「象徴」
剣はこちらでも、権力とか武力の象徴なんだろうか。もとの世界の、これくらいの生活・文明レベルのヨーロッパなら、剣は騎士の叙任だとかなんだとかに用いられる、儀礼的なものでもあった。
日本でだって、特例を除いて武士以外は帯刀をゆるされなかったのじゃなかったかしら。刀狩りがあったから、あれ以降刀が特別なものになったんだろう。武士は本来、弓馬の道とか弓馬の家というくらいで、刀よりも弓と馬を重視していた筈だ。流鏑馬なんて最たるものだ。もしくは、槍術三倍段の槍か。
弓は扱うのに腕力と目のよさ、それに技術が必要だ。槍にしても、腕力がないと扱いづらく、リーチで優位に立てる。そういう、習得に時間がかかる技術をちゃんと身につけて、武器を扱えるというのは、武芸の修練に専念できる地位をあらわすものでもあったのだろう。刀の扱いに技術が要らないとは云わないけれど、槍はその多くの部分が木製の柄である。刀はそれと違って大きくは「しならない」だろうから、動きを制御しやすい気がする。扱うのも、対峙するのも、イレギュラな要素は少ないほうが嬉しい。
それに剣も刀も、金属部分が多い。金属を沢山つかった武器、というだけでステイタスシンボルだ。王冠も、金や銀を沢山持っていることがぱっと見てわかるという効果があったらしい。
それを考えると、わたしがつかっている総金属製の柄の長い斧は金属の塊だから、あまりしならないな。おかげで反動がかなりのものだが、それは仕方ない。もともと腱鞘炎だのなんだのとは無縁の家系だし、身体強化をかけているからか手が痺れることはほとんどない。痺れたとしても魔法でごまかす。
こちらも必死だから、多少疲れたり怪我したりしても、重さで相手を粉砕できるほうが助かるのだ。振りまわしていれば大概の鎧は破ってくれるから、便利だもの。リザードマンだってたたっきったし、……ピルバグは手強かったけれど。
こちらの世界、或いはこの国でのロングソードがもし、上流階級なり騎士なりの「象徴」的な存在であるのならば、仮に支給品が短剣やショートソードでも、ロングソードがほしい、となるのかもしれない。
そこは個人の好みというか、自由に任せているのだろう。かぶとや籠手なども、基本的な形は一緒だが、まるみや長さにわずかな差異がある。魔法で装備品をすぐにつくれるので、セミオーダーメイドのようなことが可能なのだ。兵站だけに関して云えば、中世末期から近世のヨーロッパと比べ、こちらの軍のほうが圧倒的に上だと思う。魔法のおかげで食糧がなくなることはほとんどないし、材料があれば装備品もすぐにつくってもらえる。
現に、わたしははじめての会戦で、聖女護衛隊の兵が剣をつくってもらっている場面に遭遇した。武器がつくられるところを目にはしなかったが、会話からそういうことだろうと判断した。
戦場で武器を失っても、補給部隊が居るところまで戻ることができれば、すぐにあらたなものが手にはいるということだ。戻る手間が惜しいから、わたしは沢山の武器を持っていくし、自力で生成するのだが、武器をつくれないひとはあの補給部隊がありがたいだろうと思う。だから、凄く優秀な兵站なのだ。




