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第5章  「魅惑の京都旅行」 第1話 「神楽坂倫子の悩み」

新年明けましておめでとうございます。


第5章の始まりです。



いつも読んでくれてありがとうございます。


 <(_ _)>



夏休みに入り、倫子は悩んでいた。

試験の方は何とかなったし、ロボット免許も取れたので大学の方は問題はない。

しかしそれにしても未祐はすごかった。

試験勉強中、家庭教師をやってくれた未祐はまさに天才。

いや、倫子にとっては救世主であった。

 

真美と二人、倫子の部屋で試験勉強をしていた時である。

「ねぇリン。ミユを呼ぼうか。」

真美は教科書を睨みつけながら、目の前に座る倫子に言った。

「え?なんで?」

真美からの突然の提案を聞き、倫子は顔をあげて真美の顔を見た。

倫子は不思議だった。

未祐が頭がいい事は知っているが、いくらなんでも大学の試験勉強である。

中学生の未祐には荷が重くないだろうか?

倫子は最初そう思っていた。


「呼べばわかるわ。ちなみに1回につきショートケーキ1個だからね。」

そう言って真美は笑った。

「う、うん。」

倫子は頷いた。

「あ、もしもしミユ?今時間ある?……。だったら今からちょっと教えてよ。うん…。うん…。今からリンの部屋に来て。」

真美が未祐に電話をすると、しばらくしてから未祐が倫子の部屋にやって来た。


未祐は長い髪を下ろし、薄いパープルのスウェットの上下姿で両手いっぱいに本や雑誌を抱えている。

「本読みながらでもいいか?」

「いいわよ。報酬はいつものでいい?」

「それでいいのだ。」

「それじゃあ早速。ここなんだけどさ…。」

真美はそういうと、ロボット理論の本を広げて指を指した。

倫子も理解出来ていないところだったので、慌てて倫子も同じページを広げた。


「どれなのだ?」

未祐は本を床に置くと、本をのぞき込んだ。

「いまいち意味がわかんないのよね~。」

真美は口を尖らせながら言うと、未祐は本を手に取り目を通し始めた。

「なんなのだこれは?要点がまとまってないのだ。わかりにくいのは当たり前なのだ。」

 未祐は大学教授の買いた本を、一言で一刀両断にした。

「これは…。」

未祐は要点をまとめてスラスラと説明を始めた。 


未祐の説明を聞いているうちに、倫子の口がだんだんと開いていった。

早い!丁寧!わかりやすい!

未祐は三拍子揃った牛丼屋ならぬ、優秀な家庭教師だったのだ。

『未祐ちゃんが塾でも開いたら、大儲け出来るんちゃうやろか?』

倫子は真剣に思った。

そして倫子の悪い癖が出た。



長い金髪をお団子頭にして、小洒落(こじゃれ)た金縁メガネをかけた女性がいる。

バリバリのスーツを着て大きなバインダーを胸に、ハイヒールを履いてカツカツと音を立てながら歩いている。

「先生!うちのトオルちゃんは、合格出来ますでしょうか!」

「先生!うちのケイコも!」

「先生!うちのカツノリもお願いします!」

「先生!うちのタダスケも~!」

廊下を歩く未祐を、後ろから追いかけるお母様方が、必死の形相で叫ぶ。


まっすぐ前を向き胸を張って歩く女性。

必死で追いかけるお母様方。

何事かと様子を窺う、廊下を歩くその他大勢のギャラリー。

 

そんな中女性は突然立ち止まり、振り返ってクールにこう言うのだ。

「ご安心くださいお母様方。絶対に私がお子様達を志望校に合格させてみせますわなのだ。」

右手でメガネを、クイッとさせながら…。

「ありがとうございます!先生!」

「よろしくお願いします!先生!」

「六本木先生様~!」

「六本木大先生様~!」

廊下に跪き、手を合わせながら涙を流すお母様方。

ニッコリと微笑む六本木大先生。

パチパチと拍手を送るその他大勢のギャラリー達。


くだらない…。

本当にくだらない妄想だ…。

実にくだらない妄想ではあるが、倫子の顔はだらしなく崩れている。

大人になったらと想定しているわりに、今の未祐の姿で妄想しているからだろうか?

それよりタダスケって誰だ?お奉行さまか?



