中から狙われているらしいのよ。」
「え?」
真美はなんて怖い事を言うんだろう。
まるでサスペンスドラマみたいではないか。
「青葉島は世界一ロボット産業が発達してる場所でしょ。それを狙って、いろいろな国や企業からスパイが来るんだって。」
「ええー!」
『まんまサスペンスドラマやんか!』
倫子は内心焦った。
「で、そいつらが地下に潜っているわけなの。」
「うそー!」
「半分は噂話よ。でも信憑性がないとも言えない話でしょ?だから地下には近寄っちゃダメよ。」
「う、うん。でも地下の迷路ってそんなに広いの?」
「正確な広さはわからないの。青葉市の土木課でも完全には網羅出来ていないらしいわ。かなり深い場所もあるんだって。」
「凄いね。誰が作ったんだろ。」
「昔ね。青葉島に地下鉄を敷く工事をしていたの。青葉島は結構大きいから地下鉄があったら便利だろうって。」
「そうなんだ。」
「ところが工事の途中で、当時の市長が捕まっちゃったのよね~。」
「えぇ!」
「地下鉄工事絡みの収賄事件でね。これが原因で地下鉄工事は頓挫しちゃってね。地下の迷路はその名残なのよ。」
「そうなんだ。」
「かなりひどいことをしてたみたいよ。市長の家族どころか親類縁者まで一人残らず島から出ていったもの。」
「すごいね…。でもなんで埋めちゃわないのかな?」
「埋めるのにもお金がかかるからね。」
「そっか~。そうだね。」
「許可されていない地下への出入り口は、厳重に封印されているけど絶対に中に入っちゃダメよ。」
「う、うん。」
倫子は大きく頷いた。
倫子はここまで話を聞かされれば、地下に行く気になどなれくて当たり前だろう。
倫子達が商店街の入り口に着いた時、倫子はあることに気がついた。
「マミちゃんこの建物はなに?すごく固そうだね。」
倫子が真美に尋ねた。
アーケードの入り口の両側には大きな建物が建っており、その壁には島の風景とともに『ようこそ!アオバシティロード商店街へ!』という文字が大きく書かれているが、壁自体はなにやら固そうな金属で出来ている。
「これ?これはガーディアンの出入り口よ。」
「ガーディアンの出入り口?」
「みんなはガーディアンベースって呼んでいるわ。ここからガーディアンが出動するの。」
「この中にガーディアンが入っているんだ。」
そう言って倫子は建物を見上げた。
「正確には地下にね。さっき地下鉄の話をしたでしょ?」
「うん。」
「この建物の下は元々地下鉄の駅になる予定だったの。『中央通り商店街前』っていう駅なんだけどさ。今はそこを改装してガーディアンの格納庫として使ってるのよ。整備や修理もするらしいからガーディアン工場?ガーディアンの基地になるのかな?」
「すごいね!秘密基地みたい!」
倫子は目を輝かせた。
「そう?いまいちよくわかんないわね。」
言葉通り真美は『よくわかんない。』といった顔だ。
「そうだ!ガーディアンで思い出した!」
倫子は突然、大きな声を出した。
「なに?なに?」
真美が驚きながら尋ねる。
「マミちゃんごめん!ちょっと教えて。」
倫子は真剣な顔つきで、真美に言った。
もうちょっと。
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