第4章 29話 「ハチマキの企み」
29話です。
22時に第4章の最終話を更新します。
いつもありがとうございます。
<(_ _)>
2日後。
ライブ会場となる青葉市庁舎の入り口には、今まで見たことがないほどのたくさんの人達が集まっていた。
入り口に置かれた照明やマイク、スピーカーなどの機材の前にはロープが張られ、子供から年配の方々までたくさんの人々の姿が見える。
どう見ても100人を超える観客達は、今か今かとライブの開演を待っている。
それにしても今日の観客数は多い。
いつもは酔っ払いのサラリーマンと、学生が20人もいれば多いほうだ。
後でわかった事なのだが今日のライブはTV放送もあるため、話を聞いた熱血屋の常連客達が、口コミで野外ライブの噂を広げてくれたらしい。
3人がライブ会場の設営を終え、ステージから少し離れた場所に駐車してある、車の中から呆然と観客を眺めていると、番組のディレクターがやって来て
「すごい人気ですねぇ。」
と言ったが、3人は
アイ 「ははははは。」
マイ 「ははははは。」
ミィ 「ははははは。」
笑うしかなかった。
3人はディレクターがいなくなると話をしだした。
アイ 「なにあの人の数?」
マイ 「あんなにたくさん…。」
ミィ 「どうしよう…。」
マイ 「どうしようって…。やるしかないわよ!」
アイ 「そうよね!やるしかないじゃない!」
ミィ 「そうね…。」
アイ 「気合を入れていくわよ!」
ミィ 「ちょっと待って!お腹が痛くなってきた…。」
マイ 「わたしも…。」
アイ 「なに言ってんの?武道館はもっと人が多いのよ?」
マイ 「そうよね!もっと多いよね!」
ミィ 「頑張りましょう!」
アイ 「とりあえず、曲順を間違えちゃダメよ。特に三曲目の『ミラクルフォーリンラブ』は、出だしから振り付けが難しくて、ハードなんだからね。」
マイ 「そうね!」
ミィ 「わかった!」
ミラクルフォーリンラブは、超アップテンポでダンサブルなラブソングである。
イントロだけで2分近くあり、その間は踊りっぱなしだ。
体力的にもかなりきついものがある。
マイ 「まず最初は『キュン!キュン!キュン!』からよね?」
ミィ 「それから『愛しているから大丈夫』で『ミラクルフォーリンラブ』からの『好きが止まらない』でいいのよね?」
アイ 「そうよ。それでラストは『大好き!』よ。」
マイ 「わかった!」
ミィ 「わかった!」
「それじゃあ、いつものやつをやるわよ!」
アイちゃんは真剣な顔でマイとミィを見ると手を前に出した。
「うん!」
マイがアイの手の上に自分の手を重ねた。
「頑張ろうね!」
ミィもマイの手に自分の手を重ねた。
「マインズ~!ファイ!」
アイが叫ぶと
マイ 「ファイ!」
ミィ 「ファイ!」
マインズの気持ちが一つになった。
8時になりマインズの野外ライブが始まった。
3人は駆け足でステージに向かう。
アイちゃんは赤と白のドレスを。
マイちゃんは青と白のドレスを。
ミィちゃんは黄色と白のドレスを纏っている。
このドレスはマイちゃんの渾身の作である。
デザインから縫製まで全てマイちゃんが行ったのだ。
このドレスは一番のお気に入りであり、ここ一番の時にしか着ない勝負服である。
それほどまでに3人は今日のライブにかけている。
絶対に失敗はしたくないのだ。
パチパチパチパチ
マインズに向かって暖かい拍手が起こった。
アイ 「皆さんこんばんは~!アイでーす!」
マイ 「マイでーす!」
ミィ 「ミィでーす!」
アイ 「3人揃って!」
アイ 「マインズでーす!」
マイ 「マインズでーす!」
ミィ 「マインズでーす!」
パチパチパチパチパチ!
さっきよりも大きな拍手が起こった。
アイ 「一生懸命に歌いますので、聞いてください!」
マインズ 「キュン!キュン!キュン!」
曲のイントロが流れ始め、3人がそれぞれのポジションに付こうと、歩き出したその時!
