第4章 25話 「一歩づつ前へ」
25話です。
いつも読んでくれてありがとうございます。
(^人^)
大臣と呼ばれる男は忙しい。
毎日朝早くに家を出て、夜は日が変わってから家に帰る。
まともにかわいい天使の顔を見る時間もないのだ。
彼が「秘密基地」と呼ぶ彼の大好きな場所にすら、週に3回も顔を出せれば「今週は時間があるな。」と思えるほどだ。
とにかく彼にはやることが多い。
いくつもの会社を経営し、いくつもの投資先があれば忙しいのは当然なのだが、彼には一つだけ大いなる悩みがあった。
それが彼の二人のパートナーである。
彼もパートナー達と同様、子供の頃からロボットが好きであった。
彼もありとあらゆるロボットアニメを見た。
現実にはない巨大な機械の塊が街を歩く。
想像するだけで胸がドキドキして、いつの間にか想像を現実のものにしたくなった。
ただ現実主義者の彼はそれが不可能だと思っていた。
中学2年生の時に頭のおかしな二人組に会うまでは。
ある時、三人でロボットを作ろうという話がでた。
彼には出来ないとわかっていたが、面白そうなので付き合ってみた。
毎日、毎日、三人でロボットを作った。
休みの日は朝から晩までやった。
三人で初めて作った等身大のロボットは、ただのハリボテだった。
それでも出来上がったロボットを見て、三人は嬉しかった。
「最初はここからだ。」
誰も口にはしなかったが、三人はそんな気持ちになっていた。
それから改良に改良を重ね、ロボットは少しずつだが動くようになった。
高校1年の時、三人は行き詰まった。
いくら頑張っても自分達の理想のロボットを作るのには無理があると気付いたからだ。
エンジンにしろモーターにしろ小型化には限界があり、いくら頑張っても彼らの理想とするロボットにはならないのだ。
そこで三人は考えた。
まずは大きなロボットを作ってみたらどうだろうか?
機械と言うのは最初から小型化は出来ないものである。
まずは実現可能なサイズで作って、それから小型化していくのだ。
電卓やタブレットだって、最初は持ち運ぶのが大変なくらい大きかったが、それが今では手のひらサイズである。
その小型化こそが技術の進歩の証なのだ。
それならば最初から大きさにとらわれずに、ロボットを作ってみよう。
三人はそう思い、スクラップを集めて大きなロボットの製作を始めた。
折しも青葉島はワーカーの開発が進み、ロボット産業ね稼働が活発化し始めた時期であり、大小のロボット産業の工場や会社が雨後の竹の子のように乱立し始めていた。
島には車やバイクはもちろんの事、様々なスクラップ部品がたくさんあったのだ。
三人は知り合いの工場でアルバイトをし、スクラップを安くわけてもらった。
アルバイト代はロボットの部品に変わり、ロボットの専門書を読みあさりながらロボットを作り続けた。
高校3年の時に、1台のロボットが出来上がった。
それは今から見ればお粗末なロボットではあったが、当時の三人の全てが詰まったロボットだった。
何とも言えない充実感があった。
しかし今、彼のパートナー達はまるで親の仇のようにお金を使う。
学生時代に取ったいくつかのロボット関連の特許で生活は充分に潤っているはずなのだが、収入などお構いなしに使うものだからたまったものではない。
しかもお金の管理が全く出来ないのだから、とんでもない金食い虫だ。
ロボットの製作に関しては、想定以上の成果をだすというのに、金勘定に関しては幼稚園児以下の能力しか持っていない。
「こいつらは、足し算と引き算を知らないのか?」と真剣に悩んだ事もあった。
とにかくそんなお金の価値もわからない原始人のような連中に、お金の管理を任せることなど出来るはずがない。
放っておけば税金すら平気で滞納するだろう。
お金がないとロボットは作れないのだ。
「こいつらは金食い虫じゃない。原始人なんだ。」
彼らをそう思う事にした彼は資金運用に乗り出した。
いや、乗り出さざるを得なかったのだ。
彼はまず手始めにロボット産業の関連会社に投資をしだした。
