第一章 4
「ルキウス、無茶するんじゃないぞ」
ボサボサ髪に質素なメガネをかけたこの人、マキシさんは心配そうな顔でオレを見送る。
―――そう、オレは先日闘った魔王軍幹部「道化師クルセル」に攫われたルチルを救いに旅に出ることに決めたのだ。
マキシさんには幼いころから面倒を見てもらっていて、感謝してもしきれないほどである。
まだ恩返しも果たしていないのにここを離れるのは心苦しくもあった。
「……今まで、ありがとうございました。 必ず全員連れて帰ってきます」
深々と頭を下げた後、オレはウル村を発った。
持ち物は最低限のものだけ。
食料と水、狩り用の鉄でできた剣、そして外の世界を旅をするのに必須のアイテムが一つ。
軽く肩を回してみる。
もうほとんど痛みはない。
先日の大怪我はマキシさんが丸一日かけて治癒してくれた。
ああ見えてかなりの回復魔法の使い手、なんでも元はとある国の衛生兵だったとか。
ベッドで丸一日過ごしていたその日、いつになく真剣な顔をしたマキシさんからおかしなことを聞かれた。
『お前、クラナたちはどうしたか知っているか?』
―――どうやらこの村にクラナ、ダウパー、リーディの三人の姿が見当たらないらしい。
それは他の村の人も誰も知らないようだった。
―――オレは、少し頭を整理することにした。