ピンクの法被を着て、頭に動物のかぶり物を被った男達が、サイリウムを両手に持ってステージになだれ込んできた。
アイ 「え?」
マイ 「え?」
ミィ 「え?」
3人は慌てたがイントロは止まらない。
イントロが止まらない以上自分達も止まれない。
自分の曲のイントロが流れているのに、歌わないのはアイドルではない。
3人はそう思い、当然のようにライブはそのまま続行された。
「かなりのハプニングのはずなんだがなぁ…。なかなかいい根性をしてるじゃないか。」
袖からステージを見ていたプロデューサーはそう言って笑った。
男達は等間隔に位置をとりマインズの後ろに並ぶと、曲に合わせて踊りはじめた。
アイ 「だれ?」
マイ 「だれ?」
ミィ 「だれ~?」
3人は焦った。
突然、訳のわからない男達がステージに乱入してきたのだから、焦らないほうがおかしい。
イントロが終わり歌い出す3人。
一糸乱れぬ見事な動きを見せながら踊りまくる、謎のかぶり物バックダンサー達。
キツネ、ウサギ、サル、キリン、カバといろいろいる。
笑顔で歌を聴いている観客達。
スタートとしては上々である。
3人は曲の合間の振り付けで近寄った時、小声で話をした。
ミィ 「あれってさぁ…。」
マイ 「間違いなく…。」
アイ 「め組だよね?」
3人は笑顔で踊りながら話を続ける。
アイ 「なんで顔を隠してるの?」
マイ 「なんでだろう?」
ミィ 「さぁ?」
3人はしばらく考えこんだあと
アイ 「てか、何してんの?」
マイ 「てか、何してんの?」
ミィ 「てか、何してんの?」
3人は顔を見合わせながら同時に呟いた。
アイちゃんからロケの話を聞いたハチマキは、すぐにめ組のメンバーを招集し、夜の熱血屋にて緊急会議を開いた。
ハチマキ 「あさっての夜の8時。市庁舎前でマインズのロケがあるそうだ。しかも全国放送されるらしい。」
コブ 「おぉ!それは素晴らしい事ではないか!」
マル 「マインズさん達よかったですね!」
チビ 「いよいよ全国放送か…。」
ノッポは嬉しそうに笑っている。
ハチマキ 「それでだな…。」
コブ 「ハチマキ、みなまで言うな!わかっておる!わかっておるぞハチマキよ!マインズの晴れ舞台に華を添えるつもりなのだな?」
コブはそう言ってハチマキに向かって手を広げた。
ハチマキ 「うむ。皆に異論がなければだが…。」
コブ 「異論などあるわけがなかろう。」
チビ 「異論なし。」
マル 「同じく。」
ノッポは大きく頷いた。
ハチマキ 「よし。話は決まった。手続きと段取りは俺がつける。」
コブ 「俺とマルは振り付けと掛け声の担当だな。ノッポは衣裳の用意を頼む。チビは撮影の準備だ。」
マル 「了解!」
チビ 「了解!」
頷くノッポ。
ハチマキ 「すまんが時間がない。早速とりかかってくれ。」
ハチマキの号令を合図に、め組は動きだした。
ハチマキは鷲巣見市長に連絡をいれ、ロケの話を確認したあと、マインズの親衛隊としての行動を認可してもらい、その後、ありとあらゆる事態を想定した上で、プランを練り上げた。
コブとマルはマインズの曲をあらためて聞き直し、振り付けと掛け声のベースを考案。
そこからさらに、曲ごとにオリジナルの振り付けと掛け声を完成させた。
チビはカメラとドローンの配置を練り、ノッポはマインズ用の法被のデザインを考え2日で仕上げた。
当初はマインズの親衛隊としてステージ前に陣取って応援をするつもりであったが、野外という事もあり、他のお客さんの邪魔になるかも知れない。
そう思ったハチマキは、応援から急遽バックダンサーになることを思いついた。
ハチマキは早速TV局に連絡をいれ、プロデューサーに直談判をした。
マインズの親衛隊として、バックダンサーとして参加をさせて欲しいと。
「何言ってんだこいつ?」
ハチマキの話を聞き最初はそう思っていたプロデューサーだったが、ハチマキの話を聞くうちにだんだんと乗り気になってきた。
ハチマキがいうには自分達は出来たばかりの親衛隊で、マインズもその存在を知らないらしい。
自分達としては今回のロケにマインズには内緒でバックダンサーとして参加し、のちにマインズに正式な親衛隊として認めてもらう為の材料にしたいという狙いがあるというのだ。
『なかなか大胆な事を考えるじゃねぇか。バカは嫌いだが行動力のあるバカは嫌いじゃねぇ。それに親衛隊のいるご当地アイドルはいるが、バックダンサーのいるご当地アイドルはそうはいないだろうしな。』
そう思ったプロデューサーは、親衛隊のバックダンサーとしての参加を認めた。
一曲目の『キュン!キュン!キュン!』が終わり、息つく暇もないほどのタイミングで、次の曲のイントロが流れ始めた。
曲が流れ始めた瞬間
アイ 「え?」
マイ 「え?」
ミィ 「え!」
マインズの顔色が一気に変わった。
続きは22時に更新します。