「リン?どうしたの?」

真美は心配そうに、倫子の顔をのぞき込んだ。

「え?な、なんでもないよ?」

倫子は慌てて、手を振った。

「今から晩ご飯の事でも考えてたの?」

真美は笑いながら言った。

倫子の食いしん坊キャラは完全に定着したようだ。


「今のリンちゃんはかなりのアホ面なのだ。」

未祐は倫子にはっきりと言った。

「あ、あほ面…。」

倫子はショックを受けたが100%自己責任である。

この状況で誰かを責めるのはテロに等しい行為だろう。

決して許される事ではない。

「さ!勉強勉強!」

倫子はそう言って何度も首を振ると、勉強に集中し始めた。


その後も勉強会は続き、未祐は暇な時は本を読みながら質問されるとすぐに答え、答えるとまた読書を始めた。 

未祐はポリポリと小動物のようにお菓子を食べながら、恐ろしく早いスピードで本を読み進めていく。


日頃は無愛想な未祐だが、教え方は本当にわかりやすかった。

おかげで倫子と真美の試験勉強はずいぶんとはかどり、結局は試験勉強中は毎日未祐に勉強を見てもらい、試験の方もうまくいったので万々歳だ。

報酬は1回につきケーキ1個だったが、トータルで一人ワンホールづつで手を打ってもらった。


これにより未祐はケーキワンホール食いという、長い間見ていた夢を二日連続で叶える事が出来たのだから、winwinと言ってもいいだろう。

とはいえしっかりとトレーニングルームで汗を流したところが倫子とはちがう。

倫子はそんな事はしない。

ペロリと平らげたあと、平気で晩ご飯の事を考えるだろう。

倫子の食欲を侮ってはいけないのだ。



「そう言えばさ。リンは実家に帰らないの?」

アルバイトの昼休憩の時、真美がフォークにスパゲッティを巻きながら倫子に尋ねた。

今日の真美の昼食はボンゴレのようだ。

「ん~。悩んでるんだよねぇ~。」

倫子はチャーシュー麺をちゅるちゅるとすすりながら答えた。

倫子の昼食はチャーシュー麺とチャーハンのようだがなんだろう?

真美と倫子の女子力の違いが垣間見えるような気がするのは気のせいだろうか?

それにしても熱血屋のメニューは随分と豊富なようだ。


「帰らなくていいの?」

真美もスパゲッティをちゅるちゅるとやりながら尋ねる。

「どっちでもいいんだけどね~。マジカルの事もあるし、帰らなくてもいいかなぁって。」

「マジカルの方はなんとでもなるわよ?みんなで交代しながら夏休みを取ればいいんだから。」

真美はサラダにフォークを刺しながら言った。

「実家にシミュレーターは無いからねぇ~。練習が出来ないのはつらいかなぁって。ピンクちゃんもピカピカに磨いてあげたいし。」

倫子はそう言って、レンゲでチャーシュー麺のスープを掬う。

「そうね。練習が出来ないのはつらいわね。」

真美は納得したようだ。


マミリンコンビを結成してから、2人はシミュレーターでの練習を毎日欠かすことなく続けていた。

少しづつだが練習の成果は確実に出ており、コンビネーションもよくなってきているし、何より2人がそれを実感出来るようになった。

練習の後にお風呂に入り、2人並んで湯上がりのいちご牛乳を飲むのが2人の日課だ。

  

「でも帰らないと美智子ママが心配しない?」

「お母さんは大丈夫なんだけどねぇ…。」

倫子は露骨に顔をしかめた。

「何?どうしたの?」

「お父さんと美姫がねぇ…。」

「なになに?聞かせて聞かせて!」

真美はそう言って、身を乗り出した。

「うちのお父さんは過保護なんだよねぇ…。」

「そうなんだ。」

「前にも話したけど、美姫はしっかり者のちゃっかり者だしね。間違いなくお土産の催促があると思うんだよねぇ。」


「そう言えば前はプラモデルが欲しいって言ってたわね。またプラモデルかな?女の子にしては珍しい趣味よね。」

「あの時は真美ちゃんに迷惑かけちゃってごめんね。でも、あの子がプラモデルを作ってる所なんて、見たことないのよね~。」

「え?そうなの?じゃあなんで、プラモデルが欲しいって言ったのかしら?」

 真美は首を傾げた。


「そこなんだよねぇ…。美姫の事だから何か狙いがあるはずなんだろうけど…。」

倫子も不思議そうに首を傾げた。

「どっちにしても決まったら教えてね。」

「うん。今のところは帰らないつもりだけどね。」

倫子はそう言って笑った。


「今日はアルバイトが終わったら、早速()()の練習よ。だんだん形になってきたしね。」

真美はボンゴレをやっつけながら意気揚々と言った。

「そうだね!()()が出来るようになったら、次にいけるもんね!」

倫子もやる気満々である。

どうやらマミリンコンビは順調なようだ。

 


その日の昼過ぎ。

熱血屋の前に一人の少女が立っていた。

長い黒髪をポニーテールにして、大きめのリュックサックを背負った少女は、Tシャツにジーパンにスニーカーという、動きやすい格好をしている。


少女は少し離れた場所から熱血屋のビルを、まじまじと見上げた。

「ここが熱血屋さんやねんな。思ってたより大きいお店なんやなぁ…。」

少女はそう言うと笑顔を浮かべながら、熱血屋の方へと近づいていった。

第5章の始まりです。


よろしくお願いします。

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