彼も最初の頃は損失を出したりもしたが、だんだんとそういう事も無くなり投資は安定しだした。
しかし彼が投資をした関連会社同士の連携が上手くいかなくなり始めたのだ。
彼は関連会社同士の関係をうまくいくためにと、橋渡し的な会社を設立した。
初めの頃はうまく回らなかったが、彼が陣頭指揮をとり始めるとなんとかうまく歯車が回り始めた。
彼の努力は実を結び、少しずつだが毎年の利益が増えていき、今では彼の想像を遥かに越えるものとなっていった。
彼は経営者として突出した才能を持っていたのである。
彼はお金儲けの天才ではあるがお金には興味がない。
ただバカな原始人達のせいで、実業家にならされただけだ。
彼は別にオーダーメイドのスーツで身を包み、おいしい物を食べ、旨い酒を飲み、美女をはべらかしたいわけではない。
服は自分の着たい服を着ればいいし、食事も酒も誰と飲み食いするかで旨くもなれば不味くもなる事を、愛妻家でありバカ親でもある彼は知っているからだ。
彼は今の現状を憂いているわけではない。ただ少しだけ忙し過ぎるだけである。
お金の事など何も考えず、日がな一日やりたい放題のパートナーを見て
「おまえら気楽でいいな。」
と思っているだけである。
心の底からではあるが…。
彼は三人兄弟の真ん中に生まれた。
兄と弟は父の仕事を手伝いながら、会社経営を学んでいるが、彼は家業を継ぐ気は毛頭なかった。
家業など三人のうちの誰かが継げばいいのである。
次男坊である自分が継ぐ必要もなければ、決められたレールの上を走る気なども毛頭なかった。
父は父で彼のやることに反対もしなかったし、兄弟達も何も言わなかった。
兄弟達はライバルが減って助かったと思っているかも知れないが、そんな事すらどうでもよかった。
一度きりの人生である。
好きなように生きればいいのだ。
彼にとってその好きな事がロボットだったのだ。
とにかくこれで、なんとかロボット製作の資金は工面出来る。
そう安堵した彼だが、二人の原始人は彼の想像を遥かに越える勢いで利益を貪り始めた。
とにかく際限がないのである。
昔TVで見たバッタの大群が畑の作物を一瞬で食い尽くすような勢いで、二人は彼の増やしたお金を食い尽くそうとするのだ。
「お前達はそんなにお金が憎いのか?」
彼は二人の原始人にそう言うと、彼らの所得と行動を徹底的に管理すると同時に、ロボット産業以外のいくつかの新たな会社の経営を始めた。
二人の原始人は当然の如く彼に文句を言ったが、彼は全てをはねのけた。
何せ相手は原始人だ。
言葉も常識も通用しないのだから仕方がない。
今では二人とも文句も言わなくなり、会社も軌道に乗って安定した利益を生み出すようになったが、彼が本当にやりたい事は経営ではない。
彼もロボットが作りたいのだ。
彼の作り出すロボットは、芸術的なものやファンタジー色の濃い物が多い。
女性型ロボットであるマジカルもそうである。
武骨な手足の太いロボットが好きな原始人や、変形のみに美を追い求める原始人には、到底、思い描く事の出来ない代物である。
彼の最も得意とする分野はAIの開発である。
元々はあまり興味のある分野ではなかったのだが、大学時代の恩師に教わり彼の才能は開花した。
マジカルのシミュレーターを完成させたのも彼だ。
彼の理想とするロボットとは、まるで人間のように動くロボットであり、まさに「人機一体」こそが彼の求める理想なのだ。
今のマジカルは、彼の理想に最も近い位置にあるロボットだが、彼の求める物はもっと先にある。
彼自身、三人で最初に作ったハリボテのようなロボットに比べると、とんでもなく先に進められたとは思う。
だが彼はここで満足はしない。
満足をした時点で歩みは止まってしまうからだ。
彼は。
いや、彼らは歩み続けていく。
一歩づつゆっくりと歩いていく。
止まってしまえば、そこで終わってしまうのだから。
道化師という新たなロボットの登場により、その思いはさらに強くなった。
マジカルも、次の段階へと進まなければならないだろう。
とはいえ、もう少し家族とゆっくり時間を過ごしたいと思う彼であった。
明日は源さん。




